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第4話、運が良いのか悪いのか

2015/05/10:ステータスのHPを修正しました

2015/05/15:ステータスのMPを修正しました

「そう気を落とすなって」


 膝から崩れ落ちて身体全体で落ち込み具合を表現する俺に、ダグラスは肩を叩いて励ましてくる。


「鎌を選べたってことはキーシュも万器使い(マルチウェポン)なんだろ? なら、誰かと一緒の時は別の武器を使えばいいじゃねーか」


「え、ダグラスさんも万器使いなんですか」


「おうよ。いろんな武器を使えねーと、お前みたいなやつに教えらんねーだろ?」


 なるほど、理にかなっている。

 ところで鎌を選べたら万器使いという言い方をするということは、もしかして鎌って万器使いでないと使えないのか。いやいや、それよりもダグラスの提案についてだ。


 確かに万器使いの特徴は様々な武器を使えるのが強みなのだ。わざわざ仲間がいるときに鎌を使わなくてもいい。

 それに人とパーティーを組めるのはまだまだ先の話、ソロで鎌のチョイスは間違ってはいないのだから、これからなんとかすればいいじゃないか。


「よしよし、鎌を使う気になったみてぇだな。なら【魔装月牙】を使ってみな」


 鎌でやると決めたらさっそく新スキルを試してみよう。

 ダグラスを真似て構え、見せてもらったスキルを頭に思い浮かべる。説明文には鎌に魔力を込めると書いてあったので、手から鎌へ魔力が流れ出るようなイメージ。


 すると、手から何かが流れ出る感覚が伝わってきた。同時に鎌が段々と重くなるように感じる。

 十分に重くなったか? そろそろ放ってみよう。


「魔装、月牙ッ!」


 思い余って鎌の重さに引きずられるように後方まで振り抜くと、ダグラスの時よりもはるかに大きな(もや)が放たれた。

 靄はだんだん拡散していくようだが、元が大きかったからか、俺の視界が届くよりも遠くへ行ってしまった。


 この【魔装月牙】というスキル、かなり遠くまで飛ばせるようなので、もしかしたら飛行している敵にも有効かもしれない。



『レベルが上がりました』



 ……ん?

 レベルが上がった? なんの話だ?


「すげぇすげぇ! キーシュやるじゃねぇか! あんなにデカい【魔装月牙】は久しぶりに見たぞ!」


 混乱する俺をよそに、ダグラスが一人喜びの声をあげている。肩を少し痛いぐらいに叩かれているが、俺はそれどころじゃない。

 手を使ってメニュー画面を呼び出し、すぐさまStatusに目を通す。



◇Player's Status

 名前:キーシュ (Lv.4)

 種族:魔族

 職業:万器使い (Lv.2)

 HP:400/400  MP:3050/3050

 Str:20

 Dex:37 (UP↑)

 Vit:4

 Int:61 (UP↑)

 Agi:9

 Luk:3

 Status point:16



 レベルが上がり、Status pointという項目が追加されている。おそらくこのStatus pointとやらは自由に振り分けられる分なのだろう。

 それとすでに勝手に振り分けられている分もある。Dex(きようち)Int(ちりょくち)が上がっているのだが、何が基準になってこれが上がったんだ?


 あと、MPにも変動がある。確かMPはInt×50だから、Intが上がったことで最高値が増えたのだろう。

 それと視界の左端中央表示されているMPが一瞬、200消費された。今はレベルアップで満タンに戻ったが、たぶんあれは【魔装月牙】を使った分だな。【魔装月牙】1回でMP200消費か、これって多いのか? たぶん多いんだろうが、最大値が多すぎてあまり負担には感じないな。


 ってか、そもそもなんでレベルが上がったんだよ。俺別に戦闘してないだろ。


「どうした? 何かあったか?」


「あ、いや。なんか勝手にレベルが上がっちゃって。【魔装月牙】使うと経験値が入るんですか?」


「そんなわけないだろ。スキルを使っただけで経験値が入るなら、レベル上げに苦労しなくなっちまう」


 だよな。

 むしろそうでないとゲームバランス崩壊するし。


「日記帳に何か記録されてんじゃないのか?」


 それだ!

 俺はStatusからDiaryに移動した。



■クエスト「ダグラスの戦闘指南」を受注した。ダグラスと戦闘訓練をしよう。

■【鎌】のレベルが上がった。覚えられる技は増えたか?

