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Give and Take ~for girls 留学編  作者: 月岡 愛
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祝 成人式 2

幸いにも、すぐに受け入れ先の病院があった。 病院に到着し、救命救急センターの人たちも私たちを待っていてくれていた。 救急車とタクシーから降りてきた私たちを見て驚いたようで、


(まぁ、成人式? みんな晴れ着姿で・・・・式は大丈夫?)


(はぁ・・・でも来ちゃったんです・・・)


(とにかく、すぐにやるから。 じゃ、行くよ! 1.2.3!! バイタルは?)


意識がないお祖母ちゃんを救命医の人たちが体を一斉に抱えてストレッチャーに移し替えた。慌ただしい雰囲気の中、集中治療室へと運ばれた。私たち5人もとりあえず待機。


(ごめんなさい・・お祖母ちゃんがこんなことになって。私のせいで式に出られなくなった・・・)


泣きながら私たちに謝るお孫さんだが、セギョンが、


(今は、泣いていてもしょうがない。まずはお祖母ちゃんのことを考えないと。無事を祈るしかない。)


(でも・・・私のせいで・・・みんなの晴れ着が台無しに・・・)


(そんなことない!とにかくお祖母ちゃんの回復が先よ。)


ティファニーもエリカも、泣きじゃくるお孫さんを大丈夫よと抱えてくれている。今は、成人式よりお祖母ちゃんの無事を祈るしかない。しかし、倒れたお祖母ちゃんを見てその原因を判断したティファニーには驚いた。


(でも、ティファニー、ずいぶんと医学に詳しいね。)


(メルボルンの大学じゃ、医学部を専攻してるのよ。もう、ハマったね。笑)


(医学部? ティファニーが??? へ?)


(なんだよぉー 笑  こうしてやる! 愛!!)


(きゃぁ!!!ヤメテ!ヤメテ!!)


ティファニーとの久しぶりのじゃれ合い。 少しは場の雰囲気も解れたか・・・



緊急手術はどれくらい時間がかかるのだろう・・・・ 【手術中】の赤い表示が点灯したままだ。 秋田にいたときにも【シゲルさん】のときと同じだ。 お孫さんのお祖母ちゃんも恐らく私の祖母と同世代ではないだろうか。 だからお孫さんの気持ちは私もよく分かる。 助かってもらいたい。


(私は、愛。 こちらは・・・)


ティファニー、エリカ、セギョンと紹介した。


(真凛です。本当にごめんなさい・・・・)


(大丈夫よ。絶対にお祖母ちゃん助かるから・・)



(私、両親がいないの。幼いときに離婚してお母さんと一緒だったの。だけど私が中学の時に交通事故で・・それからはお祖母ちゃんと一緒に生活してたんだ。私が20歳の成人式には絶対に晴れ着姿を見たいって言ってたのに・・・お祖母ちゃんと死んだお母さんにも見せられない・・・・)


真凛は私と境遇が似ている。私も両親がいない。それに祖母に育てられ成人式を迎えられたのもまったく同じだ。 


(真凛さん、私も真凛さんと同じよ。両親もいないし、お祖母ちゃんに育てられたの。だから無事を祈ろう。)


真凛も少しは気持が楽になったか、ニコっと笑顔をみせてくれた。



(みんな、ちょっとこっちで休もう。まだ時間がかかりそうだから、案内するわ。)


救命医のお姉さんが私たちを別室に連れていってくれた。


(ここは私たちの待機部屋なの。今は処置中だから全員いなけど、終われば戻ってくるからそれまでここにいなさいよ。 さ、そこにでも座ってさ。)


私たち5人に、コーヒーを入れてくれ、ちょとしたパンやお菓子も出してくれた。



(でも、みんなキレイね。成人式の晴れ着姿って本当にいいわよね。 お祖母ちゃん絶対に助かるから。じゃ、また後でね。)


考えていてもどうしようもない。少し、休むことにした。時計を見るともう成人式は始まっている。このことを祖母に私はどう伝えたらいいか・・・晴れの成人式を終え、喜びの姿で家に戻ってくる私たちの姿を待っているに違いない。それだけではない。私たちのために朝早くから着付け、髪結い、メイクなどしてくれた近所の人たち、それに写真を収めてくれたおじさん、もうどう説明していいか・・・、真凛を責めるわけにはいかない。 そもそも私たちが勝手に付き添ってしまったのも事実だ。


晴れ着姿で、救命救急医の部屋でコーヒーを飲みお菓子を食べている私たちのこの姿はいったい何なんだ・・・



朝、早いせいもあり、ウトウトとしてきた。 案の定、ティファニーとエリカはすでに夢の中。真凛も泣き疲れてしまったのかグッスリとしている。 セギョンも、


(月岡さん、少し、寝たほうがいいかもしれないよ。私もちょっと休もう。 なんだか、【シゲルさん】のときを思い出すね。)



(もうあれから一年くらい経った? 絵美里さんたちもどうしてるかな… 片瀬さんたちにも会いたいね。ん?あれ?)


