第1話、閑古鳥が鳴く
気楽に書いて行こうと思います。
誤字脱字などありましたら、ご報告いただけると助かります。
最初は3ページ一気に投稿します。
2015/05/07:職業の説明文を直しました。
2015/05/15:誤字を修正しました。
俺はこれから初めてVRMMORPGに手を出すことにした。
選ぶなら最新のものがいいなと思い、まだ稼働1週間の最新作『Outrageous World Online』を選択。
内容は、よく読んでいないから詳しくは知らないけど、難易度の高いものばかりを製作している会社の最新作なんだとか。やるなら難しいほうがいいよな?
公式が最低限の情報を載せたWikiは、残りの情報は全てプレイヤーが補完していくという意図らしく、未だ製作途中。
しかし、現在稼動中の製品版の前にβテスト版が存在したことから、Wikiにはすでに初心者ページなるものが存在していた。
とりあえず、一週間やってみての評判とWikiの初心者ページを十分に確認した俺は、踊り出しそうなほど心躍る気持ちを押さえつけて、機械の電源を入れた。
『Outrageous World Online』略してOWOは、評判を調べている際に面白いことが判明した。
なんでもこのゲーム、初期ステータスがランダムなのだ。
ステータスは、Str(筋力値)、Dex(器用値)、Vit(生命値)、Int(知力値)、Agi(俊敏値)、Luk(幸運値)の6種類が存在する。初期ステータスでは100pointのステータスポイントがこれら6種のステータスに勝手に割り振られるのだ。
そして、ステータスの値によって選べる職業が決まる。
つまり、このゲームは始めた当初から選べる職業に差が現れるのだ。
そんなことを思い出しながらキャラ作成画面をもう一度確認した。
今、自分で決められるのは名前と性別、そして容姿だ。簡単だからさっさと入力してしまおう。
名前は俺の本名をもじって、キーシュ。
別の自分になれるからといって女になるつもりはないので、男を選択。
容姿は俺の現実世界での姿がベースだ。コンプレックスの身長を少しだけ伸ばす。
これでとりあえず良し。あとは決定するだけだ。
『これ以降、名前、性別、容姿は変更できません。これでよろしいですか?』
⇒ Yes / No
目の前に現れた確認にYesと答える。
『ステータスをランダム作成しています。
Now Loading...』
さて、これで俺のキャラが作成される。
自分の意思でステータスが決定できないのはなんだか斬新だが、それもまた一興。
『ステータス作成が完了しました。職業を選択してください』
ステータスは表示されず、代わりに選択できる職業一覧が出てきた。
剣士や魔法使いといったオーソドックスなものから、魔王まで……魔王!?
いやいやいやいや!
何か変な職業が見えたぞ! なんだよ、魔王って。そもそも魔王は職業じゃないだろ!
もしかして、変なステータスでも引いてしまったのだろうか? もう一度、よく一覧を確認してみる。
一覧の上の方は剣士、魔法使い、鍛冶屋などよく見かける職業ばかりだ。しかし、だんだん下の方へ移動すると死霊術師だとか暗黒騎士だとか、果ては魔王まで怪しさ満点の職業が並んでいる。
これは一体どういうことだ?
こんなもの、ネットで調べた時は出てこなかったぞ。
しかし、試しに下の方を選択してみて、少しだけ仕様がわかった。
『条件を満たしていないため、選択できません』
つまり、今後なれるものも表示されているのだ。
とはいえ、魔王という選択肢が現れてしまっているのも事実……。いや、考えるのはよそう。
いくつか選択してみたところ、現在就職できるのは数種類だと判明した。
俺としては普通に前衛とかをやってみたいなー、と思っていたのだが。こうも暗黒系の職業ばかり出てくると、少しはそっちよりのものを選ばなければいけないのかと思ってしまう。
まあ、無理に暗黒系を選ぶ必要も無かろう。気になったら暗黒系にするかもしれないが、他に気になるのがあればそっちにするし。
ということで、職業は『万器使い』というのを選んでみました。
一応、始める前に調べた時は見かけなかった職業だったから、という安直な理由。ちなみに説明文はこんな感じだ。
<万器使い>
数多の武器を扱うことができる職業。
ある程度の魔法も使用可能。
いくつもの武器を扱えるため、
Dexの伸びが良い。
『この職業でよろしいですか?』
⇒ Yes / No
もう迷いはない。ステータスが若干不安要素ではあるが、そんなものはこれからのプレイスタイルで変えていけばいいのだ。
俺はもう一度職業を見て万器使いが選ばれていることを確認してから、Yesと答えた。
『キャラクターの登録をしています。
Now Loading...
キャラ作成が完了しました。
それでは、Outrageous World Onlineをお楽しみください』
*~*~*~*~*~*~*~*~*~*
目を開けると閑古鳥が鳴いていました。え?
