第四章phase2 第5話「ハヅキvsエクレール」
王都城内を走る俺とハヅキ。
「月永くん!何かアテはあるの?」
「無い!手当たり次第探すしかねぇ!」
牢屋には当然王の姿は無く俺たちは城の中を探すしかなかった。
その時、横の道から兵士が現れ俺たちはすんでのところで物陰に隠れる。
「別に隠れる必要ない気がしてきたな…」
「「そうだね」」
ハヅキと同時に別の誰かが返事をする。俺とハヅキは驚いて振り向く。
そこには際どい服を纏った金髪の女が“浮いて”いた。
「お前は…!」
「そうだよ〜なんであなたたちそんなコソコソしてるの〜?派手に暴れ回ればいいのに〜」
「月永くんこいつ!」
「あぁ、魔導士だなお前」
「1年前の男の子はいないのね〜残念」
その時、ハヅキが何かに気付き俺に術式をかける。バチッと俺の周囲で電気が弾けた。
「あら?」
「見えないと思った?」
「電気系の魔法か」
「月永くん、こいつは私に任せて先に!」
俺は一瞬迷ったが、ハヅキを信じ魔導士の横を抜ける。
「そうそう、あなた…ルヴァンが玉座で待ってるわよ♡」
その瞬間魔導士がこちらにウィンクをしながら言う。
「何?」
俺は一瞬立ち止まるが、また駆け出した。ルヴァン…あいつがここいる…俺はまた探し物が増えたと思いながら玉座を探した。
◇◇◇
私はこのサキュバスみたいな女と対峙する。
「簡単に行かせるのね」
「だって2対1じゃあ不利でしょ?それにルヴァンにあの子を取るなって怒られちゃう」
「なんでもいいわ、私たちはここで足踏みしてられないの」
私は失った気憶を解放する。
「あら綺麗ね♡でも、そこからあなたはもう動けない」
「え?」
周りを見ると僅か5cmほどの電気の球が無数に漂っていた。
「小さいけどそれに触れれば丸焦げになるわよ♡」
「みたいね、でも私は動かずにあなたを倒せる」
「へぇ〜」
「だって、すでにあなたは“略奪”の射程距離内だから」
私は略奪を発動し彼女から光を奪う。目に入る光や体に当たる光さえも。
「わ!すごぉい!ほんとに何も見えなーい♡これが光の無い世界!」
なぜかテンションが上がる彼女に少しの恐怖を覚える。
「だけど…私は電気の魔導士エクレールよ?目が見えなくても電磁波であなたの動きぐらいは分かるし、その電球だって動かせるのよ?」
電球がじわじわと私に集まり始める。
「“スター”クロス・バレッズ!!」
私はトゲの付いた光の球を3つ周囲に作った。それは私を中心に様々な角度で回転する。
「こんなもの…」
バレッズが電球に触れるとバチッと大きな音と閃光を放ち電球は消える。それがいくつも重なりまるで花火の中心のように連続して起こる。
「私の障害にはならない」
「ふーん、でもこれはどうかしら」
バッと手を広げると私の周辺の壁や天井に電流が走る。
「さぁ踊りなさい♡」
その瞬間壁から稲妻が私へ放たれる、私はそれを避けようとした…
「え!?」
足がその場から動かなかった、まるで強力な磁石でくっつけられてるみたいに…
そして、容赦なく稲妻は私を射抜く。
「きゃぁぁあああ!!!」
「いい悲鳴ね♡目視で見えないのが残念だわぁ♡あなた、そこから動かずにこの私、エクレールに勝てるって言ったわよね、望み通り動けなくしてあげたわ♡」
そう言う間にも稲妻は襲い来る、バレッズや光球で対応するも簡単に突破される。
「あ…くっ…」
「無数にあった電球…それを壁や天井にくっつけて一気に通電させたの♡あなたの足は切断でもしない限り外れないわよ?」
「ぐっ…!シャインスコール!!」
私は一瞬で大量の光の弾を出現させそれを放った。
「今更そんなもの当たると思うの?」
エクレールはいともたやすくそれらをかわす。だが、目が見えない分避けることに集中するとこちらへの攻撃は緩んだ。
それを見ながら私は一際輝く光弾を作る。
「ルミナス・バレット!!」
そして、それを放った。
「だから、当たらな…」
その言葉を言い切る前にエクレールはルミナス・バレットの目の前に移動する。
「え?」
「ポイントワープ」
先程放ったシャインスコールの光弾をワープする点とし、略奪下にあるエクレールをルミナス・バレットの目の前に移動させた。
エクレールの脇腹に命中したバレットは触れた瞬間炸裂し無数の光を放ちエクレールを吹っ飛ばした。
「ぎゃはぁあ!!」
「全弾命中…!」
しかし、エクレールはふらふらと立ち上がる。
「許さない!」
物凄い形相で私を睨む。
「結構、あなたはもう私の支配下にあるわ」
「そう…でもこの閃光であなたは私を一瞬でも見失う」
その時、電球が一気に集まり激しい閃光を上げた。
「くっ!ポイント…」
私の首にスルッと背後から手が伸びる。
目が見えない中あの一瞬でバレッズをすり抜け、私の背後を取るなんて…
「あなたの仲間にも似たようなことが出来る子がいるでしょう?私はそれ以上に強いのよ?」
「速坂くんのことを言ってるならそれは無いわ。彼はあなたより強い」
「へぇ…この状況でもそんなに強気でいられるのね…」
彼女は手に電気を走らせるとそれを刃のように纏わせた。
「う…」
「このままあなたの首を掻っ切るのに1秒もかからないわ」
エクレールが手に力を込める。
「…今まで」
「?」
「今まで一体どれだけの“光”を吸収したと思う?自然に集まる光に、あなたが放った閃光…」
「何を言ってるの…?」
「今まで吸収した光をバレッズに全て乗せたわ、視えないでしょう?バレッズの位置が、私にも見えないけどね」
「何か妙なことをしてるわね!何かされる前にあなたを殺す!!」
しかし、エクレールの刃が私に触れようとした瞬間、エクレールは吹き飛び、壁をいくつもぶち破った。
「……え…?な…な…に…??」
エクレールは一切自分の状況が理解できずに動かない体を痙攣させながら困惑する。
「どう?“光の速さ”の攻撃は?」
私はエクレールが壊した壁の残骸を歩きながら問う。
「…ひ…かりの…は…やさ…?」
「言った通り、バレッズに吸収した光を全て乗せたの…そして、その状態のバレッズの速度は光の速さへ到達できる」
私はバレッズをクルクルと回転させながら言う。
「厳密には今の攻撃は到底光の速さでは無いけれど…大変なのよ?正確な位置に命中させるのは、速すぎて見えないし。だから少しお喋りで時間稼いじゃった」
エクレールは信じられないといった顔でこちらを見る。
「知ってる?光の速さって1秒間に約30万メートルも移動するのよ?さすがにあなたを倒すだけにそこまでの威力はいらないわ」
私はエクレールを指差す。
「宣言通り、私はあそこから動かずにあなたを倒したわエクレール!」
そうして、エクレールに背を向け元いた廊下に出る。
「そうそう、もう目見えるでしょ?さっきの一撃で返しておいたから。じゃっ」
そう言い残し私は月永くんを追った。
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ではまた次回でお会いしましょう〜