第四章phase2 第19話「発花イツキ」
前回のファントムブレイヴ
兄との激しい戦いの中、兄の中に別の何かがいる事を感じていたショウスケ。そして、その最中何者かが兄の中から顔を見せる。ショウスケは兄を解放するため、全力を賭け、炎を燃やす…
放った拳は兄貴の拳とぶつかる。
炎と炎が弾け、そしてそれを合図とするようにお互いが拳を乱舞する。
「「おおおおおおおお!!!」」
その中、兄貴の蹴りを溝落ちへ喰らう。
「ぐっ!?」
そして、畳み掛けるように兄貴は攻撃の勢いを強める。数発、拳を喰らうが飛んできた蹴りを受け止める。
「おおおお!!」
そのまま足を掴み兄貴を投げ飛ばした。
そして、それを追いかける。
「!!」
飛ぶ兄貴の上を取った俺はフルパワーで拳を放った。
手でガードはされたものの兄貴は地面に叩きつけられる。
「白炎榴弾!!」
俺は更に追い討ちをかける。
兄貴は立ち上がり、炎の薔薇を咲かせる。
「プロテクトローズ!」
薔薇は白炎榴弾を呑み込み、そして残ったいくつもの薔薇がキュッとすぼむ。
「ローズパージ!!」
すぼんだ薔薇から炎のビームが放たれる。
「白炎・乱れ桜!!」
炎の桜が咲き、その花弁が舞いビームを掻き消した。そして、その花弁に乗り兄貴へ急降下する。
「!?」
兄貴の顔面へ拳を喰らわせる。
「おらぁああ!!」
「ぐっ!!」
兄貴はよろめく。
間髪入れず、桜の花弁とともにアッパーを放ち兄貴を空へ打ち上げた。
「これで終わりだ…」
俺は残りの気力を全て攻撃に回す。
「くっ…花焔…」
兄貴はそれを察知し俺へ向かって魔法陣を展開する。だが、それより早く俺は攻撃へ移る。
俺は両手を合わせ燃え盛る白炎の剣を作る、そして空へ飛び上がった。
「花焔爆炎斬!!!!」
展開していた魔法陣ごと俺の刃は兄貴を斬り裂いた、そして俺が着地すると同時に爆発が起こる。
「俺の…勝ちだ…」
◇◇◇
「ハァ…ハァ…」
「息が上がってきたわね」
あたしはまだイデアルと戦いを繰り広げていた。
「あんただって服がボロボロじゃない」
「服だけね」
イデアルはそういいながら帽子を脱ぎ、汚れを払う。
「そういえば、あなた何回私に触ったかしら」
「…さあね」
イデアルはあたしに手をかざす。するとあたしの胸の辺りが淡く光る。
「あなたの中に爆弾を仕込んだ、触った回数だけね」
「!!?」
「あなたがたとえどんなに頑丈でも内側から爆発すれば…どうなるかしらね」
イデアルは微かに笑いかざした手を閉じていく。それと同時にあたしの中の光が強くなっていく。
「リヴァイア!取り出すよ!!」
「もうおそ……」
イデアルがピタリと止まる。
「?」
スッと目を閉じ、うっすら目を開けた後イデアルが呟く。
「なんだ…負けちゃったの…」
「なに?」
イデアルはかざした手を下ろし、こちらに背を向ける。
「なにしてるの」
「親分が負けたのよ、私はその時点であなたを殺す必要が無くなった」
「親分…?ショウスケの兄ちゃんの事?」
「まぁあなたを殺しておいてもいいけど、主様は無駄な殺しは許さないタイプなの」
「主様…?」
「主様は人の死がもたらす影響の大きさ、そして重要さを理解してる、むやみやたらと人は殺さないの」
「主様って誰のこと?なんの話をしてるの?」
「いずれ分かるわ…この戦いはあなた達の勝ちよ、じゃあね」
そう言うと、イデアルは魔法で姿を消した。
それを見た後あたしは膝をついた。
「どういうこと…」
そして、ある事実の実感が湧いてくる。
「あたし、勝てなかった…」
暗闇の中、1人地面に拳を打った。
◇◇◇
黒煙の中から影がひとつ落ちていく、ドサッと地面を転がった。
俺はそれに近づく。
「兄貴…」
未だ俺の白炎が兄貴の体で燃えていた。
「ショウスケ…僕は負けたのか…」
「あぁ、やっと俺の1勝だ」
俺はその場に座り、兄貴に問う。
「なぁ、あの日の事を教えてくれねぇか」
「……あの日、両親の会話を聞いた僕は震えながらも自分の部屋に戻りベッドへ潜った…」
◆◆◆
「僕は…いらない存在なんだ…」
「そんなことはない…」
「!?」
震えるイツキ少年へ話しかける声。
「お前は魔導士だ、世界を統べる力がある」
「だっ誰!?」
布団から飛び出し、部屋を見渡す。
「私の名はヨシヤ、今は魂だけとなり彷徨っていた、ある目的のために」
姿は見えないが確実にイツキ少年の近くにそれはいた。
「目的はなんだ、僕に何の用がある…」
「お前、世界を恨んでいるな。その恨み、私とならば晴らすことができる」
「何の話だ…!」
「とぼけても無駄だ、今お前は絶望している。自分に家族に世界に!私が力を貸してやると言っている、私と共に行けばこの世界はお前の物だ」
最後、イツキ少年へ囁くように言った後、そのヨシヤと名乗った魂はイツキ少年の中へ入る。
「うっ…!!」
「お前と私で最強となろう、そしてコアを手に入れるのだ…!」
そこでイツキ少年は気を失う、そして翌日からイツキ少年は闇へ闇へと歩んでいくこととなる…
◆◆◆
「そうしてこいつは僕の中へ入った」
「…今、この話をして大丈夫なのか?」
「何故だか今は気配を感じない、ショウスケの一撃で気絶しているのかもしれない」
兄貴は目を閉じる。
「ショウスケ、僕を殺せ」
「!?」
「どの道僕は殺される、ならお前に殺されたい」
「嫌だ」
「ショウスケ…」
「まだ俺は兄貴に1回しか勝ってねぇ、今まで負けた分取り返すまではダメだ」
「兄の最後の頼みだ、やれ…!」
「だから、最後じゃねぇ!」
「いいえ、最後よ」
突然、女の声が割って入る。
「お前は…セリカ!と誰だ…?」
そこに現れたのは預言者セリカともう1人の女だった。
「こっちは調停者、セレナお姉ちゃんよ発花ショウスケくん」
2人はこちらへ歩いてくる。
「それより、最後ってどういうことだ。なんでお前らが出てくる」
「それはセリカ達が彼を完全に消滅させるからよ」
「!!?」
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