セギョンも眠りについていた。  こうしてみんなの晴れ着姿を見ると本当に華やかだ。髪飾りをしているから横にはなれないが、目を閉じている表情を見てるとお雛様のように見える。 



(みんな、起きて。)



救命医の先生が入ってきた。



(手術は無事、終わりました。 お祖母ちゃんは大丈夫です。)



やった!! 私たち5人は飛び起きて抱き合った。 真凛もクシャクシャになり泣いている。


(お祖母ちゃんは、一過性脳虚血発作という症状を起こして幸いにも脳梗塞を防ぐことが出来たから良かったね。ちょっといろいろなことが重なって無理が来ちゃったんだろう。初期対応が早くて良かったから、ま、あとは安静にしてれば回復に向うから。 でも晴れ着姿の女の子が5人もこの部屋にいるとパッと明るくなるね。 笑)


さすが、医学部、ティファニー。今日は貴女に軍配だ。 真凛も術後のお祖母ちゃんを見守っている。数日もすれば自宅にも戻れるようだ。 私たちの役目もここまで。あとはこのことをどう説明するか・・・だ。


と、そのとき、


(ちょっと新成人の5人、私と一緒に行こう。)


行こうって・・どこへ? この病院の偉い感じの人に声をかけられた。


(明日にでもまたいらっしゃい。私も明日はいるから。)


さきほどの救命医のお姉さんにも言われ、私たちは医師の車に乗り込んだ。



(これから区役所に行くからね。あ、私はこの救命救急医療センターの婦長なの。貴方たちにどうしても会いたいって人が待ってるから・・・)


会いたいって・・誰だろう?  頭の中が、(・・? になりながら区役所に到着した。職員のような人が出迎えてくれて、エレベーターに乗った。


エレベーターを降りて、少し歩くとその部屋はあった。 どうやら区長のお部屋のようである。ここで何があるのだろう?


扉を開けて中に入ると、大きな机の前に椅子が5客並べてある。



(よく来たね。今日は、大変だったろう? さ、そこに座りなさい。)



区長が私たちの目の前にいる。それに秘書のような人が賞状みたいなものを手にしている。



(先にこちらから始めるから。 感謝状! 貴方たちは・・・)



真凛のお祖母ちゃんを病院まで一緒に付き添った人命救助に対する区長からの感謝状だった。私たち5人、一枚づつ渡された。 とても重みのある感謝状だ。 


(一生に一度の成人式という大きなイベントだったにもかかわらず、それを後にし人命を優先にした貴女たちには本当に頭が上がりません。 だけどこのキレイな晴れ着を決して無駄にしたくはないと思いこの場を設けました。ここからが貴女たちの本番です。)


区長から感謝状を手渡され、もしかしたら・・という奇跡が起きた。



(新成人のみなさん・・・・おめでとうございます。 貴女たちは今日、この時間、この場所で20歳という立派な大人の年齢になりました・・・)



私たち5人の成人式だ。それも区長が直接、晴れ着姿の私たちに祝辞を述べられている。 無事に私たちは成人式を迎えることが出来たんだ。それも区長の部屋で直接に、だ。 こんなことは2度ないどころか普通にもありえない。 最終ラウンドは終わってなかったんだ。 


秋田国際大学でも発表会のとき、私もセギョンもティファニーも入賞せず落胆していた。がそのとき特別賞を頂き、入賞したグループより大きな拍手に囲まれた。 そのときのことが鮮明に蘇ってくる。


思うが、何か危機的な状況に陥ったとき必ず手を差し伸べてくれる【何か】が起こる。これも【天使】というものが下りてきてくれるのではないか? そんな気がしてならない。



記念品や花束も渡されて区長や職員を囲んで記念撮影。 この模様は明日の朝刊と区報に載るらしい。



(ありがとうございました。) 



区長と職員の人たちにお礼を言い、区役所を後にした。




婦長さんの車で祖母の家まで送ってもらい、ようやく【成人の日】を終えようとしている。


(また、来なさいよ。今度は救急搬送じゃなくてね。笑)




(あの・・私は・・・)


真凛がどうしたらいいのかという顔で、



(真凛さんも家で着替えなよ。何かあるから。)



女5人。晴れ着姿で帰宅し、事の詳細を祖母に伝えた。



(愛、近所の人たちもみんな知ってるよ。 病院に運ばれた人は助かったんだろう?だったらそれでいいじゃないか。会場では式に参加できなかったけどでも区役所でちゃんとしてくれたんだから。それも区長の部屋でだろう? こういう式の方がみんなには合ってるよ。さ、脱いでお風呂に入ってご飯にしよう。)


(お祖母ちゃん、こちらが真凛さん。何か着替えある?)


(お祖母ちゃん、助かって良かったね。今日は、ゆっくりしていきな。真凛も今夜は泊まってさ。女の子は大勢の方が賑やかで楽しいからね。さ、脱いでお風呂に入ってサッパリしな。笑)


(ありがとうございます・・・)


(なに、泣いてるんだい・・・終わり良ければ総て良し。そうだろう?)



私たち5人は一気に晴れ着を脱いで、お風呂へと向かった。 








































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