救出
警察も学生寮に到着、大学の職員も私たちの部屋に来て、状況を確認した。
(相手からは連絡はまだ来ない?)
(はい、途中で切れてしまって。でもすぐにくるはずです。)
(アラビア語で話していたって聞いたけど、どんな感じだった?)
(話してる感じでは、何か、急いでいる感じでした。)
(急いでる? 慌ててるとか?)
(はい、そんな感じでした。)
ミランダが警察官に伝えている。
(誘拐犯専門の連中もすぐに来るから、通信記録を辿れば、居場所もすぐにわかるだろう・・・ブルックリンなら隣町だし、そう時間はかからないはずだ。)
と、そのとき、スカイプに着信が入った・・・
(来たわ。この子です。)
(よし、会話をしてくれ。)
警察官も一緒に画面に食い入る。
(今、警察もここにいるの。だから出来るだけ長く話して。なぜ、そこにいるの?)
(安全なところに行くからってアメリカに連れて来られたの。でも、全然違う。)
(違うって・・・どんな話だったの? どこの国から?)
(シリア。難民になり、トルコ国境のキャンプにいたのだけど、そこでアメリカ人の人にもっと安全な場所に一緒に行こうって言われて・・・)
ミランダが警察官に、そのまま伝えると、
(人身売買だろう。間違いない。誘拐もそうだが難民になってる若い子たちが、こういう組織の餌食になっているんだ。急がないと・・・)
(あなた、名前はなんていうの? 私はミランダよ。)
(ヤーナ。16歳よ。)
(家族はどうしたの?)
(内戦で死んだの。親も、妹も・・・それに、祖母も・・)
誘拐犯専門の刑事たちが到着した。
(まだ、会話は途切れてないわね? 出来るだけ長く接していて。)
女の刑事さんがミランダに伝えている。ふと、ミランダが、
(そうだ! ヤーナ、Googieのストリートビュー見れない?)
(見れると思う。そこでこのブルックリンのプロスペクト公園を出してみて。そこの映像から何かわかるかもしれないから。)
(分かったわ。今、やってみる。)
エリカも私も、この2人がアラビア語で何を話しているかまったくわからない。 ミランダ、頼りにしてるぜ。
(Google、の画像を見て、何か思い出したかしら?)
刑事さんもアラビア語が話せるようで、ミランダの横から話しかけている。すると、
(あ、この家よ。ここ。わたしがいるのはここよ。)
しかし、相手側の画面はこちらには表示できない。
刑事さんがタブレットの画像をヤーナに見せて、
(ヤーナ、ストリートビューの画像よ。どの辺りかしら?)
指をスクロールしながら、ヤーナに見せると、
(そこ!そこの家よ。)
(ここね? 分かったわ。)
(居場所が分かったわ。すぐに応援を呼んで、この家を包囲するから。無事に救出できるわ。)
警察も緊急手配になり、私たちも救出作戦にドキドキしてきた。
(応援部隊もすぐに現地に着くから大丈夫よ。あとは、犯人たちがこの間に帰ってこないことだけね。絶対に救うから。画面は切らないでそのままにしておいて。リアルタイムで無事に確保できたか分かるから。)
(刑事さん、すごい。ありがとう。)
私もエリカも言葉が出てしまった。
ヤーナは無事に保護され、特殊部隊が家に突入したとき、ヤーナだけがいて犯人たちはいなかった。室内を捜索してこれから犯人逮捕へといくのだろうが、人身売買なんてこんなにも身近で起こるとは思ってもいなかった。 アメリカに限らず、世界には多くの犯罪組織がある。海外旅行のつもりがいつの間にか麻薬の運び屋になっていたんてニュースも日本で見たことがあるし、私もこの留学中にいつ犯罪に巻き込まれるかもわからない。
(エリカ、愛、よかったね。また何かあったらいつでも。)
ミランダは私とエリカを抱きしめてくれた。
(刑事さん、ヤーナはどうなるのですか?)
(まずは、警察で保護して事情聴取よね。どんな経緯でシリアからアメリカまで来たのか・・・そこからかな。組織を壊滅するにもまずは犯人たちを検挙しなければならないし。それに難民申請しても今のアメリカの状況ならまず無理だし、だから元のトルコ国境の難民キャンプに送還となるのが強いかもね。 )
(でも、無事に保護されて良かったよ。ミランダの助けもあったし。まさか、アラビア語が話せる人がいるなんて思わなかったから。愛も私も何話してるかぜんぜんわからなかったけど。笑)
(まぁ、2人の協力も本当に助かったわ。だってスカイプを使ってなかったら、発覚してなかったんだから。笑)
(刑事さん、ありがとうございました。 )
(後日、またこちらに来て聞かなきゃいけないこともあるから。そのときには何か進展はあると思う。)
(良かったな。助かって。2人の通報がなかったら、大変なことになってたな。笑)
最初に来てくれた、警察官だ。
(無事で本当に良かったです。ありがとうございました。)
私とエリカの肩を囲い、ポンポンと叩いてくれ部屋を後にした。




