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Give and Take ~for girls 留学編  作者: 月岡 愛
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ONE LOVE MANCHESTER

Silent(黙とう)・・・




(皆さんが示してくれている愛情や連帯こそ、世界が今まさに必要としている薬です・・・)


(愛は恐怖を制し、愛は憎しみを制する・・・だから愛を選んでほしい。たとえそれが難しくても・・・)



オープニングに黙とうを終え、米歌手はこう観客に訴え、ライブは始まった。



私は、この6月4日、イギリス・マンチェスターのライブ会場に(エリカ)と一緒に(アリアナ・グランデ)の慈悲コンサートに来ている。マンチェスターでは5月に行われたグランデのコンサート会場がテロ現場となり、若者や子どもなど22人が死亡、100人以上が負傷した。3日には首都ロンドン中心部で再びテロが起きたばかりだった。


コンサート会場は、超満員で、グランデだけでなく、ジャスティン・ビーバー、ケイティ・ペリー、マイリー・サイラス、コールドプレイなどの人気歌手やバンドも参加し、大歓声に迎えられ、私もエリカも大盛り上がりで大興奮した。






羽田空港を離陸し、約14時間のフライトを終え、私はジョン・F・ケネディ空港に到着し、留学先である、[ルミエラ大学]を目指した。が、さすがに14時間も座りっぱなしだと疲労もMAXで膝がガクガクして思うように歩けない。少し、空港内で休んでいこうとも思ったが、ここはアメリカ。あたりまえだが、すべて英語で、まだ言葉も未熟な私は、コーヒー、一杯を口にしようと思っても、何をどうお店の人に言えばいいか全く自信がない。 


でも、怖気づいてばかりではなにも始まらない。ここは、言ってみるか!


スタバみたいなコーヒーショップに入り、


( Cafe Mocha, please. With plenty of cream.  カフェモカ、お願いします。クリームたっぷりで。)


どうだ? 通じたか?


( What? what is it?  はい?なんですか?)


( So · · · Cafe Moka · ·  だから・・・カフェモカ・・)


(・・・・・)


だめだ。全く通じない。 そうこうしてるうち、私の後ろには、長い行列ができてしまっている。


( Excuse me. I will come again. すいません、また来ます。)


驚いた。日本で話していた英語が現地では全く通用しない。これはショックだ。 どうして通じないんだよ・・・コーヒー一杯も飲めずに私はどうしたらいいんだ・・・・


( Are you in trouble? 何か、困ってるの?)


可愛らしいポニーテールの女の子が私に声をかけてきた。 コーヒーを買おうと思っても言葉が通じなくて困った・・と下手な英語で伝えたら、


( I understand. I will buy it. 分かったわ。わたしが買ってきてあげる。)


へ?通じた? あの・・・じゃぁ、カフェモカを。クリームたっぷりで。


( Cafe mooka. All right.  カフェモカね。大丈夫よ)


あ、あの・・お金・・・



そそくさと、ポニーテールの女の子はお店に入り、店員にオーダーした。



( Yes. Cafe mocha. Is this OK? はい。カフェモカ。これでいいでしょ?)


( Thank you. Um, the money is ... ありがとう。あの、お金は・・)


( I do not need money. You came from Japan, do not you? A trip  お金はいらない。日本から来たんでしょ?旅行? )


そういうと、ポニーテールの女の子は、私にカフェモカを渡し、コーラーとビスケットらしきお菓子を手にしベンチに腰かけた。 はい。どうぞ。とそのビスケットを割って私にくれてコーラーをグビグビと飲み始めた。


今、初めて会ったのに、こんなにフレンドリーに接してくるなんて、それにコーヒーショップでコーラーなんか買ってくるところが、いかにもアメリカ人らしくて、私は日本ではこのような経験がない。それに、私の英会話でも少しは通じるようだから、ここはちょっと話してみるか!



(日本から留学に来ていて、その初日が今日なの。これから、マンハッタンというところにある[ルミエラ大学]の学生寮に向かうところだったんだ。)


(ふーん、そうなんだ。でも、こうして気安く声をかけてきて、財布など盗むのもいるからね。ここはアメリカだから。)


心配してくれてるんだか分からんが、あんたは大丈夫なのかい???


