第五章 第4話「敵の目的」
前回のファントムブレイヴ
ヒロトの祖父、月永ケンスケにタルタロスから犯罪者達が逃げ出した事と父である月永シュウジの凶悪な気術が告げられる。
そして、犬神様からは神力を扱うための達成できていない課題を告げられ、ヒロトは悔しさを覚えながらも神力を体得してやると強く決意を固めた。
俺達は解散した後、ひとまず通常の業務に戻っていた。
「今日は隊員みんな居るんだねー」
「まぁこういう日もあるでしょ」
ハヅキは机に突っ伏し、アオイはリヴァイアに浸かってボーッとしている。
「みんな暇そうだね…」
ダイチがそれを見て言う。
「お前ら体が鈍るぞ」
椅子を並べてその上に寝っ転がっているショウスケが言う。
「お前が言うなよ、ていうかなんでみんなそんな気が抜けてんだ」
俺は1人報告書にペンを走らせながら4人を見る。
「だってよーこの1年ずっと気が張り詰めてたろ?それが急に無くなって、安心したというかなんというか…」
「まぁ言ってる事は分かるけどなぁ…」
実際、俺もあまり仕事に身が入っていないのは事実だった。
「じゃあ、体動かすか」
◇◇◇
俺達は外の訓練場に移動した。
「結局あの2人がやるんだね、僕はいいんだけど」
「まぁあたしらも刺激になるしいいんじゃない?」
俺はハヅキに合図する。
「ハヅキー!頼むー!」
「はーい」
すると、訓練場を囲むように光球のドームが出来上がる。これで外への被害が無くなる。
「さぁ、いつでもいいぜ」
「じゃあ、遠慮なく…モード・白炎」
とショウスケは白い炎を発現させる。
「最初からこのモードだ、殺す気でこないと死ぬぜ?」
「組み手だっつってんだろうが…」
ショウスケは地面を蹴り凄まじいスピードで迫る。
「影武装・影籠手&機械変靴」
俺は腕を前でクロスしショウスケの拳を受け止め、機械変靴で後ろに向かって圧縮空気を噴射し、吹っ飛ばされる事なくその場で耐える。
「へぇ、機械みてぇな籠手じゃなくなってるじゃねぇか」
「シンプルイズベストだ」
俺はショウスケの拳を払い、右足で蹴り上げた。当たったはずだがショウスケは空中でクルクルと回転し着地する。
「俺に蹴りは効かねぇ、もっと蹴りの上手い奴を知ってるからな」
ショウスケの炎が何かを形作り始める。
「白炎徹甲弾!」
ショウスケの周囲から発射された無数の白い炎の弾丸が襲いかかる。
「夜天“鬼丸”」
俺は腰にぶら下げていた機械柄“鬼丸”を手に取り、鞘を表現した手に合わせる。そして、弾丸が近づいたと同時に刀身を造りながら引き抜き、全て真っ二つに斬り裂いた。
斬り裂かれた炎の弾丸はその場で爆発する。
「剣を出したなっ」
ショウスケはそう言うとまたしても弾丸を繰り出す。それも全て斬り落とした。
「なるほど、陽動には使えそうだな」
その声は俺の真後ろから聞こえた。
「なっ!?」
俺は即座に剣で防御するが、ショウスケの蹴りでドームスレスレまで飛ばされる。
「白炎状態での衝炎モードだ、速えだろ」
「あぁ、ショウスケが本気なら一本取られてたな」
「ヒロトが今みたいに本気じゃない時ならな」
ショウスケはニヤリと笑う。
「なぁ、リミットブレイクってやつ見せてくれよ。本気でやろうぜ、その剣も俺の蹴りをガードする時に刃を丸めただろ」
「バカが、ほんとに怪我するんだよ。いつ出動しなきゃいけないかも分からねぇのにできるか」
「じゃあ、リミットブレイクせざるを得ない状況にしてやるぜ!」
ショウスケは更に炎を強くし、こちらへ突っ込んでくる。
「影籠手・阿修羅」
俺は6本の影籠手を造り出し、立ち塞がるように配置する。
「そんなもん!即突破だぁ!向火葵!!」
「一瞬でも俺を見失えばそれでいい…」
ショウスケが影籠手を吹き飛ばした先にもう俺はいない、上空で構えをとる。
「“影下ろし”」
縮地法を使い一瞬で地面に刃を叩きつける。その衝撃で炎を吹き飛ばした。
「うおっ!」
ショウスケものけぞり、2〜3歩後ずさる。
「速え〜」
「だろ?でもこの技はある技の進化前だからこんなもんじゃねぇぜ?」
「それを見せろよ!」
「しつけぇな!怪我するつってんだろ!」
ショウスケがズンズンと俺を睨みながら近づいてくる。
「おい、ヒロト!てめぇ俺を舐めてんのか?怪我する怪我するってよぉ!正直今のもやろうと思えば見切れたしカウンターもできたぞ!」
「だから!今は仕事中の体動かすための組み手だって言ってんだろ!万が一怪我したらどうすんだ!」
俺とショウスケが額で押し合い睨み合っている横に突然人が現れる。
「やってるねぇ〜そんなに体を動かしたいならいいのを持ってきたわよ♡」
「「あぁ?」」
そこにはまるでボールのような日傘をさした預言者セリカが浮いていた。
「みんな無事そうで何よりね」
ハヅキ達も駆け寄ってくる。
「で、何を持ってきたって?」
「タルタロスから逃げ出した犯罪者達の目的と行方が分かったわ、セリカ達神の使いの爆速解析によってね」
「なっもう分かったのか!」
「姉貴だけの力じゃねぇのかぁ?痛っ!」
そう言ったショウスケの額に気弾が放たれ命中する。
「発花くん?言葉には気をつけなさい?」
セリカは声色を変えてショウスケを睨む。
「今、どこにいるかも分かるのか?」
「目的が分かれば必然的に行方も分かる、大体どの辺にいるかもね」
「その目的って何ですか?僕達が行かなきゃいけないなら速く行かないと」
「その前にひとつ、奴らの目的はイコール“主様一味の目的”である事がその目的の内容から確定したわ…つまり奴らを逃したのは主様よ」
「っ!!」
「そしてその目的は…“魔導士の略奪”よ」
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ではまた次回でお会いしましょう〜