■【魔装月牙】を習得した。積極的に使っていこう。

隠れ兎シークレット・ラビットを倒した。素材を剥ぎ取っておこう。

■レベルが上がった。これからも精進しよう。



 最新の5つが表示されていて、やろうと思えば遡れるようだ。ログが一言日記風になっていて、次に何をしたらいいのかを示している。なんと優しい設計、その優しさをもっと別のところにも生かしてください。


 しかし、ログを見てやっとレベルアップの原因がわかった。隠れ兎という敵を倒したらしい、おそらく【魔装月牙】で。

 どこまで飛んでったんだよ。


「なんか隠れ兎とやらを倒してしまったらしいです」


 奇妙なこともあるもんですねハハハ、と笑い話にしようと思ったらダグラスがいきなり両肩を掴んできた。


「隠れ兎だって!?」


「え? な、なんですか?」


「隠れ兎を倒したのか!?」


 何を驚いてるんだ、こっちもその剣幕で驚いたじゃないか。


「お前、運がいいな……」


「どちらかと言うと運は悪いほうだと思うんですけど。というか隠れ兎ってなんですか?」


 ボッチ魔族って運が良いのか? 俺はそうは思わない。

 それよりも隠れ兎だ。実物を見たわけでもないから、何がそんなに驚くことなのかよくわからないのだが。


「隠れ兎はその名の通り、姿を消している兎だ。しかも、恐ろしく警戒心が強くてまともに近づけやしない。おまけに敵意ってもんに敏感で、少しでも狙うとこっちの居場所を突き止めてきやがる」


 と、とんだモンスターだな!

 そんなレアなやつを俺は倒しちゃったのか。


 たぶんここから【魔装月牙】を放ったことで隠れ兎に気づかれず、尚且つ試し打ちで全く敵意がなかったから倒せたんだろう。


「それにこのあたりに住んでる隠れ兎はレベルも高いからな。たとえ不意打ちで攻撃を当てられたとしても削りきれん。もし狙うなら即死効果がある攻撃で一撃必殺だな。それでも即死効果なんて確率だから倒せるとは限らんが」


「あれ、じゃあなんでレベル1如きの俺に倒せたんですかね?」


「それのおかげだろ」


 ダグラスが指し示したのは『初心者の腕輪』だ。

 なるほど、つまり隠れ兎は俺のレベルに合わせて弱体化してたのか。


 ここまでくると、もしかして俺ってば運が良いのか?


「だが惜しいのは素材だな。隠れ兎はその肉が美味で高値で取引されてる幻の食材なんだが、どこで倒したのかもわからないと剥ぎ取りにはいけねーな」


 やっぱ俺運悪いわ!






 しかし、あまり悲観することもない。


 『初心者の腕輪』で弱体化できるとはいえ、俺のレベル+5まで。格上の敵なことに代わりはない。

 それが【魔装月牙】を使えば倒せるということがわかったんだ。これなら案外この「始まりの街」を拠点にできる日は近いかもしれない。


「それにしてもお前の【魔装月牙】は本当にすごいな」


「そういえば俺のはデカいって言ってましたね。そんなに珍しいですか?」


「そりゃそうだろう! あそこまで大きな【魔装月牙】だとすると相当MPを使ったんじゃないか?」


 そりゃMPを200も使えば大きくもなるでしょうよ。

 MPがIntに比例するということは、魔族の俺ほど多くのMPを持ってるプレイヤーは他にいないだろうし。

 そう考えるとMP200ってかなり大きな出費だ。


「はぁ!? 200も使っただぁ!?」


 消費したMPのことをダグラスに伝えると、再び驚き出した。驚いてばっかで疲れないのか、ダグラス。


「ホント、お前には驚かされっぱなしだ」




 ダグラス曰く、【魔装月牙】は消費するMPの量を加減して威力を調節できるんだとか。だが、威力を大きくしようとすればするほどイメージ力が必要になってくるらしい。

 これはWikiで得た知識なんだが、このゲーム、数値化されていないステータスとしてイメージ力なるものが存在するらしい。イメージ力はプレイヤー自身がゲーム内で自分の思い描いたモノを実現する力らしい。


 まあ、ようは創造力が大事ってことだろ。んで、こればっかりはプレイヤー自身の能力になるから数値化なんてできるはずもないってわけだ。




 閑話休題(それはおいといて)