(ルミエラ大学まで、案内するよ。車じゃなきゃ行けないからさ。ここからマンハッタンまで車でも結構、あるからね。)


そういうと、さ、行こうと言わんばかりに私の腕をつかんだ。


(あ、あの、まだ荷物が・・・・)


空港の中にはいても、まだ私のスーツケースが出てこない。


(そっか。そうよね。笑。手ぶらでアメリカなんて来るはずもないもんね。ちょっと待ってるか。笑)


コーラーを片手にグビグビ・・・ビスケットをバリバリ・・・・私はカフェモカを手に小さくなっていた。


ようやくスーツケースも出てきて、この子にマンハッタンまで一緒にいってもらうことにした。が、そこでまた驚くことが起きた。てっきり、タクシーで一緒にいってくれると思っていたのだけど、自分の車で空港まで来たようでその車で行くことになったのだが、それを見て私はびっくりした。何とも速そうな大きい車でそれに色もド派手のまっ黄色。  


ぽかーん・・・としてると、


(さ、早く乗って。荷物はここに入れとけばいいから。)


(あの、この車、なんていうの?)


(これ? シボレー。)


(しぼれーぃ?)


(シボレーコルベット。コルベッティなんていうわね。)


はぁ・・・そうですか・・・・ こんな可愛らしい女の子がこんな大きな車を運転するなんて、とても見えない。そのギャップがちょっと・・・



グォオン!グォオン!・・・すごいエンジンの音。


(マンハッタンまで、かっ飛ばすからね。)


キキキ・・・ブォーン! 


スリップ音とともに、まっ黄色の、(コルベッティ)は、私を乗せ、ニューヨークの中心、マンハッタンに向かった。


(名前、なんていうの?)


(月岡です。月岡 愛です。)


(愛か・・・私は、エリカ。よろしくね。)


(は、はい。よろしくです。)


この(コルベッティ)スピードが凄くて、ちょっと怖い。 こんなに速度を出して警察に捕まったりしないのかい?


(ルミエラ大学なんて、いいとこに留学したね。あそこは設備も整ってるし広い敷地の中に学生寮もあるし、それにニューヨーク市内ならそれほど時間もかからないでいけるから便利なとこよ。)


(歩きとか、自転車でも大丈夫?)


(うーん・・便利っていっても、やはり車がないと不便かな・・・それに、徒歩や自転車って危険が伴うから、学生の人たちも車か、電車、バス、っていった感じかな?)


(危険って・・・事故とか怪我とか?)


(襲われるのよ。特に女の子は。ちょっと裏に入れば、そこはもう生きて出てこれないとこもあるからね。)


留学生活初日に、ちょっと怖い話だ。と、さっきから後ろにパトカーらしき車がついている。まさか・・・


(ちょっと、振り切るから。しっかり掴まっててよ。笑。)


エリカは一気に速度を上げた。 と、後ろにいたパトカーも


( Chevrolet, stop there! そこのシボレー、止まりなさい!)


ひゃーーパトカーに追跡されている。それに負けじとエリカも右へ左へと逃げまくる。


空港から走りだしてわずかなのに、もうパトカーに追われるなんて・・・・それも1台や2台ではない。私が車の中から見る限り、6,7台は後ろについている。 これは絶対に捕まる。やばい。


しかし、この(コルベッティ)、大きい割には、ずいぶんと小回りが利くようで、こんな道を入っていくの?ってとこも、あれよあれよとスピードを上げて走り抜く。また、エリカも相当、ハンドルの技術が長けていてパトカーも、1台、2台と減ってきた。 


(じゃ、この辺りで、フィニッシュ!ね。)


そう言うと、急ブレーキをしハンドルを一気に回転し、後ろのパトカー横をすり抜けていった。まるで、ワイルドスピード並みのハンドル捌きだ。


警察からも逃げ切り、ニューヨーク市内に入り、マンハッタンに到着した。しかし、その景色は私が想像していたものとは、ずいぶんかけ離れていた。 マンハッタンって、てっきり高層ビルがたくさんあってビジネスマンたちがたくさん行き来しているところかと思ったが、ずいぶん自然も多く、私が見る限り高層ビルなどない。 


(ニューヨーク・マンハッタンっていっても、ビルとか、それは市の中心にあるもので少し離れると自然や公園も多く特に、学校などは中心地からは離れてるからね。)



ルミエラ大学に到着した。



(ここが、ルミエラ大学。そこから入ってセキリュティーセンターがあるからそこで聞けば、案内してくれるから。)


(コルベッティ)から、スーツケースを出してもらい、私は校内に入った。



(ありがとう。ほんとに助かった。)


私も日本なら、敬語を使い、ありがとうございました・・・と言うが、なぜか、フレンドリーな言葉になってしまっている。


(いいえ。こちらこそ。また、会うことになるから。笑 )


へ?


そういうとエリカは、ブォーン・・と(コルベッティ)のアクセルを踏んだ。







私の留学生活は、(エリカ)という、ポニーテールが可愛らしい女の子との出会いから始まった。















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