第9話、生産スキル
2015/05/10:ステータスのMPを修正しました
2015/05/10:ステータスのHPを修正しました。それに伴い、本編の一部も訂正しました
街へ帰ってきた。セーフティエリアに入ったところで、先ほどのレベルアップで得たStatus pointを割り振ってしまおうと思う。
ステータスに関して別に極振りをしていたわけではないのだが、Vitをないがしろにしていたことで腐れ狼の噛みつき1回だけでHPが半分を切ってしまう事態に陥った。これはいただけない。
なので、今回は手に入れたStatus pointをすべてVitに振ってみることにしました。
◇Player's Status
名前:キーシュ (Lv.38)
種族:魔族
職業:万器使い (Lv.19)
HP:3600/3600 MP:4750/4750
Str:91
Dex:94
Vit:36 (UP↑)
Int:95
Agi:91
Luk:3
IntやDexなどには遠く及ばないが、Vitが一気に増えた。おかげでHPはなんと9倍になった。これで一撃でやられるような失態は免れただろう。
そして忘れてはいけないのが【本】である。新しいスキルが発生したと報告があったわけだが、一体どんなアビリティが増えたのだろうか。
New!と表示されていたのは【魔力識別】というスキルだ。何でも仲間だと思っている相手の魔力を他と区別し、魔法の影響外に置くというスキルらしい。
……これってつまり、このスキルを取得しないまま魔法を使うと、敵と同じく仲間もダメージを受けるっていうことだよな? なるほど、魔法も普通のゲームのように仲間を無条件ですり抜けてくれるとかそういうことはないわけだ。
取らなきゃダメでしょ、このスキル。俺の目標は他プレイヤーとの冒険なんだから、その仲間に間違ってもダメージを与えるなどとんでもない話である。
『【魔力識別】を取得しました』
ちなみに消費は15APだった。必須スキルのくせしてかなり高い買い物だ。元々45AP持っていたので、残りは30APである。
他はまためぼしいスキルを探すのも大変なので、先に素材をどうにかしてしまうことにした。
「始まりの街」にはアイテム屋や鍛冶屋などはあるものの、素材を買い取ってくれるところがどこだかよくわからない。俺の中では、こういう素材を買い取ってくれるところと言えばギルドである。しかし、この街にギルドはない。
こういう時は、困ったときのダグラスさんである。もしかしたら、役所で買い取りをしてくれるかもしれないので、行ってみることにする。
「俺たちは素材の買い取りなんぞしてないぞ?」
「はい?」
返ってきた答えは俺の予想をはるかに上回っていた。
買い取りをしていない? Why?
「だから、素材の買い取りなんぞしてる店はない。必要なもんは自分たちで供給できるようにしているからな。革が必要なら必要な分だけの動物を飼っているし、備蓄もある。食材だって外からとってくる必要はない。この街の中だけで自給自足が成立しちまってるからな」
え、じゃあなんで素材がはぎとれるんだ?
「素材を使うなら、お前ら異世界人だろうよ。人族の異世界人たちは素材を買い取って物を作ってるって話じゃねぇか」
つまり、モンスターから剥ぎ取れる素材はすべて生産職のプレイヤーが使うためのもの。だからNPCは買い取らないと? じゃあ、ボッチの俺は?
というか、そしたらお金はどうやって手に入れるんだよ。
「俺たちが買い取るとしたらすでに製品になった物品だな」
つまりつまり? 俺が素材を手に入れて、俺自身でそれを加工して何かしらの製品にすれば買い取ってもらえるとか。
と、とことんついてねー!
