鹿児島のお雑煮
鹿児島空港は物静かな感じかと思っていたけど、結構、私たちみたいに帰省する人も多くお正月という感じがしない。地方の空港だし、お正月だから静かなんだろうなと思ってはいたが意外にも賑やかだ。
(あれ?愛さんとエリカ?)
(え?はい。あの・・・)
空港には私たちを迎えに来てくれる人がいた。綾さんが鹿児島に着いたらこの人を訪ねるといいといわれていたのだ。
(綾さんから聞いてるから。とりあえず私の家に行こう。さ、乗って。)
バッグをトランクの中に入れ、車の中に乗った。
(疲れたでしょう? あ、私、栞と言います。綾さんの後輩で今、実家に帰省しているの。)
(綾さんとは同じ飛行機なんですか?)
(ううん、私は欧州に搭乗しているから綾さんとは路線が違うのよ。でもお互い、オフのときなんか一緒に出掛けたりするからね。連絡は取り合ってるし、だからこの鹿児島行きもちゃんと話は通ってるから安心して。笑)
(愛?日本語、分からないから、英語で話してくれるようにしてくれない?)
エリカの話を聞いてた、栞さんが
(あ、そっか。英語の方がいいわね。愛さんも大丈夫よね?)
(あまり、上手くないですけど、なんとか会話ぐらいは出来るようにはなりました。笑)
綾さんもそうだけど、この栞さんもほんとにきれいな英会話だ。国際線にともなるとこれくらいの会話レベルは必要なのかもしれない。
(栞さん、ずいぶんときれいな会話ですね。綾さんもそうですけど。)
(そう?笑 でも国際線になると英語だけでなくフランス語やドイツ語なども必要になってくるからね。)
(じゃ、栞さんも他の国の会話もできるんですか?)
(フフフ、ちょっとね。)
栞さんの自宅にも着いて、居間に案内された。昔の家のようでとても広い。お屋敷みたいだ。
(古い家でしょ?笑 昔の作りだからね。)
(うちもそうですよ。昭和の時代の家だし。でも昔の家のほうが私、好きですよ。)
祖母の家にどことなく似ている。昔の家は天井が高くてそれに風通しがよく夏でもそんなに暑さを感じさせず、冬も囲炉裏やコタツなどあれば暖かい。
(まぁ、いらっしゃい。遠いところから来たんだろう?ゆっくりしていきな。)
栞さんの祖母が出迎えてくれた。
(お祖母ちゃん、90歳なの。元気でしょ?)
(私のお祖母ちゃんも90歳超えてますよ。この鹿児島生まれなんです。)
エリカの祖母から手渡せれた当時住んでいた場所の住所と地図を見せた。
(この伊敷って、この辺りがそう。この辺に住んでたの?)
(どうやら、そうみたいで長崎にも住んでたんですよ。まだ、家族がいるかと思ってそれでアメリカから来たんです。お祖母ちゃんももう日本には来れないと思うので。)
広い居間で、お祖母ちゃんが温かいお茶を入れてくれ、エリカのお祖母ちゃんが書いた地図を見て
(この伊敷も、空襲が凄くてね。家なんかみんな焼けてしまったよ。この九州地方は特に酷かった。特攻隊の基地がたくさんあったからね。沖縄、鹿児島、本当に地獄絵図だよ。でもこの地図でみるとこの辺りだよ。伊敷はここだから。)
(お祖母ちゃんの名前、YASUKOっていうんです。知りませんか?)
(うーん・・分からない。隣近所でも知らない人もいるからね。役所も正月明けからだから調べようもないしね。ところでまだ朝は食べてないだろう? お雑煮、用意してあるからお餅も焼いてあげるから食べな。あ、そうだ。栞、知覧に行ってみたらどうだい?)
(私もそう思ったの。だから叔母さんに連絡しといたの。少しゆっくりしたら、知覧に連れてってあげる。)
(知覧?)
(ゼロ戦や特攻隊の物が当時のまま展示されてる施設があるの。そこに行けば何かわかるかもしれないよ。)
(でも、栞さん、お正月の元旦にそこの施設、開いているんですか?)
(親戚の叔母さんが勤めてるの。お正月は休みなんだけど、特別にってことで入館を認めてくれたのよ。だから私たちだけの貸し切りよ。笑)
もう、栞さんにもほんとに感謝の気持ちで一杯だ。
(さあ、まずは腹ごしらえだ。お餅も入ってるからね。おかわりもしなよ。)
お祖母ちゃんが私たちにお雑煮を用意してくれた。
(わー美味しい。お餅はアメリカでも食べるけど日本のお餅はアメリカと違って美味しいね。)
(このお餅は杵つき餅だからね。柔らくて美味しいだろう?鹿児島のお雑煮は薩摩雑煮っていうんだ。エビと昆布で出汁をとり、鶏肉やしいたけ、蒲鉾、里芋なんかと煮込むんだ。)
(お祖母ちゃんのお雑煮は格別よ。)
栞さんがそういうと、お雑煮の匂いを嗅ぎつけてか家族の方たちが居間に入ってきた。
(あら?お客さん?)
(アメリカから来てるの。綾さんのお友達。)
(おはようございます。朝早く、お邪魔しています。)
(まぁ、ゆっくりしていて。うち家族が多いからびっくりしないでよ。笑)
(私の両親。フフフ)
両親二人だけかと思っていたが、目が覚めた子供が入ってくるわ、栞さんの兄弟がくるわ、その兄弟の家族も入るわで居間が大混雑。 ワイワイ、ガヤガヤととても賑やかな朝食でお餅もお雑煮もすぐになくなった。
(知覧まで車で一時間くらいだから、少しゆっくりしてから行こうか。)
栞さんと兄弟家族と一緒に後片付けも手伝い、出発の準備をした。
(何かわかるといいけど・・・)
エリカもちょっと不安なようだけど、もうここまで来たんだしあとは流れに身を任せるしかない。