 ダグラスから見て俺はどうやら合格だったようで、鎌についての戦闘指南は終わりとのこと。


「鎌の使い方だが、残りは実際に自分で戦闘しながら感覚を掴んでいくといい。他に何か教えて欲しいことがあるなら言ってくれ」


「なら魔法について教えてほしいです」


 【投擲】とか投げるだけだしね、しかもスキルを持ってるから敵の方へ自動で誘導してくれるし。なら、教わることじゃないだろう。

 それよりも魔法だ、魔法。


「魔法か〜」


 ここにきてダグラスは少しバツが悪そうに、頭を掻いた。


「実は俺、魔法はそれほど得意じゃなくてだな。人に教えるような腕前じゃねぇんだよ」


 ほほう、魔法がそれほど上手くない魔族とな? このゲームの魔族はとことん印象を裏切りやがる。


「代わりに魔法が得意なやつを紹介してやるってことでどうだ? 俺なんかに聞くよりいいと思うんだが」


「それじゃあ、それでお願いします」


「おう! なら、俺からはこれで終いだな」


 ピロロ〜ロン。

 システム的にもクエストがクリアできたみたいだな。しかし、この「ダグラスの戦闘指南」でも報酬は入るのかどうか。それも含めて一度今までのクエストも報酬をもらっておこう。


「それじゃ、これを渡しておこう」


 ダグラスが手渡してきたのは一枚の紙切れだ。折り畳まれていて、何が書いてあるのかはわからない。


「こいつを持って、この街の東にある赤い屋根が目印の家に行くといい。そこに住んでるラーマっていう魔法が得意な奴にその紙を渡すんだ」


 つまり、この紙は紹介状ということだ。俺はそれを腰につけているポシェットにしまいこんだ。これ、メニュー画面のItemと連動しているはずだから、アイテム欄に紙切れが表示されているんだろう。


「そんじゃ、お疲れさん。またなんかあったら、街の中央にある役所に来てくれ。俺はだいたいそこにいるからよ」


「はい、ありがとうございました」


 ダグラスと別れ、俺はその場でメニュー画面を開いて操作を始める。クエストの報酬をもらうのだ。



◇Quest list

・ステータスを確認してみよう! Clear!

  ⇒報酬:ポーション

・装備品を着てみよう! Clear!

  ⇒報酬:マナポーション

・日記帳を確認しよう! Clear!

  ⇒報酬:帰還石

・アビリティを取得してみよう! Clear!

  ⇒報酬:5000G(ゴールド)

・戦闘をしてみよう! Clear!

  ⇒報酬:10AP

・ダグラスの戦闘指南 Clear!

  ⇒報酬:地図(map)



 回復アイテムと、最後に立ち寄った街へ一瞬で戻れる帰還石、お金にAP、最後は俺が行ったところが勝手に記録される地図か。

 ザ・初心者セットみたいなレパートリーだな。


「そうだ、Status pointも割り振っておこうか」


 心もとないVit(せいめいち)に振っておくか? う~ん、このステータスだと接近戦なんてそうそうしなさそうだしなー。防御は受けるよりも避ける方面で考えようかな。とするとAgi(しゅんびんち)に振ろうかな。

 でもStr(きんりょくち)も欲しい。鎌で一網打尽とかできたら最高だよね!


 ということでこんな風に割り振ってみた。



◇Player's Status

 名前:キーシュ (Lv.4)

 種族:魔族

 職業:万器使い (Lv.2)

 HP:400/400  MP:3050/3050

 Str:30 (UP↑)

 Dex:37

 Vit:4

 Int:61

 Agi:20 (UP↑)

 Luk:3



 やっぱ偏ってるよなぁ。まあ、そこは中距離から頑張るとしよう。


 さて、それじゃあ次は魔法を教えてもらいに行こう!


◇Player's Status

 名前:キーシュ (Lv.1 → Lv.4)

 種族:魔族

 職業:万器使い (Lv.1 → Lv.2)

 HP:400/400  MP:3050/3050

 Str:20 → 30

 Dex:36 → 37

 Vit:4

 Int:58 → 61

 Agi:9 → 20

 Luk:3



◇Ability list

・Weapon Skill

【鎌(Lv.2)】【小剣(Lv.1)】【本(Lv.1)】


・Attack Skill

【投擲(Lv.1)】【魔装月牙(Lv.1)】


・Support Skill

【烏合一閃(Lv.1)】【知力変換(Lv.1)】


・Attack Magic

【火炎魔法(Lv.1)】【水流魔法(Lv.1)】

【地殻魔法(Lv.1)】【風雲魔法(Lv.1)】

【光彩魔法(Lv.1)】【闇夜魔法(Lv.1)】


・Support Magic

【回復魔法(Lv.1)】【付与魔法(Lv.1)】


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