第四章phase2 第18話「潜む者」
前回のファントムブレイヴ
遂に激突するショウスケとイツキ。ショウスケは圧倒されながらも食らいつき、激闘の中、修行の末手に入れた力を解放する。
そして、2人の戦いは激化する。
月が雲に隠れ更に闇夜が深くなる中、白き炎と紅蓮の炎がぶつかる。
俺とイツキは額を突き合わせ、互いを睨む。
「僕は止められないぞ!ショウスケ!」
「いいや!止める!ここでこの戦いを終わらせる!」
互いの炎が膨らみ、一方を呑み込もうと迫り上がる。
「白炎榴弾!!」
俺は先に仕掛ける。
少し距離を取るように後ろに跳び、四方から榴弾でイツキを囲む。
「プロテクトローズ」
榴弾の進行方向に炎の薔薇が咲き、榴弾を包んだ。そして、まるでロウソクの火のようになって消える。
「それは、別世界のお前の技だな。なるほど、完全にものにしてるようだ」
イツキは細い炎を周囲に巡らせる。
「炎鎖」
そして、それがどんどんと炎の鎖になっていく。
イツキが近くに漂う鎖を引っ張る。すると、俺の周りにも漂っていた鎖が突然素早く動き右手、右足を縛る。
「断ち切れねぇと思うのか?」
「思わないさ、だが僕の攻撃より先に断ち切れるとは…思わない」
グンッと視界が揺らぎ、俺は地面に叩きつけられる。
「ラフレシア」
「ぐっ!!」
俺を中心として爆発するように大輪の炎の花が咲く。
俺はそれらを掻き消すために白炎を強める、だが掻き消す前に鎖が上空へ伸びる。
「やべえ!」
鎖が伸びた先には巨大な火球。
「紅蓮鈴蘭!!」
鎖がピンッと張ったかと思うと凄まじい勢いで火球が迫ってきた。
「散れ…」
直撃そして爆発。
俺はもろに攻撃を食らってしまう。
「終わりだ、これで…」
イツキは魔法陣をいくつか展開する。
「花焔滅尽…」
言いかけたところで俺は土煙の中から飛び出す。
「白炎徹甲弾!!からの…!」
俺は徹甲弾をいくつも放ち、地面を勢いよく蹴った。
「爆蓮華!!」
徹甲弾と爆蓮華で炎鎖を切りながら駆ける。
「呑み込んでやる、花焔滅尽波!!」
強力なビームが放たれる。それに徹甲弾を全て当てがい、そのまま自分も突撃する。
「おおおおおお!!!」
そして、徹甲弾と爆蓮華の爆発でイツキの花焔滅尽波を相殺した。
「っ!!」
「オラァァ!!」
白炎を纏った拳をイツキに叩き込む。
「ぐっ!!」
防御はされたものの、イツキは足で地面をえぐりながら吹き飛ばされる。
「ふぅ…」
「ハァ…ハァ…」
息切れ、俺の体力は確実に減っていた…
「どうやらその力、相当消耗するみたいだな」
イツキは防御した腕を払いながら言う。
「イツキこそ、消耗してるんじゃねぇのか?今のパンチ、消耗してないなら軽くいなせたはずだ」
「弟だから分かると…?」
「あぁ、分かる。イツキが本当はもっと強いことも、本当はもっと優しいことも分かってる」
「そうか、じゃあ僕は兄だから分かる。お前が僕の立場なら同じ事をしていたと、たとえお前が僕の立場でも今と同じ状況になっていたと…結局は定められた運命なんだよ」
俺はイツキを睨む。
「だとしても…いや、だとしたらイツキが俺を止めてくれたはずだ…!」
「!!」
「今と同じ状況になっていたのなら、俺とイツキは立場が逆ってことだろ?じゃあイツキは俺を止めるし、俺もイツキを止める」
「僕は止めずにお前と同じ道を行くかもしれないぞ?」
「それは無ぇ」
俺は言い切る。
「っ!」
「イツキは優しいからな…」
雲に隠れていた月が現れ、影ができるほど明るく照らす。
「そう、イツキは…俺の兄貴は優しかった。あの日までは…兄貴の話を聞いて分かったよ、あの日が兄貴を狂わせた日だったんだな」
「僕は狂ってなんていない」
「あの日から兄貴は俺に手加減しなくなった、その時まで兄貴に気絶させられるほどボコボコにされた事なんてなかった…あの日から、俺は突っ掛かって行くたびに気絶させられてた」
「僕はあの日で変わったんだ、変わらなければいけなかった。世界を相手にしていくには…」
「いや、違う」
俺は食い気味に言う。
「兄貴はどんな時でも自分より弱い相手をいたぶるような弱い奴じゃなかった、この1年考えてやっと分かったよ…あの日、兄貴は誰かに…」
俺の言葉を遮るように、イツキは叫ぶ。
「僕が誰かに指図されてこんな事をしてるって言うのか!!?バカ言うなよ!僕は僕の意思でやってるんだ!」
「そうだ、兄貴はあの日何者かに唆された、確かに兄貴の意思かもしれねぇ…でもきっかけはそいつだ!」
「さっきから聞いていれば、どれも憶測じゃないか!“私”をバカにしてるのか?」
「私…?」
「っ!!」
「なるほど、てめぇは兄貴の中にいるんだな?乗っ取ってるって訳じゃなさそうだが、あの日から壊れた兄貴の心に浸け込み利用している!」
「だからなんだ…そうだとしても僕はこうなっていた!」
「なってねぇ!だから言ってんだろ!兄貴はそんな弱い人間じゃねぇ!そいつさえいなけりゃ兄貴は乗り越えられたはずだ!」
俺は白炎を纏う。
「お前に何が分かる!!!」
「分かる!兄貴に勝ってそれを証明してやる!」
一気に距離を詰め、拳を放った。
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ではまた次回でお会いしましょう〜