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Give and Take ~for girls 留学編  作者: 月岡 愛
39/55

後輩

(高齢にもなりあまり話も理解できないこともあるけど、ぜひ会いたいと言ってたから行こうか。)


栞さんの自宅に戻り、お祖母ちゃんにも話を通してもらった。その方は、栞さんのご家族ともお付き合いがあり、お正月に大変恐縮だが、お伺いすることとした。


(あら?栞ちゃん、しばらくみない間にきれいになったわねぇ。さ、どうぞ。そちらがアメリカから来た方?)


(お久しぶりです。今日はありがとうございます。)


(コンニチワ。ハジメマシテ。)


(初めまして。よろしくお願いします。)


(2人はニューヨークに滞在していて、愛さんは日本から留学しているんです。)


(まぁ、すごいわね。ゆっくりしていって。お祖父ちゃん、奥の部屋にいるから。何か聞けると思うから。)


私たち3人は、奥の部屋に通されて元日本軍の生存者でもあるその方に対面した。


(お祖父ちゃん、もう末期ガンなの。90超えてるし。でも元気でしょ?)


ベットに横たわり、身体も弱っているようでかなり細く自力では起き上がることも出来ないようだ。秋田にいるときにも【シゲルさん】の末期はこのような感じだった。


(あぁ・・・いらっしゃい・・・よく来たねぇ・・・)


話す声も、か細く弱弱しいがでも元気なようで会話は出来そうだ。私はこの鹿児島、伊敷に来た理由を伝えた。エリカの祖母がこの伊敷に住んでいたこと、それにまだ健在でお兄さんが神風特別攻撃隊としてゼロ戦に乗ったこと、長崎で原爆に遭いその後、東京、横浜に住んでいたこと、詳細に伝えた。私の祖母から預かった、当時の写真も見せた。 


(あぁ・・・泰子さん・・・・)


お祖父ちゃんは涙ぐみ、驚くべきことをつぶやいた。


(え? 今、なんて言いました?)


(こんなことがあるのか・・・泰子さん・・・)



エリカも私もお祖父ちゃんのことを知り、驚いてしまった。エリカの祖母【YASUKO 泰子さん】のお兄さんが最後に託した手紙、それを受け取った後輩が今まさに目の前にいるこのお祖父ちゃんだったのだ。 


(本当の兄のようで、いつも一緒で出来の悪いわたしを本当によく面倒を見てくれたんだ。 戦争が激化したレイテ沖海戦のとき、お兄さんとも【その時】が来るのかと覚悟をしていたよ。)



≪ もうすぐ俺も鹿児島を飛び立つ。家族には何も出来なかった。それなのに俺だけ先に旅立つなんて・・・俺は本当に親不孝な子供だよ・・・・≫



(お兄さんは家族のことを本当に思いやっていたよ。特に泰子さんにはな。)



≪ もし、戦争が起きなかったら、俺はどうしていただろうな・・・学業に専念して、就職もして立派な社会人になって、結婚もしてさ・・・・子供も出来てそれを母と父、祖父、祖母、家族に見せて泰子にも喜んでもらえて・・・≫



(出撃するときに、わたしも見送りに行ったんだ。ゼロ戦が並んでいて長いテーブルに清酒と盃が置いてあるんだよ。お兄さんがこれを口にしたら本当にもう会えなくなる・・・そう思うと・・・・)


お祖父ちゃんの言葉が詰まる・・・・


(ゼロ戦の操縦席に乗る時に、手紙を渡されたんだ。泰子に渡してくれって、ね。)


(愛、これ、見せて。)


エリカが祖母から預かってきた手紙を私はお祖父ちゃんに見せた。



(お兄さん・・・・)



身体が弱っているお祖父ちゃんには涙は堪えるはずだ。本当に申し訳ない・・・



しばらく沈黙の空間が続く・・・・



(この手紙は、泰子さんに渡さないほうがいいのかもしれない・・そう思った。だけどお兄さんの最後。泰子さんならきっと理解してくれるはずだと思ったんだ。  手紙を見て、泰子さんはしゃがみ込んでずっと泣いてたな。わたしは泰子さんに何もできなかった・・そのときのことがこんな年をとった今でも鮮明に頭に焼き付いているんだ。)



