第四章 第21話「魔導士vs魔導士」
「おぬしは何者じゃ…!」
神島本部長が問う。
「あんたがサブサイドの本部長か…満身創痍だな、俺はグラソン。こいつの…ソレイユの“元”仲間だ」
「反逆者というわけか」
その後ろから1人の女が駆け下りてくる。
「本部長ーー!!」
「おぬしは第3の」
「光丘ハヅキです!」
ー数分前
「反逆者!?」
ハヅキは驚きの声を上げる。それもそうだ少し前まで魔導士は敵だと思っていたのだから。
「別に驚くことじゃねぇ、俺だって人間だ奴のやり方に異論を唱えてなにが悪い」
「じゃあなんでもっと早く…」
「バカ言え!さすがに5人も相手取るのは無謀すぎるだろうが、だから俺は奴の作戦に賛同するフリをしていた。俺はいろんな世界を見てきた、別の世界から来た魔導士に連れられ俺も世界を回った。綺麗な世界もあれば崩壊した世界も見た…他の奴らが魔力のためにと賛同するのもわかる、だが崩壊はダメだ、この綺麗な世界が壊れる…俺はそれが許せなかった…!」
第一印象とは裏腹にとても心優しい人なのだとハヅキは疑った自分を恥じた。
「私は何をすればいい?」
「お前は何もするな」
「は?」
思っても見なかった言葉に思わず声が漏れる。
「俺がここで待っていた理由は他の魔導士にここにくるやつがやられないようにだ、お前は付いてくるだけでいいソレイユは俺が倒す…いや殺す」
「なにそれ、私だって…」
「…時間がねぇ行くぞ」
そう言うと氷でボードとそれとを繋げたソリを作りあげた。
「ソリに乗りな速攻で行くぞ」
私はムスッとしながら氷のソリに乗る。
「きゃっ!冷たぁ」
「当たり前だ、掴まってろ落ちるなよ」
言いながらグラソンはボードに乗り地面を蹴った。
「きゃぁぁぁぁぁあああ〜!!」
そのもの凄いスピードにただ私は絶叫するしかなかった…
ーそして現在
「本部長、今は任せましょう一度応急手当てを」
「…ぬぅう」
ハヅキは本部長と共に階段を降りて行く。
それと同時にソレイユを覆っていた氷が溶け始める。
「…グラソン、何をしている」
「聞こえてたろうが、反逆だ」
「この僕にか?面白い冗談だ」
ソレイユがグラソンに向かって火柱を走らせる、グラソンがそれを凍らせる。
「てめぇとの1対1の勝負なら負ける気がしねぇぜ」
「そのセリフは勝ってから言うんだな」
ソレイユが地面に手を当てるとそこからマグマが滾り勢いよく階段を上っていく。
「氷雪の槍!」
グラソンが氷の槍を作り出し放つ、槍はマグマをも裂きソレイユへ到達しようとする、が
「紅薔薇の花束」
ソレイユの前に炎の薔薇の花束が咲き槍を止める。
「霜の世界」
間髪入れずグラソンは次の攻撃にかかる、階段を床も天井も全て凍らせた。
「氷雪の爪」
グラソンは両手に巨大な三本爪を作り氷の上を滑る。目にも留まらぬ速さでソレイユの背後を取る。
だが爪が触れる瞬間、火花が散ったかと思うとグラソンの氷の爪が爆発した。
「チッ」
「カサブランカッ」
グラソンの周りに炎の花が無数に咲く。そして、ジリジリと音を立てながら次々と爆発していく。
それでもグラソンは爆炎を掻い潜りソレイユの目の前へ踏み込み攻撃を放った。
「オラァ!!!」
「くっ!!」
ソレイユの体に三本氷の爪痕が刻まれる。
ソレイユは一瞬後ずさるがメガネをクイッと直し、グラソンを睨みつけ小さな魔法陣をいくつも展開した。
「散れ…!」
グラソンは危機を察知し手を地面に叩きつけ分厚い氷の壁を作り出した。
「何っ!?」
しかし、魔法陣から放たれたいくつもの炎のビームはいともたやすく氷の壁を突き破った。
グラソンはかわしきれず肩、脇腹、足にダメージ負う。
「クソッ!」
「…グラソンお前の負けだ」
「何言ってやがる、てめぇもダメージ負ってんだろうが」
だが、次の瞬間グラソンはソレイユの背後から階段を降りようとする影に気付き察する。
「くっ!デス…!!!」
「何をしているのデスか、グラソン」
現れたのは魂の魔導士デスだった。
ソレイユがデスを見て気づく。
「デス、その腕は…」
「…っ油断したところをクソガキにやられました申し訳ない…デス」
「まぁいい、そう簡単に行くものとも思ってない…今のこの状況のようにな」
グラソンは2人を睨む。
「グラソン…今降伏し僕に忠誠を誓うなら殺さずにいてやる、でなければ魂ごとお前を消す」
「断る…!!」
「そうか…デス、エンチャントを」
デスは相馬アヤカの魂の付与士の力を使いソレイユにバフをかけていく。
「抵抗もできぬように一撃で終わらせてやる」
「ぐっ……凍雪の氷柱!!!」
床壁天井から尖った氷柱が次々と突き出し2人に迫る…が
「花焔滅尽波!」
ソレイユの腕から放たれた地獄のような業火は、氷柱を全て焼き消しグラソンを飲み込んだ。
◇◇◇
ー聖地前平原高台ー
「なんで…どうして…」
セリカは1人震えていた…
「予言じゃ、みんな勝って…予言が間違って…た…??」
その背後に突如現れる人影…
「セリカ…」
「っ!セレナおねぇちゃん…」
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ではまた次回でお会いしましょう〜