「まあキーシュには厳しいかもしれねぇけどよ、例外を出すわけにもいかねーからな。すまんが了承してくれ」
ダグラスはそう言って役所の奥へ引っ込んでしまう。俺は途方に暮れてしばらくその場に立ち尽くしていた。
そして立ち直って、改めて思った。俺、キャラ作り直そうかな……。
結局、立ち直るまでは回復せずとも、何とか行動を起こそうという気にはなった。
とにかく、何かを買うためにはお金が必要である。お金を得るためには今のところNPCに物を売るしかないが、それは製品でないといけない。俺が手に入れられるのは素材、つまり加工しなくてはならない。
幸いと言っていいのか。このゲームは戦闘職であっても【革細工】や【調合】といった生産スキルは取得できる。しかし、まぁ、取る人は少ないだろうなぁ。かく言う俺も戦闘職と決めたら戦闘スキル以外は取得しない人間である。いや、今は魔族だけど。
だが、このキャラでやると決めた以上、腹を括るしかない。
しかし、どの素材が何に仕えるのか、全く分からないぞ。そもそも素材を剥ぎ取ってくるときも何が素材かわからなくて適当にとってきているから、何もわからなくて当然だ。
とすると、どういうアイテムなのか正確に知る必要がある。
『【鑑定】を取得しました』
これでやっとこの素材たちが役に立つ。さっそくどんな素材なのか、【鑑定】を使ってみようじゃないか。
【砂飛竜の皮】
ワイバーンの皮膚。
鱗のように見えるゴツゴツした皮。わに革に似ている。
【砂飛竜の肉】
ワイバーンの肉。
筋肉質であまりおいしそうではない。一応食べれる。
【砂飛竜の牙】
ワイバーンの牙。
鋭く尖っているので、刺さると痛い。材質はガラスに似通っている。
【砂飛竜の眼球】
ワイバーンの瞳。
体にくっついているときはつぶらであっても、目だけ摘出すればただの眼球である。側に置いておくと視線を感じる。
【砂飛竜の爪】
ワイバーンの爪。
一本一本が小ぶりなナイフのような形状をしている。材質は金属に似通っている。
【砂飛竜の飛膜】
ワイバーンの翼。
皮膚より薄くて伸縮性がある。少し透けている。
【巨蟷螂の鎌】
グランド・マンティスの鎌。
鎌としてそのまま再利用できないこともないが、脆い。
使えそうなのは、【砂飛竜の皮】【砂飛竜の牙】【砂飛竜の爪】【砂飛竜の飛膜】【巨蟷螂の鎌】の5つぐらいか。筋肉質な肉を好き好んで食べようとは思わないし、眼球は何の素材になるか見当もつかないしな。
皮と飛膜は革製品に、鎌はもしもの時の予備装備として持ち歩いて、爪は研いで投げナイフにするか? 問題は牙だな。
刺さると痛い、とわざわざ書いているということは突き刺す系の武器にできるかも。突き刺す武器と言えば、槍あたりか。そうすると、棒状のものが欲しいところだ。
棒状の……金属? それってどうやって手に入れるんだろう。
まあいいか。牙は何か作れそうになるまで眠らせとこう。
そうと決まれば必要なスキルを取得してしまおう。
『【革細工】を取得しました』
『【錬金術】を取得しました』
それと、フィールドにある素材を手に入れるために、採る系のスキルもとってしまおうか。
『【採取】を取得しました』
『【伐採】を取得しました』
『【採掘】を取得しました』
【伐採】と【採掘】はそれ用の道具が必要らしいから、モンスター素材で作った製品を売って、その金で道具を買うつもりだ。
まだ20AP残っているし、また何かスキルが必要になってもすぐに取得できるだろう。
さっそくこれらの素材で何かしらを作ってみようと思うのだが、如何せん何をしたらいいのかわからない。
皮は"なめし"とやらをしないと革にならないというのは知っている。しかし、その先は? 俺職人でもなければ、そんなのに興味もないから本当に何もわからないよ?
例えば技術的なところはスキルに全て任せるとして、それでは何を作ろうかという話である。今、俺はお金が欲しいのであって、自分の防具やらなんやらが欲しいわけではない。 お金を得るべく売り物を作るのだ。
では何が売れるのか? そもそも、ここの暮らしはどんな感じなのか? 革の日用品って?
とことんダメだな、俺。
いやいや、気を撮り直せ、俺。わからないなら情報を集めるのみ! 街で革製品を探してみることにしよう。それらを参考にすればいいのさ。
「ジャケットとかが一般的なんじゃないか?」
立ち寄った雑貨店の店主は俺にそう言った。所謂レザージャケット、バイクをブオンブオン言わせてる人とかが好んで着るアレね。服なら想像しやすそうだ。
魔法や攻撃スキルを使う際、イメージ力または想像力と言うものが大事だということがわかった。同じスキルである生産スキルだって、同じことが言えるだろう。他のVRMMOとかだと一つ一つ作業を自ら行わないと物など作れはしないが、OWOは違うらしい。
NPCである店主が言っていたのだ。スキルさえ持っていれば、スキルを使うだけで物が出来上がると。なんて便利で簡単な世界だ! と思わなくもないが、実際に作業をして作って見せろと言われたところで俺は作れないので都合がいい。
「ともかく、作りたいものを想像しつつ、スキルを使えばいいわけだな」
頭の中にジャケットを思い浮かべる。表面はゴツゴツしてて。色は素材元であるワイバーンと同じになるから薄い茶色。
「革細工」
一言、スキルを口にすると、手に持っていた素材が一瞬にして消えた。あれ? 失敗した? と思ったらちゃんとItem欄に入っていた。取り出してみればちゃんとジャケットになっている。なんて簡単な世界だ!
