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Give and Take ~for girls 留学編  作者: 月岡 愛
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古い写真の中で・・・

12月も大晦日ともなると、お正月の準備とかで辺りは忙しいのかどこの家庭でもバタバタしている。私たちも鹿児島に行くに年明けの5日頃にでも・・・と話していた。 


(昔の写真があるから見るかい?)


祖母が子供のころの写真を出してきてくれた。 セピアカラーの写真が戦時中の空気を流してくれる。


(昔は、みんなこんな格好で過ごしていたんだよ。着るものもないし生地なんかを縫い合わせてね・・・食べるものもないし、よく生きてきたもんだよ。)


写真を一枚、一枚見ているうち、エリカの手が止まった。


(?? あれ? この写真、お祖母ちゃんも持ってるよ?)


(え? 何で?)


(だって、この写真、私、お祖母ちゃんに見せてもらったことあるもん。)



祖母にエリカのことを伝えた・・・その写真には祖母と2人の女の子が映っている。


(え?同じ写真があるのかい?)


(お祖母ちゃん、この写真、いつ撮ったの?)


(この写真は・・・こっちは隣の○○さんだよ。その隣にいるのは・・・たしか・・・あ、そうだ。長崎で原爆があったろう?そのあと怪我をしていて米軍の医療施設にいたんだよ。そして東京に来て○○さんの家に疎開に来たんだ。そうだよ。 え・・と名前は・・なんて言ったかな・・)


(もしかして、その人、泰子さんって名前じゃない?)


(そう!そうそう。泰ちゃんだよ。長崎から来た・・・ 何で分かったんだい?)


(エリカのお祖母ちゃん!! いゃ~こんなことあるんだ??)


(ちょっと隣で聞いてくるから、まさかこんな巡りあわせがあるなんてね・・)



祖母はすぐに隣の家へと向かい、この写真のことを伝えた。 


(まさか、こんな偶然があるなんてね・・・これも何かの引き合わせかもしれないね。)


隣のお祖母ちゃんも驚きを隠せないでいる。


(まだ、元気にしているのかい?)



(アメリカではお祖父ちゃんと共にに元気ですよ。お祖父ちゃんも日本の食事が大好きだし。)


エリカの同時通訳・・・・


(だいぶ、年も取ったろう? 私も80過ぎてるからね。 泰ちゃんは私たちにとっても、いいお姉さんだったよ。面倒見が良くってね。)


(でも、日本でお祖父ちゃんと出会ってアメリカに来たんですけど、このKAMATAでお祖父ちゃんとも?)


(いや、靖っちゃんは、その後、横須賀に移ったんだよ。横浜にもいたんじゃないかな? 葉書も来てたりしてたんだけど、それも徐々に減ってきて連絡も取れなくなったね。 最後のほうで葉書にもアメリカの人と今、お付き合いしている・・なんて書いてあったから、結婚して横浜のほうで幸せになってるんだろうな・・と思っていたんだ。 いつかは会いたいと思ってもいたけど、でも、こんな半世紀たって、アメリカで過ごしているなんて聞いたら、本当に驚いた。笑)



(愛・・すぐにでも鹿児島に行きたい。なんとかならないかな?)


(でも、もう明日はお正月だよ。チケットもまず無理だし、それに現地に行っても年末年始でどこも休みだよ。泊まるところもないし。笑)


こんなことなら、鹿児島行のチケットと宿泊先も手配しとくべきだった・・・あ?待てよ。もしかしたら・・・ 私はすぐに名刺を取り出し連絡した。



(あら?愛ちゃん? どうかした?)


客室乗務員でもある、綾さんに連絡した。困ったときの頼みだ。 事の詳細を伝え明日の鹿児島行のチケットがなんとか手に入る方法はないか、お願した。


(分かったわ。ちょっと難しいかもしれないけど何とかやってみるから。)


(ありがとうございます!!)


ただ、チケットは取れたとして、肝心の宿泊はどうすればいいんだ・・・


(泊まるとこがなきゃ、野宿だよ。どうする?)


(ま、そんときはそんときよ。)


能天気なエリカだが、この12月、鹿児島だってかなりの冷え込みだって予想される。見ず知らずの民家に突然、泊まってもいいですか? なんてTV番組のようにはまず行かないだろうし・・・



綾さんから着信。


(愛ちゃん、何とかなったわよ。 スタンバイチケットっていう職員専用のチケットがあるからそれを使えばいいわよ。)


スタンバイチケット? 



スタンバイチケット (職員専用の格安航空券)



(ありがとうございます。でも明日ですけど大丈夫なんですか?)


(元旦の明け方に出発する席を取ったから。大晦日だと深夜も電車が動いているからこの時間に合わせて羽田に来るといいわよ。そのときにチケット渡すから。私と待ち合わせよう。)


(でも、綾さん、お休みでは・・・)


(私もこの日は、初日の出フライトのお仕事よ。だから愛ちゃんも鹿児島行の飛行機の中で初日の出がみれるわよ。笑)



ほんとにこんな事態のときによく【神の手】が下りてきてくれた。 本当にありがたい。

エリカにも無事、チケットが取れたことを伝えあとは、明日の元旦、明け方に羽田を出発するだけだ。


(綾さん・・・それと、鹿児島に行っても泊まるところが・・・・)


(大丈夫よ。そうかと思ってビジネスホテルも確保したから。これもCAならではの裏ワザよ。笑)



もう、何から何まで綾さんに世話なりっぱなしだ。 ここは綾さんの温かい支援に甘えて鹿児島までいくこととした。



早速、明日の身支度をし、今夜は早めに寝よう・・・と思った。 が・・・


日本には大晦日、午前0時になると除夜の鐘、そう、初詣というものがある。近くの神社でも甘酒が振舞われ、これが寒い夜空にとてもマッチするのだ。 エリカも日本に来たらまず、これだけはしたいと言っていた。 


神社に行きますか?エリカ?


(GO!!)





















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