「誰も、いない?」
俺がキャラ作成をするための白い部屋から飛ばされた先は、気色の悪い紫色の雲が空を埋め尽くし、辺りは人よりも大きい岩が転がっている荒地だった。
確かWikiには初めてログインするとキャラ作成の後は「始まりの街」にある「復活の石碑」の前に転送されると書いてあった。なるほど、確かに背後には大きな石碑が立っている。文字が書いてあるが、今の俺には何が書いてあるかさっぱりだ。
そしてその「復活の石碑」は復活という名前の通り、死に戻りする場所でもある。また、「始まりの街」でログアウトした人たちも次のログインではこの石碑の前に転送されてくるという。
つまり、何を言いたいのかというと、
「ここが無人なわけがない」
いくら「始まりの街」なんていういかにもな初心者向けの街だったとしてもだ、ここがそうそう無人になるはずないだろう! 第一、俺のように今日始めた初心者がいないわけでもなかろうに。
しかし、いくら待てども一向に他のプレイヤーは現れない。
「どうなってんだよ……」
いや、とりあえず落ち着け、俺。
誰もいないのはひとまず置いておこう。今の俺がどれだけ考えても情報がなさ過ぎて結論が出ない。なら、今やるべきことがほかにあるはずだ。
「チュートリアルだ。Wikiには初心者はまずチュートリアルクエストをこなせって書いてあったはずだ」
メニュー画面の開き方は至って単純、人差し指を上から下になぞるようにするか、口で「メニュー、オープン」と言うだけでいい。クエストはそのメニュー画面から選べるはず。
「メニュー、オープン」
視界の上から光の文字が降ってきた。文字は目の前で停止する。
上から順番に、Ability、Item、Equip、Status、Systemとなっている。シンプルなメニュー画面だ。そしてわかりやすい。
Abilityはスキルとか魔法とか、要するにプレイヤーの能力的なものを表示するコマンド。
Itemは現在持っているアイテムの一覧を表示するコマンド。
Equipは装備の着脱ができるコマンド。
Statusは俺のステータスが表示されるコマンド。
Systemはパーティーやログアウトといったその他諸々が操作できるコマンド。
そして、クエストというのはSystem内のQuestというコマンドで一覧を見ることができるらしい。さっそくSystem、Questと選んでみる。すると、現在受けているクエストの一覧が出てきた。
◇Quest list
・ステータスを確認してみよう! New!
・装備品を着てみよう! New!
・日記帳を確認しよう! New!
・アビリティを取得してみよう! New!
・戦闘をしてみよう! New!
現在は五つのクエストが受注された状態のようだ。一つ一つに説明文があるようだが、名前だけで十分何をすればいいのかわかるので省略。
何はともあれ、まずは上から順番にこなしてみることにしよう。
◇Player's Status
名前:キーシュ (Lv.1)
種族:魔族
職業:万器使い (Lv.1)
HP:400/400 MP:2900/2900
Str:20
Dex:36
Vit:4
Int:28(+30)
Agi:9
Luk:3
ピロロ~ロン、という軽い電子音が響き、視界の端にQuest Clear!という文字が浮かんだ。これで一番上にあった「ステータスを確認してみよう」のクエストを完了したのだろう。
が、待ってくれ。
俺は見逃さなかったぞ。
なんだよ、魔族って! 聞いたことないんですけど!
このゲームには種族という特殊設定があることは知っているが、人族からのスタートじゃなかったのか!? 絶対に職業に魔王って選択肢があったの、これのせいだろ!
それと! ステータスの偏り具合なにこれ!? MPとHPがおかしいことになってんだけど!
本当ならチュートリアルを終わらせるまではWikiや掲示板には頼らない気でいたが、これは一大事だ。四の五の言っている場合ではない。
俺はすぐにクエストの確認もせずに、SystemからNetを選んだ。
「困ったときのWikiさん、頼むから俺に情報をくれ……!」
ブックマークからOWOのWikiを呼び出し、速攻アクセス。そして迷わず初心者ページを開いた。
本当、このWikiを補完しようと頑張ってるプレイヤーのみなさんには頭が下がる。
~初心者ガイド~
Outrageous World Onlineへようこそ!
ここは公式が用意してくれなかったため、有志のプレイヤーたちの元、新たにやってくる新規プレイヤーたちのために立ち上げた初心者のためのページである。
初心者はキャラ作成が終わったあと、チュートリアルクエストをこなしてもらうのが一番手っ取り早い。クエストはメニュー画面のSystemにあるQuestという場所に一覧があるので、そちらを参照されたし。
初心者がいるのは「始まりの街」と呼ばれる、プレイヤーが一番最初に訪れる街である。
この街では初心者が旅立つまでに必要なありとあらゆるものがそろっている。初心者はまずは「始まりの街」を拠点にして、資金稼ぎ、装備品と消耗品の充実、そして戦闘の仕方などを覚えること。戦闘の仕方については、街にある冒険者ギルドに入り、ギルドの戦闘指南を受けるのがわかりやすいだろう。
※ただし、種族がエルフ族、獣人族の場合は別々の「始まりの街」が存在する模様。冒険者ギルドは人間の作り出した組織なので、エルフ族と獣人族の「始まりの街」にはないので注意されたし。この件については、まだ情報不足であるため、随時情報提供者を募集している。
不穏な言葉の羅列だった。
収穫としては、人族以外にも種族が存在しているということがわかった点だろう。エルフ族、獣人族、そしておそらく今OWO内で唯一俺だけが所属しているらしき魔族。
この3種族にはそれぞれ別の場所に「始まりの街」が存在しているらしい。
「とすると、ここは魔族の「始まりの街」なわけか」
我らがWikiさんにも魔族が載っていないのだ。これはもしや本当に俺しかいない?
嘘だろ、嘘だと言ってくれ。
「掲示板も見てみよう」
悲観的になるのはまだ早い。もしかしたら、少ないだけで魔族だっているかもしれないじゃないか!
俺はブックマークから今度はOWOの掲示板を呼び出した。
HPはVit×50、MPはInt×50で計算しています。
ご質問ありましたら、お気軽にお申し付けください。
2015/05/10:Vit×50だとHPが低すぎるのでVit×100に直しました