警察署で。
私たち3人も警察署に行き、聴取を受けることになった。 日本でもそうだが、このアメリカでも事件に関係する人は必ず警察に事情聴取を受けるようだ。
(残念な結果になってしまったが・・・3人には本当に申し訳ない。)
刑事さんが私たちに謝罪をした。 ネゴシエーターと言われた交渉人の人も、
(まさか、銃口を警察官に向けるとは、思ってもみなかった。彼のことだからこのまま素直に私のもとへ
来るかと思っていたんだ・・・もう、私の不注意だ。)
(でも、ジョーイは、なんで私たち3人を要求したんですか?)
(彼と電話で会話をしていたときに、貴方たちの名前が出てきて、今すぐに呼んでくれって言われたんだ。そうすれば人質を解放するってなってね・・・私の経験から言って、ジョーイは絶対に撃てないと察したよ。だからこそ、彼の要求をすぐに受けることにしたんだ。)
(愛やチーフと私に会って、ジョーイは何をしようとしていたんですか?)
(やめなさいって、説得してもらいたかったんだろう。恐らく。大学では、貴方たちをとても慕っていたようだから。彼も人間だ。窮地に追い込まれどうすることも出来ないときに、慕っている人に手を差し伸べてもらえたら、一線を越えた人間でも、ハッと我に返るもんだ。)
ジョーイの家族は、病院にいる祖母しかいない。祖母にはもうこのことは伝わってしまってるのだろうか?
(ジョーイのおばあちゃんには、このことはもう・・?)
(いや、まだ伝えてはいない。それをどうしようかとこれから刑事などとも話し、決めなきゃならないんだ。)
(でも、もうジョーイはいないし、これからおばあちゃんはどうしたらいいんですか?)
(今の病院から、そういう身寄りのない人が身を寄せる病院があるんだ。そこに転院という形になるかな。)
どんな病院か分からないが、そういうところって(姥捨て山)と言われるようなとこで劣悪な環境ではないのか? 私は危惧した。
(今の病院でなんとかならないんですか? 生活保護も受けるようにして・・・)
(そうなればいいんだが・・・・こればかりは我々ではどうにもならないんだよ。)
弱者を救済する術は、何もない・・・・ 結局はどこの国でも(お金)がものをいうのだろうか・・・
警察署を後にして、私たち3人は、ジョーイの祖母に会いにいくことにした。事件のことは伏せておき、病室にいるのかどうか、確かめたかったからだ。
病院に着くと先程の報道陣も嘘のようにいなくなり、静けさを取り戻していた。
病室に向かうと、おばあちゃんの名前がまだあった。
(おばあちゃん、こんにちは。というよりこんばんわかな?笑)
(あら、貴女たち・・・どうしたの?こんな時間に・・・)
(あ、ちょっと、近くに来たもんですから・・・)
(そうかい・・ところで、今日、ジョーイは大学に来たかい?)
(え?あ、あの・・はい。)
(珍しく、今日は来ないんだよ。いつもなら、今日は学食でこんなの作ったんだって、持ってきてくれるのに・・・)
(あの、ジョーイは・・・今日、大学でイベントがあるのでその仕込みでまだ残っているんですよ。)
(そうなの・・・この方は?)
(大学でジョーイに調理を教えている、チーフなんです。)
(あら・・・いつもジョーイがお世話に・・・あんな子ですけど素直な男の子ですから・・)
(いえ、とても頑張り屋なので調理も上手くて学生たちにも人気なんですよ。)
(じゃ、また、チーズケーキも作ってくれるかしら・・・楽しみだわ・・・笑)
私はこれ以上、言葉が出なかった。 エリカもチーフも胸が詰まり、もう行こう・・という目で合図をした。
(おばあちゃん、またジョーイと一緒に来ます。)
(ありがとう。またみんなで、チーズケーキを食べたいわ。紅茶も用意しておくわね。)
親より先に子供・・・その子供より先に孫にあたるジョーイが旅立ってしまった・・・ 親より先に子が死ぬというのは【親不孝】だと、母が言っていたことがある。日本だけでなく、このアメリカでも同じなのだろうか?
まだ19歳という若さでジョーイは亡くなってしまった。残された祖母はまだその事実を知らない。それを知ったとき、祖母はどうなるのだろう。 人間、生きているとどんなことが起きるか分からない。
(ここは流れに身を任せよう・・・隠そうとしても、いずれ分かってしまう。おばあちゃんにはとても衝撃的な出来事になるが、これも運命というやつだよ。)
チーフは私とエリカの肩を掴み抱きしめた。




