ホワイトクリスマス
クリスマス
朝目が覚めると辺りは真っ白だった
普段いつも使っている部屋だが違和感だらけだ
それは一目瞭然
家具家電部屋の隅々まで全てが真っ白なのだ
「なんだこれ・・どうなってる・・・」
ベッドから起き上がると手に一枚の紙切れを握っていることに気付く
その紙にはこう書かれていた
メリークリスマス
なんのサプライズだこれは
ホワイトクリスマスとはよく聞くが
これは流石に白すぎるだろ
紙を無造作にポケットへつっこむ
外がどうなっているのか気になり窓を覗こうとするが周りが白一色で普段使い慣れた部屋でも距離感がつかめずゴミ箱を蹴飛ばしてしまう
外の景色が視界に入る
「雪・・なのか・・・これ」
そこには上下共に全てが真っ白な世界が広がっていた
一晩で大雪が降ったとかそういったレベルではない
白以外の物が目に入ってこない
そもそも草木建物空までもが白くなっている
雪かどうかまでは触ってみないとわからないがとにかく白い
異様な光景に意識を奪われると不意にガタッという音に我にかえる
音は廊下の方からした
家族だろうか
この情況が理解出来ず考えても答えが出ないのであれば誰かに聞けばいい
この部屋のサプライズ?も家族の仕業ならば何か知っているに違いない
物にぶつかりながら廊下を目指す
部屋のドアを開けてみるとさらに驚愕した
部屋だけでなく家の中全てが真っ白だった
ここまでくるともはや白じゃない物が一つもない
世界が白一色に染まってしまったのだ
おぼつかない足取りで家族を探すがどこにもいない
そもそも家族がいた形跡がない
俺の家族は父と母と妹が一人
だが普段家族が寝ている部屋がなくなっていた
「どうなっている・・まさか部屋ごと消滅してしまったのか」
そう考えると背中がゾクッとなり急に怖くなってきた
「ここはどこだ・・・家族はどこだ・・・」
何か手がかりはないか
何でもいい
とにかく情報がほしい
考えても答えはでない
外に出よう
何か分かるかもしれない
玄関を開け地面を踏みしめる
やはり白いのは雪のようだ
だがそれ以外はペンキで塗ったかのように白くなっているだけのようだ
家の敷地を出ると何もない
そう
建物が見当たらないのだ
どうやら白くなっただけではないようだ
もはやここは別の世界に思えてきた
真っ白で真っ平ら
これではどこを目指して歩けばいいのか分からない
家の周りを歩いてると1つだけ看板がたっていた
看板には矢印で←としか書かれていなかった
訳もわからずとりあえず矢印の指す方向を目指して歩いた
しばらく歩くと遠くの方で何かの建物が見えてきた
誰かいるかもしれない
歩幅が自然と大きくなる
外は寒いしあそこにいけば何か分かるかもしれない
30分ほど歩いただろうか
そこには煙突の生えた小さな家があった
「寒い・・・とりあえず暖まりたい」
少し戸惑いながらもノックをしてみる
すると中から「お入りぃ~」と声がした
恐る恐るドアを開けるとそこには一人の老人がいた
家の中を見て驚いた
なんとそこには色が存在していたのだ
白以外のものを久しぶりに見たような気がした
老人はマグカップを片手に赤と白の服装で椅子に腰掛けている
部屋の装飾
老人の姿
どこかで見たことあるような気がする
そうだ、サンタクロースだ
もちろん実際に見たことはないが不思議とそんな気がしたのだ
老人「そこへ座りなさい」
老人は俺がここへ来ることが知っていたかのような態度だ
「は、はい。失礼します」
椅子に座って側にあった暖炉に冷めきった手を当てる
「暖かい・・・」
そう呟くと
フっと老人が笑った
暖炉の暖かさに感動している俺を見て微笑ましく思ったのだろうか
少し恥ずかしくなり老人に目をやると漫画を読んでいた
俺のことなど全く気にしてないようだ
なぜこの部屋だけ色が生きているのか
この真っ白な世界で生きているこの老人
聞きたいことが色々あった
俺の考えを悟ってか老人と目が合う
俺「あの、おじいさんはここで何をしてるんですか?」
老人はガタッと立ち上がり奥の部屋から何かを持ってきた
何かの箱だろうか
手渡されたそれは何故かすごく熱い
老人「さぁ、おあがりぃ~」
ココアだ
俺「熱っ!」
箱に見えたそれはとってのないマグカップだった
なんだよこれ熱くて持てるわけないだろ
俺「あ、ありがとうございます」
聞こえなかったのだろうか
それともココア屋でもやってるといるのだろうか
熱々のココアをテーブルに置く
更に質問を続ける
俺「ここはどこですか?」
老人「フォッフォッフォッ、お前さんの目の前にあるじゃろう」
どうやら耳が遠いようだ
目の前に置いたココアどこいったっておかしいだろ・・・
気を取り直して重要な質問をした
俺「どうやったらここから出れますか?」
すると老人はおもむろに立ち上がり再び奥の部屋へ行った
しばらくして戻ってきた老人が何かを持ってきてテーブルに置いた
ココアだ
どんだけココア!?まだ一口しか飲んでねーから!!
立っている老人を見上げると少しイラっとした顔をしている
何で不機嫌になってるの!?お前が勝手にココア持ってきただけだろ!?
こちらもやはりとってがない
なんだよこれ冷めるまで飲めねーよ
ココア飲ませる気ないだろう・・・
ヘンテコなコップばかりだ
だがこの老人は平然とココアを飲んでいる
やはりただ者ではないないのか
テーブルに置いてある老人のマグカップに目をやる
しっかりとしたとってが付いていた
ふざけやがって
ただの意地悪ボケ老人じゃないか
話していてもキリがないので部屋を探索することにした
それほど広くはないが見たこともない不可思議な物がたくさん置いてあった
辺りを見回していると急にお腹が痛くなってきた
俺「すみませんトイレお借りしますね」
老人は漫画に夢中で聞こえてないようだ
俺は勝手に使うことにして奥の扉を開けた
すると老人は読んでいた漫画をバサッと床に投げて「なんでココアココアなんでココア!?」
と物凄い形相で叫びながら走ってきたのだ
俺「うわあああぁぁあああ!!」
俺は驚いてとっさにドアを閉めて鍵をかけた
老人はドンドンドンと扉を叩く
ココアを残したことに対して怒っているのだろうか
原因はわからないがとにかくヤバい
それ以上に便意の方がヤバいのだ
俺「クソッ、トイレはどこだ!?」
辺りを見回すと階段があることに気付いた
上の階にあるのか
そう思い階段を上ると鍵をかけたドアがバキッと音をたてて壊れた
老人は「ココアああぁぁぁあああ!!」と叫びながら追いかけてきた
俺は急いでトイレを探すとそれらしき部屋を見つけた
急いで中に入るとそこは確かにトイレなのだが何故かこの部屋だけは真っ白なのだ
俺は急いで個室に入り鍵をしめ用をたすと老人が個室のドアをドンドン叩く
このままではヤバいぞ
どうする
けつを拭こうと辺りを見回す
だが真っ白なトイレで気付かなかったが紙がなかった
紙もなければ仏もない
最悪だ
ドアを叩く老人
紙のないトイレ
けつ丸出しの俺
もうだめだ
そう思いふとポケットに手をやるとグシャグシャになった紙が入っていた
広げてみるとそこには
メリークリスマスと書かれていた