第7話、レベルアップ
2015/05/10:ステータスのHPを修正しました
ということで。
ダグラスとラーマのおかげで戦闘をする下地が整った。なので、いざ! リベンジ!
なけなしの初期金で回復アイテムを買い、俺は今度こそと意気込んで街の外へ出た。
ちゃんと腕輪はつけているな? うん、つけてる。これさえあれば理不尽な目には合わないはず。慎重に狩っていこう。
まず、前回の凱旋で得た知識として。
魔族の「始まりの街」周辺には主に4種類のモンスターがいる。
1つはワイバーン。腕と翼が一体になった、プテラノドンのようなドラゴン系モンスターだ。こいつは基本的に空からの奇襲攻撃をしてきて、滅多に地上には降りてこない。
【魔装月牙】を空に向かって飛ばせば倒せるかもしれないが、まだまだ使い始めて間もないスキルを器用に当てられるかどうかはわからない。
ということで却下。見つかったら逃げます。
2つ目は「ダグラスの戦闘指南」で判明した隠れ兎。実物は見たことがないが、名前の通り兎なんだろう。
しかし、ダグラス曰く、見つけるのは超絶難しい、というか無理。少なくとも俺には無理。
ということで却下。美味しいらしいから未練タラタラである。
3つ目はグランド・マンティス。人の倍はあろうかという巨大なカマキリだ。攻撃速度が異様に速くておっかない、だが移動速度はそこまで速くない。攻撃力は、一発でも当たると俺は死ぬのでわからない。
ただ、手が鎌のようになっていることから、鎌の扱い方を模倣することができるかもしれない。できれば戦ってみたいところだ。
4つ目は腐れ狼だ。字面的にもわかると思うが、まあ狼だ。ちょっと筋肉とか内蔵が腐ってるだけの狼だ。筋肉腐っててどうやって走ってるんだろうとか疑問はあるけど、そこはゲーム。ご都合主義の一つや二つぐらいあるさ。
それよりも、俺にとって大事なのはコイツが今のところ一番戦いやすい相手であるということだ。群れで襲ってくるのが厄介だが、鎌ならあまり関係はない。
結論。
基本は腐れ狼を倒しつつ、一匹になってるグランド・マンティスがいるならそいつも狩ってみる。そんな感じで行こう。
街の外はどこかへ続く道が3方向に伸びている。
今日のところは右へ進んでみることにしよう。そして、さっそく腐れ狼のご登場だ。
「ひーふーみー。3体か、今度はやられないからな! 鎌来い!」
目の前に鎌が現れる。俺はそれを掴んで腰を低く落とした。
「とりあえず、これでもくらえ! 魔装月牙!」
あまり魔力を溜めずに打ち抜くと前回よりもだいぶ小さい靄が狼へ向けて放たれた。鎌は次の攻撃に備えて元のイチヘ戻す。
靄は並走する狼全員に当たったものの、端の2匹には掠っただけだったらしい。そのまま走ってきた。しかし、直撃した真ん中の狼が断末魔のように鳴いてその場に崩れ落ちる。
「ちゃんと当たれば一発K.O.かよ」
残りの2匹を牽制するように前方に鎌を振るうと、2匹は左右に飛び退いた。そしてその場でグルルと唸り声を上げている。
「さてどうしようか。この間合いだと俺の鎌じゃ届かないな」
魔法を使うには本を出す必要がある。だが、今はまだ鎌を片腕だけで振るうほどのStrはない。
ここは芸がないけど【魔装月牙】で凌ぐしかないか。
「当たってくれよ! 魔装月牙!」
まずは右のやつから。よけられないように溜めは少なく。先ほどと同じぐらいの靄が鎌から出ていく。が、狼はジャンプでそれをよけてしまった。
左のやつがまだ動かないのを見て、俺は一か八か右のやつへ近づいた。着地する直前を狙って鎌を振るう。ついでに攻撃力も上げるぞ。
「知力変換!」
鎌が怪しい光を帯びる。次の瞬間には狼を真っ二つにした。狼は声もなくその場に倒れる。
俺はすぐにもう一匹へ視線を戻した。10秒間、まだ攻撃力は上がってる、走って間に合うか? だが運のいいことに残り一匹はこちらに走りよっていた。
まだ【知力変換】が効いてる。いける!
