第五章 第14話 「羅刹」
前回のファントムブレイヴ
血抜きのジャックと解体屋ディモーと相見えたアオイと両断アズサ。二人の気術に驚きながらも危なげなく二人を倒し、捕らえた。呆気なさにも驚きながら二人は本命である月永シュウジを探す。そして3人の少女と対峙したヒロトは…
現れた3人の少女は不敵に笑う。
「へぇ1人なんだ」
「私達三姉妹に1人なんて無謀ね」
「どうやって殺してあげようかしら」
「お前ら歳いくつだ?見た感じ15かそこらだろ、その歳でタルタロスにいたのか?」
「え〜なにそれ〜」
「もしかして心配してんの?」
「だるぅ」
「「「死ねよ」」」
「っ!速い!」
3人が一斉に動き出す、そのスピードは想像よりも遥かに速く一瞬見失いかける。
大剣を持った少女が俺の右から、斧を持った少女が左から同時に仕掛けてくる。俺は両手に刀を造り出しそれを防ぐ、だがハンマーを持った少女が上から叩きつけにくる。
「潰れちゃえっ♪」
「影籠手」
頭上に一対の影籠手を造り出し受け止める。
「へぇそういう能力なんだ」
「アイとフゥの攻撃受けながら、ミミのハンマーも受け止められるなんてまあまあ強いみたいね」
それでも力を込め続ける3人に俺は一度飛び退いた。
3人とも自己強化系の気術みたいだが、何故か違和感を感じるのはなんだ…?
「アイの大剣を片手で受け止められてるのは初めて見たかも」
「それはフゥの斧もよ」
大剣を持ってるのがアイ、斧を持ってるのがフゥ、ハンマーを持ってるのがミミってことか…
彼女達はまた武器を振りかぶり、迫る。
「失った気憶“影武装”」
俺は左手の鞘から刀を抜き出した後、左手で腰に下げていた機械柄“鬼丸”を手に取る。
「夜天【極】&氷天鬼丸」
俺は影と氷の2対の刀で応戦する。彼女達はその武器の重さを感じさせない動きとパワーで連撃を繰り出す。
「すごいねぇ!これだけの手数を受け切れるんだ!」
「どこまで耐えられるかな!?」
「せーの!」
その掛け声で3人が同時に振り下ろす。刀をクロスさせ受け止める。
「ぐっ!?重てぇ!」
武器は軽いわけじゃない、この重さ…見た目通りだ…!
「まさか防戦一方になるとはな」
「まぁ、3対1だし」
「そうなってもらわないと困るっていうか」
「当然っていうか」
俺の中で彼女達への違和感が強くなる、今の攻撃で分かったが3人とも気力量が特別多いわけじゃない、それに気術を使っている素振りすら見せない。
「さてさて、もう少し本気で行くよ?」
アイが大剣の切っ先をこちらへ向け突っ込んでくる。
俺はこの違和感に仮説を立てた、その説に確証を持つために氷天鬼丸を地面に突き立てる。
「アイスパーク」
半径数mの地面を凍らせる。アイは見事に足を取られバランスを崩した。その時、アイは片方の手をバランスを取るために大剣から離す、その手をすかさず俺は掴んだ。
「んな!?」
俺はその手のひらを凝視する。
「…やっぱり、でもなんで」
「「アイを離せ!!」」
フゥとミミが飛びかかってくる、俺はひらりと身をかわし背後へ下がる。
「いきなり何するかと思えば、何?アイに惚れちゃった?」
アイは大剣を握り直し、構える。
「それ以上戦うな、3人ともだ」
「はあ??」
「何言ってんのあんた!」
「ほんとにアイ姉ちゃんに惚れたの!?」
「その手のアザと深く食い込んだ爪の跡…よく見れば足にもアザがある」
「それが何」
「お前ら、脳のリミッター外してるだろ」
「「「っ!!」」」
「図星だな、そんな大きな武器をあのスピードで振り回すには相当な体幹と肉体か、それ相応の気術と気力がいる」
「それ相応の気術と気力があるってだけでしょ!?」
「じゃあそのアザはなんだ、人間は肉体が壊れないように脳が力を制限してる、そんなアザや跡ができるほど剣を握りしめられない…もうそろそろ骨が軋んで痛みが襲ってるはずだ…もう辞めにしないか?」
アイが大剣を地面に叩きつける。
「…だったら何?同情?アイ達は自分達の意思でここにいる、自由のために戦ってる、ここで誰も殺せず先に進めないのなら身体がバラバラになってでも戦った方がマシなの…!その覚悟もできてる!」
「まだ…今ならそこから逃げ出せるぞ」
「逃げる…?バカじゃないの?アイ達はこうするしか自由を手に入れる術がないの…逃げてもその先は…無い!」
アイは勢い良く地面を蹴り、俺へ剣を振るう。それを夜天で受け止めた。
「俺もリミッターが外れる体なんだ」
「えっ?」
アイは後ずさる。
「お前らはどうやってそうなった?俺は物心ついた時にはもうこうなってたんだ」
「アイ達は…」
アイはちらりと後ろの2人を見る。
「そんなのあんたに関係ないでしょ!?」
大剣を今までで一番のスピードで振るう。夜天で受け止めるがその威力で夜天にヒビが入った。
「フゥ!ミミ!」
アイの背後から2人が飛びかかる。俺は氷天で空を切り、氷天の軌道に氷を形成させ一瞬の目隠しを作った。その一瞬で俺は後ろに下がり攻撃を躱し、夜天を修復する。
「あんたを殺して、この先の奴らも殺して、アイ達をこんな体にした奴も殺して、アイ達は自由になる!そうすればこの力なんて関係なくなる!」
「誰かに脳のリミッターをいじられたんだな、わかった」
「あっ…!」
「お前らの言う自由が何かはわからねぇが、今俺がお前らにしてやれることはわかった」
「あんたにしてもらうことなんてないわ」
「とりあえずその武器いらねぇよな」
俺は深呼吸をし、影を纏っていく。
「見せてやるよ、リミッターを外してかつ完璧に制御してる状態を」
「っ!」
段々と影が濃くなり体を覆う。
「一瞬で終わらせてやる、大盤振る舞いだ…制限解除フェイズ2…“羅刹”」
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