第14話、希望の光
ちょっと忙しくなってきたので
毎日更新が出来なくなりそうです
ケルベロスはその場にどっしりと構えて動かないタイプのボスモンスターだった。
俺から見て左の首、コイツを仮に「レフト」と名付けよう。あ? 名前にひねりがないって? しかたないじゃないか、今はそれどころじゃないんだ。っとと、レフトの話だったな。レフトは魔法攻撃をしてくる首だ。割と同じ魔法を連発するのが好きなようで、リキャストタイムで何もしてこない時間がある。
真ん中の首、コイツを「ザ・センター」と名付ける。ザ・センターは物理攻撃をしてくる首だ。己の牙を持って俺に襲い掛かってくる。が、噛みついてくるのは首が届く範囲だけ。範囲外にいるときはブレスのようなものを放ってくる。これが範囲攻撃らしいのであまりよろしくない。
最後に右の首、名前は「ライト」。ライトは厄介も厄介、回復役だった。しかも、ライトを狙おうとするとザ・センターが邪魔をしてくるのだ。
こういう敵、もしかして分散して戦えるパーティー用じゃないですかね?
「もしそうだったとしたら俺にどうしろと!?」
俺はブレス攻撃をされないためにケルベロスと距離を詰めていた。何とか噛みつき攻撃をかわしつつ、鎌を振るうもダメージが入りにくい。しかし、魔法だともっと効きにくいのだ。
「魔法がダメなら……、投げナイフ、来い!」
右手から左手へ、鎌を受け渡して手元に投げナイフを具現化させる。
噛みつき攻撃を一旦避けてさらに接近、その状態で目を狙って投げナイフを放った。
「グルゥァァァァアアアアアア!」
先ほどの知性が感じ取れる言葉ではなく、獣の唸り声を発したザ・センターだったが、すぐにライトが回復魔法で目を元通りにしてしまった。
くそう、やっぱりあの回復係ことライトを最初にどうにかしないと勝ち目がないぞ。
「ガルァ!」
ザ・センターの猛攻を凌いでライトへ向かおうとすると、レフトが魔法で邪魔をしてきた。足止めされた俺は再びザ・センターによってライトから離される。
こいつら良い連携プレイを見せつけてきやがって! ボッチの俺を馬鹿にしてんのか!
「くっそ! 本、来い!」
投げナイフは一旦戻し、ザ・センターの攻撃を鎌でいなしながら右手に本を現出させる。
「【光彩魔法】フラッシュ!」
洞窟の中で光源が強烈な光を放った。直視したらしいザ・センターが思わずといったように仰け反っていき、体も数歩後ろへ後ずさる。もしかして、体の操作権はザ・センターにあるのか?
「ギュルルルルッ」
レフトが視界をやられて手当たり次第に魔法を打ちまくって来た。ザ・センターの攻撃がない分、先程よりもよけやすい。俺はすかさず本と投げナイフを交換した。
「ギュアアア!」
投げナイフを今まさにケルベロスの目へと投げようとした瞬間だった、魔力を溜めていたライトが魔法を発動させる。
魔法によって発生した煙がケルベロスを包んだと思ったら、その煙が晴れた時にはザ・センターたち全員の視界が回復していた。
「目くらましまで治せんのかよっと!」
途端に再開したザ・センターの噛み付きをよける。
他に手はないか……? 【光彩魔法】がダメなら【闇夜魔法】はどうだろう。しかし、残念ながら魔法のリストを開いて吟味する余裕はない。新しく手に入れた【魔導月衝】はどうだ? ケルベロスは三つも首があるが、あれでも単体だ。単体に【魔導月衝】は相性が悪い。
他にめぼしい攻撃方法は思いつかない。
「ッ! いってぇ……!」
考え込んでいたら魔法が当たったらしい。一気にHPが半分を割込み、残り2割というところでやっととまった。一撃でやられなかっただけマシだと思うべきか、レベル差に愕然とするべきか。
「こりゃ勝てないわ」
勝てないとなれば次回の布石を打っておきたいところ。何かできそうなことは……いちかばちだ、【鑑定】を使ってみよう。もしかしたら、何かわかるかもしれない。
「鑑定!」