「死んどけ!」
間合いに入ってきたところで鎌が狼を切り裂いた。狼はベチャリと嫌な音を立てて俺の目と鼻の先に落ちた。
『レベルが上がりました』
『【鎌】がレベルアップしました。アビリティ一覧に新着があります』
『【魔装月牙】がレベルアップしました』
『【烏合一閃】がレベルアップしました』
『【知力変換】がレベルアップしました』
おうおう。さすが格上の相手3体、一気にいろんなレベルが上がったな。新たな敵が現れる前にいろいろ確認していこうか。
まずはステータスだ。
◇Player's Status
名前:キーシュ (Lv.12)
種族:魔族
職業:万器使い (Lv.6)
HP:400/400 MP:3450/3450
Str:30
Dex:41 (UP↑)
Vit:4
Int:69 (UP↑)
Agi:20
Luk:3
Status point:48
うん、順調にMPが伸びてる。HPとどんどん差が開いちゃうな。しかし、前回と今回で、おそらくDexとIntが上がる理由がわかった。
上がってる数値的に、Intは俺自身のレベルに、Dexは職業レベルに対応しているっぽい。職業レベルより自身のレベルの方が上がりやすいから、つまりはIntの伸びが以上に早いということだ。
なんでこれらが対応しているのかは定かじゃないけど、Intの方はたぶん魔族なのが関係してるんじゃないかな? 確証はないけど。
まあ、勝手にDexとIntが上がってくれるなら、Status pointは他のに使おう。今の戦闘で、上手くやればノーダメージでいけるのがわかったから、Vitはいらないな。代わりにAgiをあげておこう。
あとStrも上げよう。鎌で無双の夢は捨てきれないし。
◇Player's Status
名前:キーシュ (Lv.12)
種族:魔族
職業:万器使い (Lv.6)
HP:400/400 MP:3450/3450
Str:49 (UP↑)
Dex:41
Vit:4
Int:69
Agi:49 (UP↑)
Luk:3
いやぁ、格差が酷いね。ここまできたらもうVitに振ることなんてないだろうな。
ところでLukって何に影響するんだろうね? わかんかいから振ってないんだけど。
次はアビリティ一覧だ。
何やら新しいスキルが現れたらしいし。それに、今回始めて戦闘してみて不便なところがわかった。その不便なところを補えるスキルを探してみることにしよう。
Abilityを開くと上に14APと表示されていた。うん? いつ増えたんだ?
今回わかった不便なところ、それは間合いだ。鎌の間合いよりも遠くにいる敵は魔法でいいやなんて思っていたけれど、実際は魔法使う余裕なんてない。
だから、少し遠くにいる敵も鎌でなんとかしたいのだ。
さてさて、新しいスキルはなんですかっと。
名前は【伸縮自在】、そしてその効果は俺が求めているものに合致していた。
鎌を回転させることによって柄を伸ばせるというスキルらしい。回転させる、というのがイマイチよくわからないが、上手く使えれば鎌で立ち回るのに役立つはずだ。
悩む理由はないのでとっちゃいます。APも余ってるしね。消費は5AP、残りは9APだ。
『【伸縮自在】を取得しました』
他に何か有用なのはなかろうか。するといいのを見つけた。【武器変更】、名前の通り戦闘中に武器装備を入れ替えられるスキルらしい。
今でも念じるだけで出てくるんだから、いらないんじゃないか? と一瞬思ったが、どうやら戦闘中は最初に出した武器から別のものにするためにはメニュー画面を開かなきゃいけないらしい。難儀な話だ。
このスキルは万器使い専用らしい。まあそうだよな、いろんな武器が使えるのが売りなのに、戦闘中に変えられないんじゃ意味がない。
よしさっそく手に入れますか。
『APが足りません』
ありゃ。【武器変更】は10AP、残りは9AP、確かに足りてないや。仕方がない、次にAPを手に入れた時に取得しよう。
ちなみに、腐れ狼のドロップだが。残念ながらこいつらは何も残してくれない。まあ、腐った肉とか手に入れても嬉しくないし。毛皮も爛れてるし。
それより【伸縮自在】だ。回転というのがどういうことなのか確かめておかなくては。
まず不格好だけど鎌を持って自分が回転してみようか。ぐるぐる。うん、伸びてる。え? もしかしてこれが正解? んなアホな。
次、鎌を振り抜く要領で自分の周りを一回転させてみる。こちらも伸びた。これなら自分が回るよりは戦術として組み込みやすいかもしれない。
次、チアリーダーが棒を回すような感じで、目の前で鎌を縦に回転させてみる。これも伸びた。
なるほど、とにかくなんでもいいから回転を加えることで鎌が伸びる仕様らしい。ちなみに、伸びるな! と念じながら回転させると伸びなかった。
よくアクション映画とかでそんなにくるくる回る必要なくね? って思うぐらい役者が回るけど、俺もそんな感じで回ればいいのか。
あとは鎌を無駄に手元で回転させるのもやろう。傍から見たら何カッコつけてんの、とか言われそうだけど気にしない。だってここには他のプレイヤーいないしな! 言ってて惨めになってきた、もうこの話題は辞めよう。
新たなスキルの感触も確かめたし、さくっと次のモンスターを倒しに行こう。次はもうちょっと上手く立ち回れるはずだ。
次に現れたのも腐れ狼だった。だが、その数は先ほどよりも多く、12匹。一気に増えすぎじゃないですかね!?
