第四章phase2 第20話「消える魂」
前回のファントムブレイヴ
激闘の末、兄発花イツキを討ち倒したショウスケ。そして、明かされるヨシヤという魂との過去。
イツキはショウスケに殺せと頼むがショウスケは応じない。そこへ、魂を消滅させに来たとセリカとセレナが現れて…
その2人が放った言葉にショウスケは怒る。
「消滅させるだと?それを俺が許すと思ってんのか?」
「あんたが許す許さないじゃないのよ、それにその魂は許されてはいけないの」
俺は倒れる兄貴の前に立つ。
すると、“セレナお姉ちゃん”と呼ばれていた人が言う。
「勘違いしてるかもしれないから言うわ、私達も発花イツキを消したい訳じゃない、この世界唯一の魔導士だしね…心を入れ替えて世界のために動いてくれるならそれでいいの、罰は受けてもらうけどね、。でも、彼の中にいる別の魂、そいつはそいつだけは本当にこの世に存在してはいけないのよ…!」
「ヨシヤとか言ってたあの…」
「えぇ、私達も驚いたわ。とんでもない奴の気配が現れたからね」
「でセリカ達が飛んできたわけ」
「じゃあそいつだけ消せば…」
「できないのよ」
「は?」
「さっきあなたが彼に大ダメージを与えたその隙にその魂を抑え込んだわ、その時に感じたの…発花イツキの魂はほぼ侵食されてるわ、きっと長く一緒に居すぎたせいね」
「なっなんだと…」
「ヨシヤの魂は長い間魂だけで彷徨っていた、ヨシヤ自身にその気がなくても必然的に魂は肉体を求める」
兄貴の魂が侵食されている、俺でも理解できる、ヨシヤの魂を消せば兄貴の魂もただじゃ済まない…いや共に消えるかもしれない…
「そいつは…本当に消さなきゃならねぇのか?何者なんだそいつは…」
「話せば長くなるわ、でも一言で言うなら…その昔、世界を崩壊させようとした男よ」
「!?」
「だからセリカ達はそいつを消さなきゃならないの…っ!お姉ちゃん!」
セリカの顔が険しくなる、後ろを振り返ると兄貴が起き上がろうとしていた。
「兄貴!」
「近づかないで!今、そいつは…」
兄貴は顔を上げる、その顔はまるで別人のようだった。
「こいつが…ヨシヤ…」
「なんで動けるの!?お姉ちゃんの術で抑え込んだのに!」
そいつがゆっくりと口を開く。
「…驚いた、なるほどマザーの子らか…」
「あんた、まだ神力が…!」
セレナの声に怒りが現れる。
「残しておくに決まっているじゃないか、こういう事も想定してね…それにコアの力だ、そうやすやすと使いたくはない…」
俺は、怒りに震えていた。そして、我慢できずそいつに飛びかかり、地面にねじ伏せた。
「てめぇ、それ以上兄貴の体で好き勝手してみろ…殺す!」
「私を殺せば、兄も死ぬぞ?」
「くっ!それでも、てめぇに乗っ取られるよりマシだ!」
しかし俺は、凄い力で弾き飛ばされる。
「がっ!」
「私はまだ死なない、一旦引くが必ずコアを手に入れてやる」
「「逃す訳ないでしょ!!」」
奴の足元の地面から光のツルが生え出てくる。それは瞬時に奴の足に絡みついた。
その隙にセリカが空を舞い、奴の周りに陣を描くように札を貼る。すると、その札から光の鎖が現れ奴を掴んだ。
「ぐぅ…!」
「お姉ちゃん!!」
「もうやってる!」
眩い光を放つ魔法陣のような光の陣が奴の上下に現れる。だが…
「やはり貴様らはマザーの力を分けた存在、よって力不足!魂を消すのにそれだけ時間がかかっていては神の使いは務まらないぞぉ!」
そう言うと奴はツルも鎖を砕き、光の陣の外へ出ようとする。
「嘘!?」
…だが俺は聞こえていた、兄貴の声が…俺は残った力を全て使い最速で距離を詰める。
そして、奴が陣の外へ出た瞬間を狙い左足を踏み込む。
「おおおおおおおおぉぉ!!!」
「何!?」
綺麗な弧を描き放った俺の蹴りは奴のこめかみにヒットした。そのまま光の陣の中へ叩きつける。
「ぐっ!?」
倒れたまま奴は起き上がれない。
「なっなんだ!?力が入らん!」
「てめぇは兄貴を乗っ取れちゃいねぇ!まだ兄貴は生きてんだよ!!」
「くそっ!こうなれば残りの神力を!!」
その瞬間兄貴の体がブレる。
「もう諦めろ、ヨシヤ」
「兄貴!?」
その声は完全に兄貴だった。
「貴様ぁ!裏切るのかぁ!」
兄貴の体でお互いが喋る。
「裏切る?違うね、元々はお前が勝手に入ってきたんだ。それにどうやらお前は今回で2回失敗してるみたいだな」
「あぁ!?」
「2度も同じような失敗をする奴に3度目は無い」
その時、光の陣がさらに輝く。
「ショウスケくん!離れて!」
そして、セレナが叫ぶ。
「母さんが残してしまった負の遺産はここで消し去る!!ソウルデリート!!」
「くそぉおおお!!発花イツキィィ!!」
一瞬、光が弾けたかと思うと一点に収束し、そして音もなく消えた。
「ハァ…ハァ…終わった…」
俺は倒れたままの兄貴に駆け寄る。
「兄貴!起きろ!兄貴!」
すると、うっすらと目が開く。
「ショウスケ…ありがとうな…」
「…!?」
確かに兄貴の声だが、口が動いていない。
「発花イツキの魂もほぼ消えかけてるわ、肉体にギリギリしがみ付いているだけよ…」
「まだ少し力がある内に…お前達に伝えなければならない事がある…いずれ戦わねばならない強大な敵が…」
その瞬間俺はなにか強い力に押され数十センチ跳ね飛ばされる。
トンッ
一瞬何が起こったか分からなかった、目の前に突然現れた2本の光の剣。
それは俺がいた場所に1本、そして…
「…!!!兄貴!!!!」
兄貴の胸に1本…
3人は上を見上げる、そこには光を放つなにかが飛び去って行く所だった。
「なんなの!?なんで誰も気付かなかったの?」
「嘘…」
「どうしたのお姉ちゃん」
「私の追跡を…振り切った…」
「え…?」
俺が近づくと光の剣は消える。
兄貴の体にはしっかりと剣が突き刺さった跡が残っていた。
「こんな…」
俺は歯を食いしばる。
兄貴の魂はもう消えているようだった…
「誰だ…」
俺は立ち上がり、涙で滲んだままの空を睨み付ける。
「絶対に許さねぇ!!!」
ファントムブレイヴを読んでいただきありがとうございます!
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長かった第四章もあと数話、読んでいただいてる方には感謝です!
ではまた次回でお会いしましょう〜