(お祖母ちゃんはその後、どうしたんですか?それに家族も・・・)



(この伊敷は、アメリカ軍からの空襲が酷かったんだ。このあたりもね。泰子さんの家族は、広島、長崎に疎開したんだ。泰子さんは長崎に行ったきり、消息が分からなかった。でも、家族は終戦後、またこの伊敷に戻ってきたんだ。泰子さんを除いてね。 やがて昭和から平成になり、家族の方も一人、二人と他界して、10年ほど前には泰子さんのお姉さんが最後になったな。住んでた家は取り壊しになり、今はアパートが建っている。 しかし、泰子さんがアメリカで生きていたなんて・・・)



エリカの祖母の家族はすでに亡くなっていた。 しかし祖母が90歳超えていたら、生きていたとしてその家族は更に高齢だ。亡くなっていても不思議ではない。もし会えたとしても当時のことを話すのは無理があるだろう。この事実を知って、かえってこのほうが良かったのかもしれない。


エリカも少し気を落としたようだが、このお祖父ちゃんのその後も知りたいようだ。


(アメリカ軍が沖縄に侵攻してきたとき、わたしも召集され陸軍として送られたんだ。もう、ここで死ぬんだと覚悟をした。でもあまりにも激しい攻撃に日本軍も為す術もなく、あとは自決するか手りゅう弾持ってアメリカ軍に飛び込むかのどちらかを選べって軍曹が言うんだよ。もうこれまでだなって思ったな。 だけどアメリカ軍も攻撃をする一方で、降伏も促していたんだ。わたしたちは食べるものもなく水も飲めない状態だった。 アメリカ軍に包囲されたときにみんなで手を上げて降伏したんだ。)


(沖縄からどのようにして鹿児島に戻って来たのですか?)


(アメリカ軍の捕虜になったんだが、食糧も水も与えてくれてね。そしてまもなく終戦を迎えたんだ。その後は、鹿児島に戻り、空襲で焼け野原になった伊敷も月日の流れで少しづつ回復していったんだ。今でも思うが、こんな戦争など本当に2度と起こしてはならない。 そのためにもこれからの世代にかかってるんだよ。そのことをちゃんと理解しなきゃだめだぞ。笑)



色々と話してくれたお祖父ちゃんだが、【YASUKO 泰子さん】がアメリカで健在だったことも知り、安心したのか笑顔も見れて明るくなっていた。 一方、エリカだが、鹿児島まで来て知った事実は祖母の家族は既に他界していた。しかし、原爆や空襲の被害にも遭わず家族は生存していたのだ。そしてこの伊敷に戻り昭和、平成と生きていたのだ。会えなかったことは残念だが、祖母のお兄さんの後輩とも会えてお兄さんのことも聞けて、エリカには残念な結果に終わったかもしれないが、これで良かったのではないか。 


(たくさん、お話が聞けました。ありがとうございました。)


(お祖父ちゃんも喜んでたわね。こんな元気に話したのもしばらくぶりよ。笑。またいらっしゃい。栞ちゃんもね。)


(ありがとうございました。)




(ちょっと残念な結果になったけど、みんな高齢だからしょうがないわよね・・・)


(いいんですよ。だってお兄さんの話も聞けたし。それに本当のことが分かったから、これでお祖母ちゃんにも伝えることが出来るし。)


(明日、ゼロ戦が飛び立ったところ、連れてってあげる。今は更地だけど当時の滑走路とかまだ残ってるから・・・)


(え?まだ残ってるんですか?)


(うわ、どんなとこなんですか?)


(ま、今日は、ゆっくりと寝て明日ね。)



神風特別攻撃隊・・・10代の青年たちが飛び立った場所はどのような面影を残しているのだろうか。
































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