【鑑定】の効果範囲は手に入れたもの。つまり、モンスターに使ったところで情報など得られない可能性が高いが、万が一ということがある。俺は死に戻り覚悟でケルベロスに触れた。
『死亡しました。「復活の石碑」へ送転します』
無慈悲な言葉を聞いて、俺は暗転した。
まぶたを開けると、最近良く見る街並みが視界に入ってきた。背後には大きな石碑。俺はその石碑の足元に座り込んでいた。
アナウンスの通り、「復活の石碑」に死に戻ってきたようだ。レベルは上がっていなかったので、ケルベロスのところから一瞬で移動することができて得をしたのだと思っておく。そのほうが精神衛生上よろしい。
しかし、俺は1つだけ得たものがあった。それは俺の視界に表示されているウィンドウだ。
【門の番犬・ケルベロス】
人界と魔界とを繋げる門を守る三つの首を持つ犬型の魔物。
門の魔法陣を描いた人物を主人としており、門を使う人の選別をしろという命令に従っている。
使う魔法は火属性、その他に物理、回復も自前で行うことができる。
また、豊富な魔力がある土地にいるため、他の同種体よりも強力な個体となっている。
三つの首それぞれに弱点があり、右耳が半分切れている首は水属性、左目に切り傷がある首は光属性、無傷の首が地属性が弱点。
かなり有力な情報だと思われるが、得られた情報からケルベロスを倒せる算段はつかない。首一つ一つがモンスター1体のようなものだ。バラバラに動くし、弱点も違う。こんなの俺一人では到底倒せそうにない。
「やっと人族の街へ行けると思ったのに……」
いつになったら行けるようになるんだろう。それとも、魔族はずっとソロでいろとでも言うつもりなのだろうか。
思ったよりも強かったケルベロスに打ちのめされていると、誰かが近寄ってきた。振り返ればそこにはダグラスが立っていた。何やら一枚の紙を手にしている。
「おうおう、どうした? また死んだのか?」
ダグラスが手を差し出してきたので、ありがたくその手を握り返した。力強く引き上げられて俺は立ち上がる。
「ケルベロスを見てきたんですよ」
「あの洞窟へ行ったのか。まぁ、今のお前にはまだ無理だっただろう」
「というよりいくら強くなってもアイツの相手は出来そうにないですよ。あれ、パーティーを組んで挑むようなモンスターじゃないんですか?」
「そんなこたぁねーと思うがな。だが、確かに鎌だとやりずらいかもしれん」
ダグラス曰く、槍が一番やりやすいと言う。槍だとザ・センターの噛みつき攻撃を避けてすぐに回復役のライトを攻撃することができるんだとか。ライトは自分を回復することができないらしいので、まず始めに槍でチクチクとライトの体力を削るのが正解らしい。
しかし、鎌だと大きすぎてザ・センターにあたってしまい、ライトまで攻撃が届かない。
「槍に路線変更しろって言うのも酷な話か」
ダグラスはそう言って腕組みをしながら悩みだした。
鎌をメインウェポンにしたのは間違いだったのかなぁ。目的達成の邪魔になるのなら槍にしてしまおうか?
「そうだ! お前、これに興味あるか」
ダグラスはふと思い立ったように、手に持っていた紙を手渡してきた。
受け取った紙の上中央に大きな文字で「招待状」と書かれていた。
「……この度、私レイ・ディドルはかねてより研究してまいりました【空間魔法】のうちの一つ、転移の術を完成させることができました。つきましては、さらなる発展のため、皆様方のお手をお借りしたく、こうして筆を取ることにいたしました」
要約すると、このレイ・ディドル博士が【空間魔法】にあたる転移の術式を完成させたらしい。そしてこの術がどんな人でも扱えるのかを検証するため、博士は街の代表たちに手紙を送り、街一つにつき一人助っ人が欲しいとお願いしている。報酬はその転移の術式、もしくは成功しなかった場合は多額の謝礼金が支払われるという。
「その転移とやら、聞いたところによると「復活の石碑」へ瞬間移動できる類の魔法らしい。どうだ? 気にならないか?」
つまり?