ワイバーン一体からは2つジャケットが作れた。ちなみに、余った飛膜はベルトにしてみた。薄いくせに案外丈夫なので、ベルトとしての役割はきちんと果たすだろう。
店主に品質を見てもらった。
「ほう、やるじゃないか。これなら商品として文句はないだろうよ」
やるじゃないか、と言われてもあまり嬉しくない。俺がやったことといえば、素材を用意してスキルを言っただけなのだ。自分が作った実感など湧くはずもない。
だが、売れるなら俺としては問題ない。要は金さえできればいいのだ。俺は職人ではないし、生産職を目指しているわけでもないので、品質は妥協する。売れるなら何でもいい。
レザージャケットは、現在俺が装備している芋魔虫の服より防御力が高いので、一枚だけ自分の分として持っておくことにした。
「しかし、どこで売れますかね? ワイバーンの革なんて珍しくもないでしょう?」
なんせワイバーンなんてこの街を出て少し歩けばわんさかいるのだ。
しかし、店主は俺の言葉に首を横に振った。
「珍しいさ。商品を作ってるやつらはな、自分の土地で使う分は育ててるからな。わざわざワイバーンなんて狩りにいかないのさ。危ないしな」
そういう店主はレベル45なんだとか。ワイバーンは少なくともレベル120以上なので、この店主の言っていることは本当なのだろう。
育てている、というのもかなり無理な話のような気がしなくもないが。そういうことなんだろう、と納得しておくことにした。どうせそんなのおかしい、と運営に訴えたところで改善されることはないだろうし。
「まだどこに売ろうか決めてないんなら俺が買い取ってやろうか?」
「本当ですか! ぜひお願いします」
やっとお金をゲットだ。
レザージャケットが20000Gで、ベルトは珍しい素材でできてるから3000G、しめて23000Gで買い取ってもらった。1G=1円ぐらいの値段なので、レザージャケットが2万、ベルトが3000円ぐらいで売れたことになる。
この世界の基準が未だによくわからないので、この値段が高いのか低いのかは判断のつけようがない。しかし、俺の手持ちが260Gから23260Gになったのは嬉しい。このまま順調に貯めていきたい。
店主に聞いてみたところ、これならたくさんあっても売れると聞き、俺の獲物は完全にワイバーン一択となった。
これからはレベルアップのためにワイバーンを狙い、ついでにレザージャケットとベルトを作って売りさばく。そうやって人族の街への旅支度をすることに決めた。
◇Player's Status
名前:キーシュ (Lv.38)
種族:魔族
職業:万器使い (Lv.19)
HP:3600/3600 MP:4750/4750
Str:91
Dex:94
Vit:4 → 36
Int:95
Agi:91
Luk:3
◇Ability list
・Weapon Skill
【鎌(Lv.11)】【小剣(Lv.1)】
【本(Lv.4)】
・Attack Skill
【投擲(Lv.1)】【魔装月牙(Lv.7)】
【回転旋風(Lv.2)】
・Support Skill
【烏合一閃(Lv.5)】【知力変換(Lv.8)】
【伸縮自在(Lv.4)】【鑑定(Lv.1)New!】
・Attack Magic
【火炎魔法(Lv.1)】【水流魔法(Lv.2)】
【地殻魔法(Lv.1)】【風雲魔法(Lv.1)】
【光彩魔法(Lv.1)】【闇夜魔法(Lv.1)】
・Support Magic
【回復魔法(Lv.1)】【付与魔法(Lv.2)】
・Making Skill
【革細工(Lv.1)New!】【錬金術(Lv.1)New!】
【採取(Lv.1)New!】【伐採(Lv.1)New!】
【採掘(Lv.1)New!】
〜New Ability〜
【鑑定】(AS):Support Skill
手に入れたものの詳細を知ることができる。
誰でも取得可能。
【革細工】:Making Skill
生き物の皮を使って革製品を作ることができる。
誰でも取得可能。
【錬金術】:Making Skill
金属を魔力を使って加工することができる。
ただし、金属を別の金属へ変換する技術はまだ開発されていない。
誰でも取得可能。
【採取】:Making Skill
植物を傷めずにとったり、適切に生き物から副産物をとることができる。
誰でも取得可能。
【伐採】:Making Skill
大型の植物を加工しやすいように切り出すことができる。
ただし、専用の道具が必要。
誰でも取得可能。
【採掘】:Making Skill
地面に埋まっている鉱石などを綺麗に取り出すことができる。
ただし、専用の道具が必要。
誰でも取得可能。