第五章 プロローグ「蠢く闇」
前回のファントムブレイヴ
それぞれの任務に就く第4隊。その中でヒロトは司令長の妹の話を聞く。思わぬ所にもこの1年の戦いの傷痕が残っていたのだった…
それぞれが傷を抱えながら進んでいく、人間の強さを感じるヒロト。
そして、数日後…
タルタロス地下牢・最下層
ガチャン…ガチャン…
闇の中、金属音が鳴り響く。その音は移動していき最奥の牢の前で止まる。
「誰だお前…」
牢の中の男が自分の牢の前の人影に問いかける、が返事は無い。
男は起き上がると目を疑った。その人影の背後の牢の扉が全て開いていたのだ。
「なんのつもりだ」
「主様の命により貴様らを解放しにやってきた」
「主様だぁ?」
「ここから出してやる代わりにやってもらいたい事がある」
「俺たちがそんな簡単に人の言う事を聞く連中だと思ってんのか?ここはタルタロスの最下層だぞ?」
「だからお前で証明する、我々がお前たち犯罪者どもを従えるに相応しい力を持っているか…」
ガチャンッと牢の中の男の気力制御リングが取れる。
「ほぅ…俺の気術を知っててこれを外したんだろうな?」
男はオーラを放つ、すると2人を隔てていた牢屋の鉄柵が音も立てず消え、砂の様になっていく。
「知っている、だからお前で証明するのだ。主様が、従うに値するお人かどうか」
人影が手をかざすと眩しい光が灯る。そしてそれを男へ向け放った。
「あ?」
男は驚く、そして光が到達すると男は吹き飛ばされた。
背後で他の牢の人達がざわつく。
「なん…だと…?」
「今のは主様の力を少しお借りしたものだ…これで理解しただろう我々には従うしかないと」
「今のはまぐれだ!もう一度…」
「お前の能力はまぐれが起こると効果が消えるのか?」
男は目を見開き歯を食いしばった。自分で自分の能力をこけにしてしまった事への苛立ちで震える。
「まずはここから脱出してみせろ、話はその後だ」
人影は振り返り歩いていく。
「主様がお待ちだ…期待を裏切るなよ」
そう言って人影は闇の中へ消えていった…
◇◇◇
とある山の中腹、山にあるはずのないような扉が開く。そして女性が1人入っていく。
「ただいま戻りました、主様」
女性は跪き礼をする。
「あぁ、長期の任務ご苦労だった」
「ありがとうございます」
「「あっ!帰ってきたー!」」
2人の幼い子どもがふわふわと浮きながらその女性の元へ飛んでくる。
「ルリ、ルカただいま」
「おかえり、イデアル!」
「おい!もうその名前は!」
「いいのよ、それにこの名前案外気に入ってるの。イデアルって理想的な人って意味があるのよ?」
「イデアル…いや、“北潟ホノカ”」
「はいっ」
主様がイデアルの本名を呼ぶ。
「長い間よくやってくれた、少し休むといい…次の手は既に打ってある」
「ありがとうございます」
「「主様!これで全部揃うね!」」
「あぁこの一手で駒が揃う…リンヤ!」
「はっ!」
名前を呼ぶと主様の元へ即座に男が現れる。
「まだ少し時間がある、例の人間をギリギリまで探せ」
「御意!」
そう言うと男は消える。
「主様〜ほんとに見つかるの?」
「発花イツキも使ってもう何年も探してるのに」
「見つからないならそれでいい、犬神が隠している可能性があるからな…隠しているということはまだ覚醒していないということだ、なら…その前に我々が動く」
主様は立ち上がり奥へと消えていく。
「さぁ、抗え…月永ヒロト」
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ではまた次回でお会いしましょう〜