俺が転移の魔法を覚えれば、人界にある「始まりの街」に飛べるようになるということか? もしそうなのだとしたら、願ったりかなったりだ。
「この街の連中はあまり興味がないらしくってなぁ。だがこのレイってやつに媚を売っておきたいと思っていたところだ。お前が行くなら俺としてもありがたいわけだが」
「行きます! むしろ行かせてください!」
ケルベロスを倒すよりずっと確実だ。
「本当にいいんだな? この転移を使って人族の街に行けるとは限らねぇぞ?」
「ですが「復活の石碑」に飛べるんですよね? なら大丈夫ですよ」
「お前がいいなら俺がとやかく言うことはない。ならこの街の代表はキーシュ、お前ってことで返事を出しておく。今から旅の支度を始めるぞ!」
レイ・ディドル博士がいるのはこの街から北へずーーーっといったところにある魔都・ギルガモルに研究所を建てて、引きこもっているらしい。つまり、この招待状を受けるなら魔都まで行かなければならいのだ。
……ん? 北?
「あのー、ダグラスさん」
「あ?」
「北ってたしか鉱山がある方角ですよね?」
「あぁ。ここから魔都に行くにはあの鉱山を通らなきゃいけねぇな」
どうやら、あの牛への再戦は思ったよりも早まったようだ。
旅の支度はすぐに済んだ。坑道を通る以上、徒歩以外の選択肢はないに等しい。一応、騎乗するという選択肢もあるにはあるが、坑道内では馬が邪魔になるし、何より俺に騎乗の経験がない。
荷物も少ない。せいぜい武器を新調したぐらいだ。鎌を以前のものよりも大振りなやつに変えた。
支度よりも時間がかかったのはベヒモス対策だ。ベヒモスが雷のようなものを使ってきたのだが、あれがなんなのか俺にはわからない。魔法なのかスキルなのか、そもそも何属性なのかすらわからないのだ。
しかもあれに当たると一撃で俺は沈む。
そこで思い出した。そういえばこういう時に使えそうなスキルがあるじゃないか。
『【反射跳弾】を取得しました』
もしもあの雷が魔法で、【反射跳弾】が魔法を弾き返せない場合は一度戻ってこよう。というか、強制的に戻されるだろう。
その時は魔法への対抗策を練ればいいということなのだから、無駄な死に戻りじゃない、と思いたい。
◇Player's Status
名前:キーシュ (Lv.100)
種族:魔族
職業:万器使い (Lv.50)
HP:9200/9200 MP:10000/10000
Str:200
Dex:200
Vit:92
Int:200
Agi:200
Luk:3
◇Ability list
・Weapon Skill
【鎌(Lv.MAX!)】【小剣(Lv.15)】
【本(Lv.22)】
・Attack Skill
【投擲(Lv.6)】【魔導月衝(Lv.1)】
【回転旋風(Lv.6)】【反射跳弾(Lv.1)New】
・Support Skill
【烏合一閃(Lv.7)】【知力変換(Lv.9)】
【伸縮自在(Lv.7)】【鑑定(Lv.2)】
・Attack Magic
【火炎魔法(Lv.2 → Lv.4)】【水流魔法(Lv.5)】
【地殻魔法(Lv.2 → Lv.4)】【風雲魔法(Lv.1)】
【光彩魔法(Lv.2 → Lv.4)】【闇夜魔法(Lv.1)】
・Support Magic
【回復魔法(Lv.1)】【付与魔法(Lv.7)】
・Making Skill
【革細工(Lv.3)】【錬金術(Lv.4)】
【採取(Lv.1)】【伐採(Lv.1)】
【採掘(Lv.1)】
~New Ability~
【反射跳弾】(AS):Attack Skill
遠距離攻撃を回転させた鎌で弾き返す。
威力は相手の遠距離攻撃に依存する。
また、効果時間は発動させてから2秒間のみ。
Weapon Skill【鎌】取得者のみ取得可能。




