知覧へ。
(じゃ、そろそろ行こうか。)
栞さんの運転する車に乗り、知覧にある資料館に向かった。栞さんの家族総出で見送ってくれてなんだか本当に戦争にいくみたいな感じだった。
(知覧ってところ、昔は何があったんですか?)
(お祖母ちゃんの話だと、特攻隊の基地があったらしいの。結構、規模の大きい飛行場もありアメリカの標的にもなったんだろうね。)
一時間ほどで着いたところは、【知覧特攻平和会館】という施設だった。
お正月期間は休館になっており、入館は出来ないが、栞さんの親族がこの会館に勤めているということで特別に許可をいただき、施設内を見学することが出来た。
(あら、いらっしゃい・・栞ちゃんもほんとにきれいになったわね。)
(叔母さん、しばらくです。今日はありがとう。)
(いいのよ。私も家にいたくない太刀だから。旦那の顔も見なくて済むし。笑)
私もエリカもお礼を言った・・
(今日はありがとうございました。お正月なのに・・・)
(アリガト、ゴザイマス。ハジメマシテ・・)
(Is English better? 英語の方がいいかしら?)
(え?はい。)
(叔母さんも英会話、バリバリよ。笑)
館内に入ると、まず目に留まったのが、ゼロ戦本体だ。緑色の機体に日の丸が書かれている。プロペラの先端にも赤い塗装が施されているがこれも日の丸というイメージなのだろう。
(I watched Zero fighter for the first time. ... which nobody knows 初めてゼロ戦を見た。なんとも言えないよ・・・)
エリカも驚いている。
もう一つ展示されているゼロ戦を見て、私は唖然とした・・・ 攻撃を受けて墜落したものと思われ、機体の半分だけが焼け焦げた状態で展示されいた。
(どう?実物を見て。このゼロ戦を操縦していたのはまだ、15,6歳の少年よ。)
(unbelievable・・・ 信じられない・・・)
戦時中に着用していたと思われる、軍服やバッグ、双眼鏡、水筒など備品なども展示されている。
(この時代は、決められた服装をみんなしていたのね。女の人たちもモンペっていって今でいう作業着よ。こういうのを見る限り、オシャレなんかとんでもない時代よね・・・)
(やぁ、いらっしゃい。アメリカからよく来たね。)
なにやらお偉い感じのおじさんが寄ってきた。
(ここの館長。館長も今日は来てくれたの。)
(こんにちわ。よろしくお願いします。)
(今日は休館日だから、誰もいないしゆっくりと見て周りなさい。あとで私のとこに寄るといい。お菓子とコーヒー用意しておくからね。)
(館長は女の子には優しいからね。私みたいなおばさんには何もないけど。笑)
次に案内されたのは、ゼロ戦の写真とヘッドホンが置いてある部屋だ。それも地下で。
(あの、このヘッドホンはなんですか?)
(聞いてみる?)
ヘッドホンを耳にかけてくれた。 なんだか信号のような音が聞こえてくる。
(ププッ・・ププッ・・・ププププププ・・プーーーーー・・・プツッ)
(あの・・切れましたけど・・・)
(これは、モースル信号って言って、アメリカ軍の戦艦に突入するときに特攻隊基地に送る信号なの。)
【 ププッ・・(これから突入します。)ププププププ・・プーーーー(突入する瞬間) プツッ・・・(突入したとき。】
エリカもヘッドホンを耳にかけた。
腕を組み下を向いたまま聞いている。
(こんな10代の若い男の子たちが、これから死に行きますって・・・・信じられないわよね。)
ヘッドホンを外したエリカがつぶやいた。
(でも・・・)
(どうしたの?)
(お祖父ちゃんは言ってた・・・真珠湾を忘れるな・・・って。)
(だからこそ、もう2度と決してこんなことをしてはいけないってことなの。戦争をしない国、日本。でもそれも今、崩れようとしている。それを阻止するためにも、これからの貴女たちの世代にかかってるの。それだけは本当に守って欲しい。)
施設の外には【特攻平和観音堂】というものがあり毎年5月に慰霊祭も行われている。 そこに案内された。特攻隊員の銅像とその横には銀色のゼロ戦がある。その奥にお寺のような施設がある。
(ここでは毎年5月に慰霊祭があるの。戦死した隊員の家族なども参加してね・・・でも年々、その参加者も減って来てるわね。)
館内の見学も終え、ロビーにある休憩室に入った。休憩室には館長がお茶とお菓子の用意をしてくれていた。
(どうだった? 結構、見ごたえがあるだろう?なかなかこういう機会もないからいい経験になったかい?さ、お茶でも飲んで一休みだな。)
(はい。こんなにも戦争当時のものが残ってるなんて思わなかったです。)
出されたお菓子だが、ケーキのような薄いものにあんこが挟んである変わったお菓子・・・
(あの、これ、なんていうお菓子なんですか?)
(これはね、隊員が機内でも食べれるようにって、その家族の人が作ったお菓子なんだ。【タルト】って言ってね。砂糖や小麦粉などが本当に使えなく制限されてる中で、家族が想いを込めて作ったんだ。)
(じゃ、これ、売ってないものですか?)
(もちろん。笑。わたしの手作りだよ。)
(館長は、お菓子作りが得意なのよ。よく職員たちにも作ってきてくれるの。)
(でも、ほんとに美味しいですよ。これ売ったら間違いなく買いますよ。笑)
エリカも栞さんも
(ほんとに美味しいね。こういうのあまりないよね。)
女というのは甘いものには弱い。
ロビーにはピアノも置いてあり、ドイツ製のフッペル・ピアノというもので別名【特攻ピアノ】と言われ今では日本に数台しか現存していない幻のピアノだそうだ。 その横には大きな壁画もあり【知覧鎮魂の賦】という題で、< 紅蓮の炎をあげて燃える隼の機体から特攻隊員の魂魄を6人の飛天(天女) が救い出し昇天させる姿を表したもの。> を表現している。
(また、機会があったらいつでもいらっしゃい。)
(こういうお正月もいいもんだな。笑)
(ほんとに今日はありがとうございました。)
館長と栞さんの叔母さんにもお礼を伝えた。
(自宅の近所に戦争当時に軍隊に行ってた人がまだいるらしいの。お祖母ちゃんも知ってる人みたいだから、エリカのお祖母ちゃんのことも聞いてみたいのよ。まだ、伊敷には居れるんでしょ?)
(帰りの飛行機が4日なんです。だからあと3日は大丈夫です。)
(それまでに何とか調べてみようか。)
栞さんの自宅に戻り、その軍隊に行っていたという人に会うことになり私たちは衝撃な事実を知ることになる。




