第四章phase2 第15話「災厄の魔女」
今回から前書きで前回の説明的な事を書いてみようと思います。
ファントムブレイヴ、前回のお話
再度立ち上がり兵士を操っていた魔導士エクレールだったがダイチの攻撃により完全に沈黙。残る魔導士はイデアルとソレイユ、ソレイユが口にした“旧王族”とは…そしてあの場所でイデアルとアオイが対峙する。
川の辺り、あたしとイデアルは対峙する。
「その龍、生きてたのね」
「リヴァイアはあんたにやられるようなやつじゃない」
「ふふ…言うじゃない」
「行くよ、リヴァイア」
リヴァイアが弾けて水になり再びあたしの中へ入ってくる。
「失った気憶・青龍の鎧、その極まった姿…ドラゴン・ソウル」
あたしの体から、水の角、水の尻尾が生え、龍の鱗の籠手、胸当て、脛当てと装備が出来上がる。
「あんたに龍の拳、打ち込んであげる」
「ずいぶんと好戦的な見た目ね」
「1年前のあたしだと思わないことね」
あたしは駆け出し、拳をグッと握りしめる。
先行して、水の気弾をイデアルへ放つ。それをイデアルはいともたやすく消し去った、あたしはイデアルを飛び越え、背後から拳を叩き込みにかかる。
だがその拳も、杖と防御魔法で止められる。
「すこしすばしっこくなっただけかしら?」
あたしは止められている拳に力を込め、防御魔法と杖を押し返すように拳を振り切った。
イデアルはふわりと飛びながら自身の背後へ身をかわす。
「ふふ…いいパワーね」
「こんなもんじゃないよ」
「私はね、色んな魔法が使えるのよ…炎や雷、付与に防御魔法…でも、その中で一番得意で一番好きなのはね、爆発魔法なの…」
突如、あたしの周りでいくつもの小さな魔力が渦を巻き光る。
「爆発って美しいじゃない…?」
あたしは危険を感じ即座に飛び退く、瞬間その魔力の渦で爆発が起こる。
「くっ!」
多少吹っ飛ばされたが、地面に手を突きながらバランスを保つ。
イデアルが杖を振る、するとあたしの周りで魔力が渦を巻く。あたしはすかさず駆け出した。
あたしを追うように爆発が連続で起こる。
「ふふふ…どこまで逃げられるかしら」
今度はあたしの向かう方向で爆発が起ころうとしていた。あたしは地面を蹴り、空へかわす。だが、かわした先でまた魔力の渦が発生する。
「邪魔くさい!」
あたしはその渦を水で包む、関係無く爆発は起こるがかなり威力は弱まっていた。その衝撃でイデアルへ飛ぶ。
「龍の滝落とし!!」
イデアルへ向かっての水を纏ったかかと落とし、それはまた防御魔法で止められる。
「これごと砕いてやる!」
「それが爆発する前にできるかしら?」
あたしの背後でいくつもの渦が起こった。
「まずっ!」
あたしは攻撃中の足を使い前方へ飛び退く、しかし、見えない壁にぶつかった。
「なっ!!」
容赦無く爆発が起こる、あたしは吹き飛ばされたが宙返りしながら地面に着地する。汚れた顔を手で拭う。
「へぇ、意外と元気じゃない」
「龍の鱗、あれくらいなら硬化させた鱗でダメージはこれぐらいですむ」
「もう少し遊んであげましょうか」
イデアルは杖で地面をコンッと叩く。すると、広範囲の地面に魔法陣が展開される。
「地雷原」
「龍の拳」
拳を握りしめ、水を纏う。そして、その地雷原を走る。次々と爆発が起こるが全て龍の鱗で防いでいく。
「逆に地雷の爆発で推進力を得ている…!」
イデアルはいくつもの魔弾を放ってくるがそれらを全て弾く、弾いた魔弾はその瞬間爆発する。
あたしは一気にイデアルの目の前まで詰め、拳を叩き込む。
体勢は低く…相手の溝落ちへ確実に拳を捻じ込む!!
イデアルはすかさず、手で拳を受けようとする。
「この距離、この威力!防御魔法程度じゃ防げないよ!」
だが、イデアルの顔は澄ましたまま変わらなかった。
「あなたの龍の鱗だけど…ゼロ距離で爆発を受ければさすがにダメージは入るかしら」
「!?」
あたしの拳がイデアルの手のひらに触れた瞬間、爆発が起こる。それもあたしの方へだけの爆発、あたしは地面を転がる。
イデアルは少し風を起こし土煙を払う、あたしはすぐに起き上がる。
「くぅ…」
右腕がジンジンと痛む、折れてはいない、だがかなりの衝撃で肩が脱臼していた。
「結構防御力あるのね、腕を吹き飛ばすつもりだったのだけど」
あたしは肩を抑える。
「ハァ…リヴァイア…」
リヴァイアが現れ、あたしの右腕を包み脱臼した肩をガコッと入れる。
「サポートお願いね」
そして、リヴァイアのオーラだけが右腕に残る。あたしは構えを整える。
イデアルがあたしを見つめ、大きなとんがり帽子の奥でニヤリと笑う。
「ねぇ、私が元いた世界でなんて呼ばれてたか分かるかしら?」
「さぁね、今のこの状況となんら関係ない」
イデアルは続ける。
「“厄災の魔女”…彼らはそう呼んだわ。それもそうよね、世界に1人の魔法使いが爆発の魔法を好んでいて研究もしてるなんて、恐怖でしかなかったと思うわ」
「何の話?」
「当然、彼らは私を監視下に置くもしくは殺そうとしたわ…私はそれが許せなくてね、だってそうでしょう?私、何も悪い事してないのよ?それで…国をひとつ消したの」
「…!」
「私に次々と送られてくる兵士、常に監視される家、耐えられなかった私は見せしめにその国を消したの、爆発の魔法でね…その時の景色は最高だったわ…そして、瞬く間に厄災の名が広まった」
構える体に力が入る。
「今、あなたは国ひとつを簡単に消せる相手と戦っているの」
「だから何?たとえそうであったとしてもあたしは戦うわ」
「…少しはその自信に溢れた生意気な顔が歪むと思ったのだけど、ダメね〜やっぱり私言葉でどうこうできるタイプじゃないわ」
イデアルの目が淡く光る。
「実力を見せつけないとね」
あたしの周囲の地面が盛り上がる。危険を感じ即座に飛び退いた。
直後、轟音と共に地面が爆発する。
「ぐぅ…っ!」
イデアルが杖を薙ぐ。周囲がキラリと光り瞬時に爆発する。
「この威力っ!」
大きな爆発を起こすにはある程度の時間が必要なのだと思っていた…それは間違いだ、単に力を出していなかっただけだ…!
「エクスプロージョン」
その時、一際大きい光りが起きる。
そしてそれは、まるで巨大な爆弾が落とされたかのような爆発を起こし、あたしはそれに呑みこまれた。
ファントムブレイヴを読んでいただきありがとうございます!
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ではまた次回でお会いしましょう〜