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ファントムブレイヴ 〜影と光の世界渡航者〜  作者: 月永ヒロト
第四章「王都反逆」
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第四章 第18話「敗走」


「見つけた!」


あたしは川のほとりに人影をひとつみつける。そいつは立ち止まるとゆっくりこちらを振り向いた。


「あら、可愛い女の子」


「リヴァイア!戦闘態勢!」


その女は自分の背丈ほどの杖を持ち、黒いローブに黒いつばの広いとんがり帽子、そしてそこから流れる赤い髪というまさに魔女と言うに相応しい格好だった。

女はあたしを見てふふふっと笑う。


「…なに?」


「いえ、ごめんなさい。あまりに唐突だったから…あなたお名前は?」


「…麗未うるみアオイ」


「いい名前ね、私の名前は“イデアル”よろしくね」


あたしは身構える、だがイデアルはキョトンとした顔でこちらを見る。


「あなたは…いや、アオイさんはなぜ戦おうとしているのかしら?」


「はぁ?あんたらがエデンを奪おうとしてるからでしょ!」


「だって、私達には魔力が必要だもの。私達人間が動植物を食べるのと同じことよ?食物連鎖と同じ、ただ私達魔導士がその頂点にいるだけ、世界の摂理よ?」


「でも、その食べられる動植物達は抗うわなんとしても負けないように…!」


「ん〜それもそうねぇ、じゃああなたも一緒に来ればいいじゃない!食べずにペットにしてる人もいるわ」


「あんまり舐めないで…!!リヴァイア!」


リヴァイアがあたしの周りで渦を巻きそして鎧と化した。水の三叉の槍を握りしめイデアルを睨む。


「青龍の鎧!」


「あらあら、私は戦うつもりは…なかったんだけどな」


イデアルは杖をヒョイと振る。するとあたしの頭上と足元に魔法陣が現れその間を雷が走る。


「えっ…ああああぁ!!!」


痺れてふらつく。さらにまたイデアルは杖を振る、あたしを囲うように文字が並んだ。


「まずっ!」


「えいっ」


「がはぁあ!!」


激しい炎、だがあたしは膝をつく寸前で踏ん張り槍で炎を払いのけ地を蹴った。


「はぁぁあああ!!」


間合いを詰め思い切り槍を突く。しかし杖の前に作られたバリアのようなものに阻まれる。


「残念ね」


その瞬間強い衝撃とともにあたしは弾かれ吹き飛ばされた


「一瞬ね、自分から挑んできた割にはこんなものなのかしら」


「そんなわけないでしょ…!!」


あたしはすぐさま立ち上がり槍を旋棍トンファーに変える。


「リヴァイア、スピード勝負でいくよ!」


あたし達は駆け出す。イデアルの目の前にあたしに向かって魔法陣が展開された、そこからいくつもの稲妻が走る。だがそれを全てかわし距離を詰める。


「あら、思ったより速いのね。じゃあこれはどうかしら」


イデアルは杖を地面にコツンと当てた。

そして、あたしがイデアルまで3mと迫った時あたしは地面に仕掛けられたそれを踏んでしまった。


「きゃっ!!」


突如地面が爆発する、あたしは上空へ吹き飛び地面に叩きつけられた。


「こ…これは」


「地雷よ」


またイデアルは追撃を仕掛けようとする。


「なら、これはどう!!」


あたしはふらりと立ち上がり巨大な水の球体を作り出す。


「地面ごとえぐり飛ばしてやるわ!!波動・激龍旋げきりゅうせん!!」


水の球体に向かって旋棍トンファーを振るう、すると球体から水が凄まじい勢いで渦を巻き地面をも巻き込みながら放たれる。


「へぇなかなかやるじゃない」


と言いながらイデアルは杖一本、いや防御魔法ひとつで防ぎきる。だがそれは囮だった、イデアルの背後に回り旋棍トンファーを撃ち込んだ。


「っ!!」


防御はされたもののイデアルを川のすぐ近くまで押し飛ばしていた。


「おっとっと川に落ちるところだったわ」


けど全然攻撃が効いてない…これが魔導士…

グッと旋棍トンファーを握りしめイデアルとの距離を詰める。


「もう…お遊びは終わりにしましょうね」


イデアルは手をこちらにかざす、そして魔法陣を展開した。そこから放たれるいくつもの火球。旋棍と身のこなしで全てかわしながらイデアルに近づき射程圏内に入った。だが…


「!!」


背筋に悪寒が走る、これまでのイデアルからは想像もできないような殺気…“死ぬ”…本能的にそう思った…その瞬間体の力がフッと抜ける…


「「え?」」


イデアルとあたしは同時に驚きの声を漏らす。あたしの体に纏っていた鎧がなくなり目の前にリヴァイアが現れた…

リヴァイアはそのままイデアルに巻きつきあたしの視界から消えていく…あたしの眼を見て何かを訴えるように…


「リヴァイアッッ!!!!」


「何てこと!この蛇!!」


リヴァイアとイデアルは揉み合いになりながら川へ落下する。ドポンッと2人は水の中に消える。あたしは膝から崩れ落ちる…岸から川の水面までは約3m、流れは速いけど追いかけられる問題のない範囲、だけど…


「今あたしがいって何ができるの…?それにあの眼…」


その時だった少し下流で爆発が起きる…


「リヴァイア!!!!」


でも、あたしは感じていた、リヴァイアが“逃げろ”とあたしに訴えかけてきたことを…

ギリッッと歯をくいしばる…


「今の…あたしには何も…できない…リヴァイアの…行動を無駄に…はできない…リヴァイアは…死んでない…きっと…


あたしは自分に言い聞かせながらふらふらと立ち上がる、逃げちゃいけないのに今は逃げることしかできない…どうしていいか分からずリヴァイアがいない不安も全部が訳分からなくなって、あたしはがむしゃらに走っていた。


「ああああああああああああああああ!!」


完璧なる敗走、敵にも味方にも背を向けて走る…ただ最愛の相棒の行動と気持ちだけを糧に…



ファントムブレイヴを読んでいただきありがとうございます!

興味を持っていただけましたらブックマーク、評価等していただけると励みになります!

ではまた次回でお会いしましょう〜

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