第四章 第19話「反逆の兆し」
僕はすでに魔導士と対峙していた。探す間も無く向こうから近づいてきたのだ。
「……」
「あら〜♡あなたがサブサイドの隊員さんね?」
「……」
「ん〜?なんで黙っているのかしら?」
そいつはふわふわと浮いていてなんともきわどい服…いや服と言えるのかすら怪しいものを体に纏い、黒い翼が生えたサキュバスのような金髪の女だった。
「その、恥ずかしい格好はどうにかならないんですか」
「へ〜この格好が気になるんだぁかわいい子ね♡」
そういいながら胸を寄せる…デカイ……
ハッとなり僕は首をぶんぶんと横に振る。
「あなたを倒します…!」
「ふ〜ん、できるかしらね」
僕は針を周囲に出現させる。そして、それにじわじわと帯電させた。
「さて何を見せてくれるのかしら〜?」
「散!!」
針を一瞬で周囲の地面にばら撒く、そして僕は金剛杵をひとつ作る。
「予告する…これをあなたに叩き込む…!」
「うふふ♡優しいのね、教えてくれるなんて…でも…できるかしらね」
僕はその瞬間、電撃となり彼女の背後の針へ飛ぶ。簡単に背後を取った、そして金剛杵を叩き込む…だが…
「っ!何!?」
金剛杵は何も捉えることはなく空を切った。
「どこ見てるの〜?」
彼女は少し離れたところの空中で肘をつき寝っ転がっていた。
「ふふふっ♡かわいい〜」
「くっ…!」
「ほらほら〜どうしたの〜?」
彼女はそのぶらさがった双丘を揺らす。
「ゆっ揺らすな!!」
「照れてる〜かわいい〜♡…でも残念だわ〜これくらいの強さだなんて」
「なんだと?」
「でも、あなたの能力使い道はありそうだから私の“操り人形”にしてあ・げ・る♡」
僕はゾワッと寒気を感じる、一刻も早く距離を取らなければと後方の針に飛ぼうとした…が…
「えっ!?」
体が全く動かなかった…動かせるのは目と口だけ…
「ダメよ〜逃げたりなんかしたら、まぁもうあなたは術に半分かかってるようなものだから手遅れだけどっ」
背後から彼女がゆっくりと近づいて僕に触れる。
「さ…触るなっ」
「ふふ…」
僕の体を彼女の指がなぞっていく…背中に柔らかいものが当たる。
「くっ…」
「さぁて、どうしてあげようかしら……あら?」
彼女の指が体のある場所で止まる。
「……これって」
「……」
「封印の跡…」
「え?」
彼女は僕の背中に手を当てた、その瞬間僕の体に少しの電流が走った。
「やっぱり、あなた何か封印が施されてるわね…それも強力な、私であっても解けない封印が…」
「何言ってるんだ、封印?そんなの覚えがないよ」
彼女は少し考えた後指をパチンと鳴らす。それと同時に僕の体は自由になった。
「私の僕にするのは止めね〜私、自分以外の誰かの力がかかった状態で僕にしたくないの。完璧に骨の髄まで私のモノじゃないと」
「僕を自由にしてよかったのか」
「あら、何もできなかった人が何を言ってるのかしら?」
その言う通りだった…
彼女は僕に背を向ける。
「エクレール…それが私の名よ…その封印を解いてまた私に僕にされにくることね。まっそれまでこの世界が残ってるかはわからないけど♡」
エクレールはちゅっと投げキッスをして消えた。
「封印…」
僕は僕の中にある得体の知れないものに少しの恐怖を覚えていた…
◇◇◇
「待ってたぜ…」
私は大きな岩の上に座る魔導士と出会った。
「そう…私も探してたの」
私は少し震える手をぐっと握りその男を見上げる。
その男はそこから飛び降り私の前に着地した。
「女か…まぁいい、俺と共に来い」
「…はぁ!?」
その突然の告白のような言葉に私は驚いた。
「ふっふざけないで!」
私は光弾を数発飛ばす、が奴に到達する前に光弾が止まる。
「っ!凍った…!」
そう、触れられもしていない光弾が空中で凍った。
「おいおい焦るんじゃねぇぜ、人の話はちゃんと聞くもんだぜ女」
そいつはゆっくりこちらへ歩いてくるそして、月明かりで照らされその姿があらわになった。白い髪に青い眼、それでいて肌は褐色体には鎧を纏っていた。
「俺の名はグラソン、お前は」
「…ハヅキ、光丘ハヅキ」
「そうか、では光丘もう一度言う、俺と共に来い」
「嫌よ!あなた魔導士でしょ?敵に着いて行くなんて出来るわけないじゃない!」
「確かになぁ俺は魔導士だ、だが敵じゃねぇ」
私は迷っていた、今攻撃を始めるべきか否か…敵のはずなのに敵じゃないと言葉に惑わされていた…
「残念だけど信じられるわけないじゃない!何かそれ相応のものがないと」
「そうか…それもそうだ人の信用を得るというのはとても難しく大変だ。わかった、今からお前は俺に攻撃をしろ、それを俺はすべて防御なしで受けてやるそれで誠意を見せよう、どうだ?」
「わかった」
そんな訳ない、絶対に何か仕掛けてくる、私はそう思った。
「来い」
私は無数の光弾を出現させグラソンへ放った。
いったいいくつの弾を放っただろうか、立ち込める土煙の中グラソンは立っていた、ボロボロの状態で…
「…っ!」
「終わったか?」
「ほんとに全部受けたの…?」
「当たり前だ俺は嘘はつかねぇ」
「なんなの…あなた…」
グラソンはふぅ〜と体の汚れを払いながら私のほうへ歩いてきた。
「俺の名は氷の魔導士グラソン、炎の悪魔ソレイユを倒すべく立ち上がった反逆者だ」
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ではまた次回でお会いしましょう〜