第四章phase2 第1話「1年後」
荒野の先にある最果ての収容所“タナトス”で今日も警報が鳴り響く。
「今日はハヅキ!あんたとだね!」
「うん!行こうバーバラ!」
私はバーバラと一緒に扉を開け、気力制御リングを機械に通す。
外に出ると、すでに大きな音が鳴り響いていた。
「この音…」
「何かが走ってくるような音だね」
男側の2人も到着し、だんだんと近づいてくるその音に身構える。
音がだんだんと大きくなり木を薙ぎ倒す音も聞こえる。
「来るよ!」
「失った気憶解放!略奪の光姫!」
その時、数十m先でその音の発生源が跳ねる。
それは巨大な猪のような自然の怒り、だが本来顔がある部分から大きな角が生えていた。それよりも…私の目に映ったのはその上に乗っている…
「人…!?」
確かにやつが跳ねた瞬間その上に人のような影が乗っているのが見えた。
「なんだって!?」
「バーバラ!人が!あいつの上に人が乗ってるように見えたの!」
「人だってぇ?そんなのありえるわけが…」
その時、木を薙ぎ倒しその巨体が姿を現す。
「来たね!」
皆、身構える。しかし、そいつはさらにスピードを上げ壁へ突進した。
ズドォオン!!
「なにっ!?」
「速い!!」
だがそいつは、壁に大きな角を突き刺し動けなくなっていた。
「なんなんだいこいつは…」
「あらら〜動けなくなったか〜」
土煙の中からそこにいる誰でもない声が聞こえる。
「人だ!」
やっぱり…人だった…!でもこの声…
「というかなんなんだこの壁、結構高いな…おっ?」
その人間はこちらに気付く。
「人がいるじゃねぇか…っ!」
その時、カイブツが暴れだす。
「ったく…お前はもう用済みだな」
大きな黒い剣がやつの頭上に現れる。
「お疲れさん」
ズドンッっと剣が自然の怒りを貫く、すると今まで暴れていたそいつがピタリと止まり徐々に粒子となって消え始めた。
「誰だか知らんがすまなかった、こいつの足が速そうだったからさここまで乗せてもらってたんだ」
男はフードを脱ぎ、こちらに顔を見せた。
「つ…つ…月永くん!!!」
「え?」
私は思わずその名前を叫び駆け寄った。
「ハヅキじゃねぇか!なんでこんなとこにいるんだよ!」
「月永くんこそなんで壁のこっち側から…」
「あ〜まぁ話すと長いんだけど…」
「へぇ、あんたが月永ヒロトかい」
バーバラがこちらへ来る。
「あんたは?」
「私はバーバラさ、あんたの事はハヅキから聞いてるよ」
その時、警報が鳴り響く。
「気付かれたね…」
「気付かれた?」
「看守共さ、あんたも指名手配されてるからね」
「なるほど」
「ここで長々と話してる暇はないよ!さぁハヅキを連れて行きな!」
「言われなくても」
そう言うと月永くんは私を持ち上げた。…お姫様抱っこで。
「ちょっ!」
「捕まってろよ!機械変靴!」
月永くんはグググッと屈む。
「えっちょっまっ…きゃああああ〜!!」
大きな力で地面を蹴り、私たちは空を飛ぶ。
「ちょっと届かねえか…」
月永くんは機械変靴の底に刃を造り、垂直の壁に突き刺し、立った。
「おらぁああああ!!」
そのまま壁を走る、そして壁の頂上へ着いた。
「よし!」
「落ちるかと思った…」
「落とすわけねぇだろ」
「しかし、高い壁だなぁ」
その時…
「月永ヒロト!!!!そこで止まれ!!!」
どこからともなくスピーカー越しの声が聞こえ、目の前に装甲ヘリが3機現れる。
「貴様をここで捕らえる!!」
「やってみろよ」
月永くんはそう言うと同時に空中へ飛び出す。
「飛行ユニット“オンライン”!」
その言葉に反応し、月永くんの背中から拳ほどの大きさの機械が4つ飛び出す。
その機械がサポートしながら私達は再び空を飛ぶ。
「撃てぇえええ!!」
ヘリから無数の銃弾が発射される。しかし、月永くんはそれを2本の造り出した刀で弾く。刀が空中を自在に舞う。
「その程度なのか?」
月永くんはヘリの上に刀を造る。
「え!?氷!?」
その刀は影の刀ではなく明らかに氷の属性の刀だった。
「落ちろ」
造り出された3つの氷の刀は3機のヘリを貫いた。みるみるうちにヘリは凍り、落ちていく。
「そんなんじゃ1年前の俺も止められねぇぜ」
「ハッハッハッ!!あのヘリはただの囮だ!!さぁ起動するぞ!!」
「なんだ声の主はヘリに乗ってなかったのか」
すると、私達を囲うように辺りの地面から大きな装置が迫り上がってくる。
「この私!ジャック看守長考案の360度からの巨大魔導砲!ジャック・タナトスだ!!」
「魔導砲だと?」
その時、先ほどよりも小柄なヘリが現れる。
「貴様達が魔導砲に焼かれ倒れる姿を見せてもらおう!!」
「さっきから声がでけぇなぁ…というかこんなもん余裕で避けられるんだけど」
確かに、いくら四方を囲われているとはいえこの距離なら難なく避けられる。
「…避ける?避けるだと??まさか、あの月永ヒロトともあろう男が避け…いや逃げるというのか??」
「…なんだと?」
「見損なったぞ!月永ヒロトよ!では、避けるならば避けるがいい!だが、お前はこのジャックに恐れをなして逃げたと!ジャック・タナトスには勝てなかったと!後世に語り継がれるだろうなぁ!!」
月永くんは眉間にシワを寄せ眉がピクピクと痙攣していた。
「上等だ…おい…ジャックとか言ったなぁ!?撃って来いよ!避けずにクソダサネーミング大砲をお前のプライドごとぶち壊してやるよ!!」
「ちょっと!月永くん!」
「それでこそ男だ!魔力は充填済み!消し飛べ!月永ぁああ!!」
その瞬間、全魔導砲が砲身を唸らせこちらへ向けて魔導砲を放った。
私は月永くんを信じ目を瞑った…
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ではまた次回でお会いしましょう〜