「鎌来い!」
現れた鎌を掴んでまずは手元で一回転。そして【魔装月牙】を放つのに合わせて体の周りを一回転。だいぶ柄が伸びた。ついでに今の【魔装月牙】で5匹削れている。
「もういっちょ、魔装月牙!」
また柄が伸びる。今度は腐れ狼たちは何匹か掠っただけだった。そして俺を取り囲むように周囲に散らばる。
そういうことしないでよー。
「とりあえず、オラ!」
一歩踏み込んで鎌を一撫で。腐れ狼がジャンプしたところでもう一歩踏み出して無駄に回転させながら空中の腐れ狼を切る。
チラリと背後に視線を向ければ迫ってきている狼が3匹。そっちに向かって鎌を振りかぶる。
「知力変換!」
3匹いっぺんに切り裂いたところで、後ろからジャリと音が鳴った。ジャンプした狼が着地した音か、そう判断してすぐに腕に痛みが走った。
ヤバイッ、噛み付かれてる!
狼を振り落としながらもう一度鎌を振るう。近付いて来ていた狼たちが周りへ飛び退いた。噛み付いていた狼も振り落とされる。落とした狼の頭を鎌で切り落として周りを見回した。
残りは3匹。ただ、今の噛みつきでHPが半分以上減ってる。ちょっとヤバめ?
「【知力変換】も効力尽きたし、ちょいピンチ?」
グルルと唸っている腐れ狼3匹。うう、離脱したい。だが、流石に獣から逃げきれるとは思えないな。
「とりあえず、魔装月牙!」
芸がないとか言わないで! これ以外、スキルらしいスキル持ってないんだって!
狼たちは余裕でよける。が、またもやジャンプした。こいつらよける時は大概ジャンプするな。
ジャンプばっかりするなら、それを使ってやる。
「魔装月牙!」
少しだけ溜めて大きめの靄を撃ち出す。すると、3匹ともいつもより高めにジャンプした。予想通りだ。
そして着地する前にもう一回、【魔装月牙】を撃つ。
「魔装月牙!」
3匹は着地と同時に靄に切り裂かれた。【魔装月牙】使いやす過ぎる。
『レベルが上がりました』
『【鎌】がレベルアップしました。アビリティ一覧に新着があります』
『【魔装月牙】がレベルアップしました』
『【烏合一閃】がレベルアップしました』
『【知力変換】がレベルアップしました』
『【伸縮自在】がレベルアップしました』
うしうし。さっきよりも数が多かったんだ。当然レベルも上がるだろうさ。んじゃ、Status pointだけ割り振って、ログアウトしよう。あー、ログアウトするなら街に帰らなきゃな。
まだまだ、他のプレイヤーと合流するのは遠そうだ。
◇Player's Status
名前:キーシュ (Lv.28)
種族:魔族
職業:万器使い (Lv.14)
HP:400/400 MP:4250/4250
Str:49
Dex:49 (UP↑)
Vit:4
Int:85 (UP↑)
Agi:49
Luk:3
Status point:96
◇Player's Status
名前:キーシュ (Lv.4 → Lv.28)
種族:魔族
職業:万器使い (Lv.2 → Lv.14)
HP:400/400 MP:4250/4250
Str:30 → 81
Dex:37 → 81
Vit:4
Int:61 → 85
Agi:20 → 81
Luk:3
◇Ability list
・Weapon Skill
【鎌(Lv.2 → Lv.7)】【小剣(Lv.1)】【本(Lv.1)】
・Attack Skill
【投擲(Lv.1)】【魔装月牙(Lv.1 → Lv.5)】
・Support Skill
【烏合一閃(Lv.1 → Lv.3)】【知力変換(Lv.1 → Lv.4)】
【伸縮自在(Lv.2)New!】
・Attack Magic
【火炎魔法(Lv.1)】【水流魔法(Lv.1)】
【地殻魔法(Lv.1)】【風雲魔法(Lv.1)】
【光彩魔法(Lv.1)】【闇夜魔法(Lv.1)】
・Support Magic
【回復魔法(Lv.1)】【付与魔法(Lv.1)】
〜New Ability〜
【伸縮自在】(PS):Support Skill
鎌を回転させることで柄を伸ばすことができる。
伸びた柄は戦闘後に元の長さへ戻る。
また戦闘中に、伸びるのを止めることも、元の長さへ戻すこともできる。
Weapon Skill【鎌】取得者のみ取得可能。