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ファントムブレイヴ 〜影と光の世界渡航者〜  作者: 月永ヒロト
間章「猶予」
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間章 第8節「安堂リクの執念」


メビウスからの伝言の後、第3支部では行方不明者の捜索が行われていた。


「支部長!」


第2隊の篠森しのもりユキが支部長へ駆け寄る。


「どうした」


「リクが…リクが戻ってきません!」


安堂あんどうリクがか?ここにいたのではないのか?」


「それが…自然の怒りナチュラルビーストが襲ってくる前に“やることがある”って出て行ってしまったんです…」


篠森ユキは申し訳なさそうに伝える。

斎條さいじょうレイコは少し考えた後、篠森を見る。


「…だいたい行くところの目星はついているだろう?救護できる者を連れて行っていい。行ってきなさい」


「っ!はい!連れて帰ります!」


篠森ユキは深く礼をすると救護班のいる方へ走って行った。


「……生きているといいが」


斎條レイコは誰にも聞こえぬよう呟いた…


◇◇◇


私と救護班2人を乗せた車が走る。


「もうすぐ南大教会ですよ」


「急いで!絶対ここにいる!」


到着するや否や私は車から飛び降り、教会の扉を開ける。


「戦いの跡!!やっぱりここだ!」


教会内部は荒れており所々に斬撃痕が残っていた。


「っ!血…」


入り口近くには大量の血の跡があり、よく見るとそれは外に繋がっていた。


「篠森さん!!!」


救護班の1人が何かを見つける。見ている先を見ると床に人の足が見えた。私は駆け寄る。


「!!リクっっ!!?」


それはリクだった、体の複数箇所に剣が刺さり血だらけの状態で仰向けに倒れていた。

私は脈を確認する。


「リク!お願い!」


私の手にほんの僅かだが鼓動が確認できた。


「い…生きてる!!」


私は剣を抜こうとする。


「ダメです!」


「えっ」


「この出血量…相当血を失っています、今剣を抜けば更に血が流れる可能性があります!」「私達に任せてください」


「ご…ごめんなさい…」


私は2人に任せ、ふらふらと立ち上がる。ふと、教会の十字架を見る。するとそこにはいくつも穴が空いていた。


「…もしかして、あそこにはりつけにされてて、落ちた…?」


だとすれば…もしうつ伏せで落ちていれば…その先は考えたくなかった…

カラン…カラン…と治癒術を使いながら剣が抜かれていく。


「大丈夫そう…ですか…?」


「全力で治癒術をかけてます、今できるのは傷口を塞ぐ程度ですが…」「恐らく輸血が必要になるでしょう、篠森さんすみませんが支部に連絡を」


「わかった…」


「うぅ…」


その時、リクが声を上げる。


「意識がもどりました!」


「リク!!」


「ぐっ…その声…ユキ…か…」


「リク!大丈夫なの!?」


「危な…かった…」


リクはそう言いながら額に手を当てる。


「額に火傷の跡がありますね」


「あの魔導士が…俺の…剣を投げて…なけりゃ…死んでたな…」


リクは力なく笑う


「すげぇ勢いだったから…火傷になっちまったけど…自分の能力で…できた剣だ…無力化できるっつうの…」


「安堂さんあまり喋らないでください、あなた今結構ヤバいです」


「リク!すぐ、支部で治療してもらうからね!」


「あぁ…すまない…ユキ…」


そこでリクはまた意識を失った。


「傷口はある程度塞がりました、帰りましょう!」「車に乗せるの手伝ってください」


3人でリクを車に乗せ、支部へと戻った。


◇◇◇


ー2日後ー


第3支部内入院室

安堂リクは目を覚ます。


「うぅ…生きてる…」


安堂リクは体を起こそうとするが全く力が入らず断念する。


「手は少し動かせるな」


その時、病室の扉が開き篠森ユキと長内おさないジュンイチが入ってくる。


「リク!よかった!目が覚めたのね!」


「あぁなんとか死なずに済んだよ」


「リクくん、無事で何よりです」


「長内隊長、すみません心配かけてしまって」


「君への心配はもう慣れっこですよ」


長内ジュンイチは椅子に腰掛け、ペンとメモ帳を取り出す。


「…リクくん早速で悪いのですが、君と話をしておかなくてはなりません」


「はい」


神妙な面持ちで長内ジュンイチは話す。


「まず、3日後サブサイドは王都へ吸収されます」


「えっ!?」


安堂リクは驚き思わず頭を上げる。


「いってぇ!」


安堂リクは頭を上げた事による痛みで声を上げる。


「バカ!あんた全身ボロボロなんだから!」


「すみません、驚かせてしまって…ですが事実です。我々は王都、つまり魔導士軍に負けました…」


「負けた…?第4隊のやつらはどうした?もしかして…」


魔導士と戦った月永ヒロト達第4隊が脳裏をよぎる。


「死んではいないでしょう、高確率でですが」


「…そうだ、負けたならなんで世界は無事なんだ…?」


「それは…」


長内ジュンイチはメビウスからの伝言を伝える。


「一年…」


「はい、我々には一年の猶予は与えられました…ですが魔導士達は我々にこの間、何もさせないために自然の怒りナチュラルビーストの大量発生はサブサイドの責任とし、世間に公表したのち…吸収を発表しました」


「クソっ!


「誰が悪いわけでもないよ向こうが強すぎた…」


篠森ユキは俯きながら言う。


「吸収された後は恐らく情報共有などはできなくなります。なので、この残された時間で皆が持っている情報を集めたいのです。リクくん、あなたが戦った魔導士の情報を出来るだけ教えてください」


「…わかりました。あいつは自分のことを“デス”と呼んでました。能力は魂を操る魔法、俺の見た限りですけど、魂を奪った者の能力を使えるんだと思います。実際に、剣を出したりアヤカちゃんの能力を使ったりしてました」


「なるほど、そのデスがどれだけの魂を所有しているかわからない以上、能力は未知数というわけですね」


「それで、やつは能力を使う際“手”に魂を宿しているように見えました…だから、なんとか力を振り絞ってやつの片腕を切り落としてやりました」


「ほぅ…流石リクくんです。それが合っているならデスは能力を2つ魂が使えていたはずが今は1つしか使えないと…」


「恐らくですが…」


「いや、リクくんがそう感じたなら正解でしょう。それにもし違ったとしても片腕を失った事による戦闘力低下はあるはずです」


「それぐらいか…あっ後あいつは子供の魂しか興味がないと言っていました、だから兄貴の魂は奪わず消したと…」


「…そうですか、すみません思い出したくない事を思い出させてしまったかもしれませんね」


「いえ、大丈夫です」


安堂リクは少し微笑んで見せる。


「…では私達は支部長にこの情報を報告に行きます。ありがとうございました」


「リク、また来るね」


「あぁ」


2人は病室を後にする。

安堂リクは天井を見つめ、今の話を整理する。しかし、考えれば考えるほど悔しさが溢れ、拳を握り締める。


「クソォッ!!!」


拳をベッドに叩きつける。


「ぐっ!?いってぇぇえ!!!!」


病室に虚しく声が響く。


「ぜってぇ負けねえ…!」



ファントムブレイヴを読んでいただきありがとうございます!

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ではまた次回でお会いしましょう〜

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