思わぬ出来事
(今日は、私のおごりよ。美味しかった?)
(え? そんな・・こんなに食べちゃったのに・・)
(エミリーは気前がいいから。笑)
お店を出ると、もう夜で私たちも学生寮に戻らなければ・・と思ってたが、
(エリカも愛も、ちょっと私の家に寄らない? 話があるの。まだ大丈夫でしょ? すぐ近くだから。)
(うん・・・でも・・・)
(さ、行こ。)
エミリーも一緒に来ることになり、シャロンのお家に行くことになった。でも、どんな話なのか、今日、初めて会ったというのに、私も不思議な気持ちになる。
シャロンの自宅は、道場からも近くにあるアパートメントに住んでいる。ブラットの自宅もそうだが、アメリカのアパートメントは日本のアパートみたいに6畳一間とかみたいな作りではなく、5LDKとかマンションみたいな大きな部屋の作りになっている。外見こそ古びた建物だが、中はリノベーション(改修工事)も充実しており、私から見る限り豪華な作りだ。 シャロンの自宅も同じだった。
(まぁ、いらっしゃい。さ、どうぞ。)
シャロンのお母さんが出迎えてくれた。
(まぁ、日本の女の子かしら? シャロンが友達を連れてくるなんて本当に珍しいわ。よっぽど嬉しかったのかしら?笑 )
(初めまして。 愛です。)
(私はエリカです。)
(古い建物だけど、中は素敵でしょ? 笑。ゆっくりしていきなさい。今、紅茶でも入れてあげるから。)
(私の部屋はこっちよ。さ、どうぞ。)
シャロンはエミリーにつかまりながら部屋へと連れてくれた。
目が不自由なシャロンだが、エミリーが目の役目をしてくれているようで一緒にいると安心できるみたいだ。
(あの・・話って、どんな話?)
(うん、ま、座って。今、ママが紅茶、用意してるから。)
(エミリーはシャロンとはいつも一緒なの?)
(そうだね。稽古の時、以外でも一緒のときが多いかな。気が合うのよ。たぶん。笑 )
障がい者とはいえ、寄り添ってくれる友達がいるといないとでは違うかもしれない。
(さぁ、どうぞ。 シャロンは紅茶が好きだから入れ方もちょっと大変なの。)
香りが良くて美味しそうな紅茶をお母さんが入れてくれた。
(黒人で目が見えないとなると、このアメリカでも敬遠する人がいるの。でもこうして日本の子やアメリカの子がシャロンに寄り添ってくれると私も嬉しいわ。まだまだ差別化がこのアメリカでも残ってるから。)
お母さんの言う通り、まだまだ障がい者への差別化は残っているのだ。これはアメリカに限らず日本でもそうだろう。車イスの障がい者は入店拒否など、日本のお店などでもある。
(シャロンのママが入れる紅茶、美味しいわよ。それにこのクッキー、手作りなの。)
エミリーも両手がない不自由さをメンタルの部分で克服しているのだろう。だけど、ときには辛くなることもあるのではないか? そう思うとエリカと私のような健常者はシャロンやエミリーのような障がい者にどう接したらいいのだろうか・・・ そう思うと心が締め付けられる。
(愛? 話っていうのはね・・留学生活が終わるじゃない? でも別の大学で新たに留学制度を利用して入学できるのよ。)
(へ? また留学するの?)
(ルミエラ大学の留学生活は今月で終わりでしょ?でもね、別の大学で新たに留学するのよ。)
(でも、そんなこと出来ないよ。だって、日本の大学の職員の人とも最終の手続きをしたもの。それに一年間という期間も決まってるからそれは無理だよ。)
(パパにお願いすれば入学できる大学があるの。ただ、試験はあるけどね。でも愛にはぜひ、その大学に留学して欲しいの。日本に帰ったらもう出来ない。)
どんな大学かは知らないが、でも仮にまた留学したとして日本には帰れない。私にも高齢の祖母がいるしそれに秋田国際大学には、ティファニーとセギョンも帰国して戻ってくる。さらにまた一年間、留学・・・アメリカに住み続けることは出来ない。
(シャロンの申し出はとても嬉しいし、私ももう少し英語も勉強したい。でもね、日本には80を超えた祖母がいるの。もう高齢だし何かあったときにはすぐに行けるようにはしないとね・・)
(その気持ち、よく分かる。でも愛、やってみない? 日本に帰ったらもう本当にできない。なんとか私からも職員の人たちに説得してみるから。)
そこまでする、シャロンのいう大学ってどんな大学なの?
エリカが
(どんな大学なの?ルミエラ大学の近くにある?)
(オックスフォード大学よ。英国の。)
(え? 今、なんて? オックスフォード大学????)
(エリカ、オックスフォード大学??って? 私、わかんない。)
(イギリスじゃ、超有名な、名門校よ。 愛、ちょっとすごい。)
シャロンの話は続いた・・・




