第四章phase2 第6話「ヒロトvsルヴァン」
ハヅキを後にし城内を走る。
「クソッ!迷路かよ!」
案の定、俺は迷っていた。また似たような十字路に差し掛かる。その時、十字路に兵士が1人現れた。
「もう見つかってんだ、構ってられるか!」
俺はそのまま突っ込む。
「なんだ!お前!」
「どけぇえ!」
俺は影籠手を纏い殴り飛ばす。が、そいつを影籠手を伸ばし掴む。
「お前に聞いた方が早そうだな」
「ヒィッ!」
「玉座はどこだ?」
◇◇◇
俺は階段を登る、上を見据えしっかりと感じるその気配に集中する。
階段を登り切る、俺の足元から真っ直ぐ伸びる赤いカーペット、その先に鎮座する大きな玉座…そしてその前に立つ1人の男…
「来たな、月永」
男は振り返る。
「あぁ…決着つけようぜ、ルヴァン」
ルヴァンは以前とは違い真っ赤な軍服を身に纏い、ピシッとした出で立ちでレイピアを構えていた。
「影武装」
「暴風域」
俺は失った気憶を解放し、ルヴァンは暴風域を展開する。
室内に風が吹き始める。
「広いとは言え室内じゃあ前みたいな動きはできねえなぁ?」
「わっちは、風さえ吹けばノれる」
そう言うとルヴァンは風の中へ消える。段々と風が強く吹く。
「お前は籠に囚われた鳥だぁ、そこから動けずわっちに切り刻まれ殺される運命よぉ」
「俺を殺せないんじゃなかったのか?」
ルヴァンの気配を感じ、鬼丸に刀身を造り攻撃を受ける。
「生きていればいい、そう言われている。つまり腕がもげようが足がもげようが関係のないこと…お前を人間の形のまま渡せとは言われてない」
再び風の中へ消える。
「手早く終わらせよう、乱気流…」
「おいおい、まさか…」
「龍螺旋!」
俺を無数の斬撃が襲う、だがそれを全て弾き返し接近していたルヴァンの溝落ちへ蹴りを放つ。
「ぐぅ!?」
ルヴァンはそのまま天井へ激突する。
「まさかとは思うけどよ、1度見せた技が俺に通用すると思ったのか?」
「ほぅ…1度しか見せていない技を1年で完璧に対応できるようになるかぁ…いいだろう」
ルヴァンは再び風の中へ消える。
「風が邪魔だな」
「消したらどうだぁ?1年前のように」
「七天抜刀は封印したんだよ」
「ならば都合がいい」
風の中からいくつもの何かが飛び回る音が聞こえる、ルヴァンの“かまいたち”だ…
俺は機械柄“鬼丸”を手の鞘に収める。
「乱気流・死の回旋曲!!」
風の中から無数の巨大な風の刃が現れる、それは四方八方から俺へ襲いかかる。
「夜天…」
俺はその風の刃の中の1つへ地を蹴り距離を詰める。
「居合斬り!」
一瞬で風の刃を斬り、再び鬼丸を収める。
俺の背後には風の刃は消え、ルヴァンが倒れていた。
「この技を…初見で見切るかぁ…!」
「どうした?立てよこんなもんじゃねぇだろ」
「当たり前だぁ、わっちを誰だと思ってる」
ルヴァンがゆっくりと立ち上がる。
「だが、今ので確信した…わっちも本気でぶつかっていいんだと…正直たかが一年でわっちに追いつけると思っていなかった、本気でぶつかればお前は死んでしまうと思っていたぁ」
辺りの風が無くなる。
「お前たちには自己強化の術がある…では我ら魔導士にそれはないと思うか?思うのならばそれは変だ」
どんどんルヴァンの魔力が上がっていくのを感じる…
「魔力解放…」
ルヴァンがオーラを纏う。
「魔導士は普段…魔力を無意識のうちにセーブしている、それはこの魔力の少ない世界で魔力の無駄遣いを防ぐためだ…だが、一部の魔導士にはこのセーブを解ける者がいる」
ルヴァンがレイピアを体の前に立てる。
「そのうちの1人がわっちだ」
上がった魔力はそのままにオーラが消える。
風はなくなり、逆に全く風のない空間が出来上がっていた。
「風の魔導士ルヴァン、推して参る」
気づいた瞬間にはルヴァンが目の前にいた。
「くっ!!」
初撃を防ぐ。次の手を放とうとした瞬間、ルヴァンの動きが変わる…確実に俺の喉を狙っていたレイピアが方向を変え脇腹に迫る。俺は体を捻りそれを流そうとする…が、背中に鈍い痛みが走る。
「がはっ!」
「おかえしだぁ」
ルヴァンの蹴りがもろにヒットし俺は飛ばされ壁に激突する。
「くっ気持ち悪い動きしやがって…」
立ち上がると同時にレイピアが目の前を通過する。ギリギリでかわしたレイピアが壁に刺さり、一瞬の隙を逃すまいとルヴァンへ肘打ちを放つ、それを防御しようとするのを確認すると俺はさらに刺さったレイピアを持つ腕へ右膝蹴りを放った。
俺は肘打ちか膝蹴り、どちらかの攻撃が当たったと確信した…だがルヴァンはその一瞬の攻防の中信じられない動きをする。肘打ちも膝蹴りも到達する前に俺の足を掴んだ。
「なに!?」
ルヴァンは掴んだ足を離さず俺を引っ張り上げ放り投げた。
「なんつー速さだ!予測しても今の反応できるもんじゃねぇぞ!」
「予測ではない、風が教えてくれるのだ次はこう動くぞとなぁ」
俺は今のを見せられてすぐに詰めることができない。
「ちなみにぃ、今右足から動こうとしただろう?」
「っ!」
「後の先…魔力解放したわっちと風なればその境地に達する」
ルヴァンはレイピアを抜き再度構える。
「チッ…この状態の俺じゃあ五分五分かそれ以下、俺も見せるか“上”を」
「上だぁ?」
「この1年の成果、見せてやるよ」
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ではまた次回でお会いしましょう〜