第四章 第16話「焔剣は死を切り裂いて」
ー大教会ー
ポタッポタッと血が滴り教会の床を赤く染めていた。
「あっけない、あまりにあっけないデスね」
デスは教会の壁に飾られた大きな十字架にいくつもの剣で磔にされた安堂リクを見て言う。
「…くっ…そ……」
ー数分前
火の剣と魔力の剣が交わる。
「女に剣で負けるかよっ!!」
「………」
デスは無言でリクの剣を受け流していく。そして、一瞬の隙を突き魔力の衝撃波をぶつける。
「ゔっ!?」
怯んだところに迷いなく振るわれるデスの剣。リクは受け止めたが斬撃の衝撃がリクを斬る。さらに一撃二撃と攻撃をくらうリク。
次に剣が交わった時にはリクの服はズタズタだった。
「ハァ…ハァ…」
「ソウルコンバージョン“武具造形”&“付与師”」
そう言った途端デス両手が光りそして周りに剣がいくつも作られる。そして、その剣には強化の付与がされていく。
「!!」
「終わりデス」
その剣達はリクに切っ先を向けまっすぐ飛んでいく。
リクは1本、2本と剣を弾くが力が及ばなかった…腕、脚、肩と次々に突き刺さる。そしてその剣達はリクを十字架へ磔にする。
そして現在…
「何かあるのかと思ったらその程度…何のためにここに来たのか理解しかねます」
「…な…んの…た…めだぁ?…き…まって…んだ…ろ…」
「まともに喋れていませんね、そのままそこで果てなさい」
デスはくるりと背を向け教会を出ようとする。
「…あ…にき…」
リクは力を振り絞り、一本の剣を右手に作り出し持つ。
そして、剣の刺さった右腕を壁から引き抜く。
「…ぬぅぅぅっうっ…」
デスは気付かない、教会の扉を開けた。
その瞬間、リクはその剣を全力で投げた…その剣はまっすぐにデスへ飛んでいく…デスが違和感に気付き振り返ろうとする、だが遅かった…
ズバンッ
飛び散る血、燃える剣、そしてデスの眼に映ったのは空中を舞う自分の腕…
リクの投げた剣は見事デスの右腕を切り落とした。腕が床に転がると同時に断末魔を上げるデス。
「ああああああああああああああああぁぁあ!?!?私のぉ腕がぁぁあ!!?」
リクはニヤリと笑う。
「貴様ぁぁぁあああ!!」
デスはリクの剣を拾い上げ全力で投げ返した…
「…兄貴…やっぱ…タバコは…最後の最後まで…マズイや……」
ドンッ
デスの投げた剣はリクの頭を貫通した…
リクの意識は完全に消えた…
「ハァ…ハァ…くっクソガァ!」
デスは切り落とされた腕を見る、それはすでに燃え尽きようとしていた。
デスはその腕を踏みつける、何度も何度も、まるで自分を戒めるかのように。
「油断…デスって…この私があんな雑魚にっ!あのガキ、心臓をピンポイントで狙えないからと確実に腕を狙ってきた…あの短い間でソウルコンバージョンを使うために手が必要であることを見抜いたデスね…」
デスはふらふらと教会を出る。
「いいでしょう…これは私の負けデス。片腕になったことで私の戦闘力が落ちたと思わないでいただきたいデスね…殺してしまったから仕返しができないのは悔しいデスがね」
そうしてデスは闇に消えていった。
◇◇◇
俺はひとつの風に揺れる影を見つけ、止まる。
「誰だ」
「お前がぁ影の剣士だなぁ?」
そいつは男だった、短髪にガタイのいい体に上はやたらと襟の立ったシャツをボタンを止めずに着て、下は黒いズボンを履いていた。
「変な服装だな」
「変?変とは何だぁ?変とは誰が決めたぁ?お前の変の基準は何だぁ?」
「なんだこいつ…」
「みなそう言う“なんだその格好は”と、だが何故お前たちの基準で変だと言われなくてはならない?勝手に基準を決めこの格好が変だと決めつけているというのは変ではないのかぁ?」
「わけわからんことをベラベラ喋ってんじゃねぇ、何でもいいお前魔導士だな?問答無用で斬らせてもらう」
「斬る?お前がわっちをかい?」
その時、奴の腰のあたりで何かがキラリと光ったように見えた。そして奴はゆらりと動く。
「っ!!?」
俺は瞬時に剣を造り出した。
キィインと剣と剣がぶつかる音が響く、奴は背後にいた。
「さすがにこれは視えるかぁ、まぁでなければ話にならんがなぁ」
暗くてよく見えてなかったがこいつ剣を…!
「ここのところ剣を振るえていなかったからなぁ肩慣らしだ…」
またゆらりと動く。3発4発と連撃を防抱いだ。
「肩慣らしだと?俺はそんなに遊んでる暇はねぇんだ」
俺は次の一撃を力強く弾き返すと失った気憶を発動させる。
「影武装」
奴は何も言わずただ風になびくように揺れていた。そして奴は音もなく消える。俺は剣を引き抜いた…
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ではまた次回でお会いしましょう〜