表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋姫†物語  作者:
「短編集」
2/11

「ある日の桂花2」

※この話は前回の続きでは無く、萌将伝での『目覚めた恋心』の続きとなっております。


ある日の朝、一刀は焔耶の部屋から出て来た。

そしてその数分後、焔耶も部屋から出て来た。

赤らめた頬を緩ませて照れくさそうな顔をしたまま。


そんな彼女の後姿を通路の影から見つめる瞳があった。

憎々そうに、それでいて何処か悔しそうな気配を漂わせながら。

当然、そんな気配に気付かない焔耶ではない。

すぐさま鈍砕骨を構えながら後ろに振り向くが其処に居たのは……


「誰だっ!其処に隠れているのは…って、お前は桂花か?」


そう、其処で通路の影から覗き見る様に顔を覗かせていたのは桂花であった。


「何だ、その目は?ワタシに何か用なのか」


「……アンタ、何を考えてるのよ。よりにもよってあんな男と夜を共に過ごすなんて。しかも何なのよ、そのデレデレした顔は!?まるで恋する乙女の様じゃない!解ってるの、アイツはただの種馬で、あちこちの女に手を出しまくっている節操の無い優柔不断男なのよ。それにアンタはあんなにあの男を毛嫌いしてたじゃない。恥を知りなさい、恥を!」


桂花は通路に飛び出すと焔耶を指さしけたたましく叫び出す、その顔は何故か真っ赤だが。

そんな桂花を見つめた焔耶は「は~」と一つため息を付くと彼女に語りかける。


「…本音は?」

「ズルイじゃないっ!何よ、何でアンタだけっ!………はっ!?」


しまったと、顔を赤らめ口を抑えるがもう遅い。焔耶はそんな桂花を微笑ましい目で見つめる。


「な、何よ、何なのよその目は!?」

「素直になれ、素直になれば楽になれるぞ。今のワタシの様にな」

「う、うう~」

「ワタシは自分の気持ちに気付いて素直になったぞ。ワタシはお館が好きだ、そしてお館もワタシを好きだと言ってくれた」

「わ、私が好きなのは華琳様よ」

「ワタシだって桃香様が好きだ。だがお館が好きだという気持ちも偽りでは無い」

「うう、ああ言えばこう言う」

「ちなみにワタシはお館に服を買って貰ったぞ。しかも可愛いと言われた」

「何ですってぇーーーーーーっ!」


照れて頬を赤らめている焔耶とは違い、桂花の方は別の意味で真っ赤だった。


(何よ何よ、服を買って貰った上にか、可愛いって言われたですってぇ~~。う、う、う、羨ましいっ!じゃあ何?私も素直になれば服を買って貰って、か、か、可愛いって……」

「そう言う事だな」

「な、何で人の心が読めるのよ!?」

「いや、口に出てたぞ」

「ど、どの辺りから?」

「服を買って貰っての辺りから」

「~~~~~~~~~~~~!」


膝を付き、肩を落として落ち込んでいる桂花の肩を焔耶は優しく叩いてやる。


「もういい、お前は良く頑張った。だからもう素直になってしまえ」


そして項垂れていた桂花の出来る事はただ静かに頷く事だけだった。




―◇◆◇―


「ちょっとアンタ、少し付き合いなさい」

「ん、どうした桂花?」

「いいから来なさい!」


一刀が桂花に連れられてやって来たのは先日焔耶の服を買った店であった。

店の店主は一刀を見ると「これはこれは」と言った感じで2828していた。


「さあ、選びなさい」

「な、何を?」

「此処で選ぶと言ったら服しかないでしょ、そんな事も分からないの!?」

「華琳の?」

「私の服よ!」

「桂花の…服を?」

「何よ、嫌なの?……」


桂花は少し涙ぐみ、脹れっ面で一刀を睨みつけるが一刀は一刀で何か落ち着いた表情で店主の方に目をやる。そして、


「親父」


一刀はそう呼ぶとパチンッと指を鳴らし、店主も「へい」と答えると店の奥に消えていった。


「何なの?」


桂花は不思議そうに小首を傾げており、暫くすると店の奥から店主が一つの箱を持って来た。


「御遣い様、これがご注文の品です」

「ありがとう」


一刀は店主から箱を受け取ると桂花に向き直り、桂花は箱と一刀を交互に見ながら怪訝な表情で聞く。


「何なのよこれは?」

「ふっふっふっ、これか?これはな」


一刀は笑いながら箱を開き、中身を取り出すと彼女の前にそれをかざした。


「『こんな事もあろうかと』俺が桂花の為に衣裳を凝らした服だ!」


そう叫ぶ彼の後ろには某不沈戦艦の技師長の姿が見えていたとか。

桂花は呆然としながらも一刀の手の中にある服を見つめていた。


(私の為?私の為にわざわざ服を?一刀が私の為に……)


「桂花?」


そんな桂花の目は徐々に潤みだし、そして一筋の涙がその頬を流れた。


「着てくれるか?」


桂花は一刀から服を受け取り静かにコクンと頷くと試着室へと歩いて行き、着替えている最中、一刀は店の中をウロウロと歩きまわっていた。


「御遣い様、少し落ち着かれては」

「分かっちゃいるけどな、桂花があの服を着てくれると思うと落ち着かなくてな」


そんな問答を繰り返していると、着替えた桂花がやって来た。


桂花が着ている服、それは白を基調としており映画に出て来る様な令嬢が着ている感じの服で、肘まである薄手の手袋とつばの広い帽子もかぶっていた。


「ど、どうよ…」

「か、か、か……可愛い…」

「~~~~~~~~!」


一刀は真っ赤になって照れて、帽子で顔を隠している桂花の手を掴むと店の外へと歩き出す。


「ちょ、ちょっと、何処に行くのよ!?」

「折角だからこのままデートをしようぜ」

「で、で、でぇとって…誰かに見られでもしたら」

「その時はその時、別に隠す事じゃないだろ。じゃあ親父、ありがとな」

「へい、また何時でもどうぞ」


一刀に手を引かれながら街中を歩く桂花、帽子で顔を隠していて、桂花も別に嫌がる事無く大人しく付いて行くので住人達はそれが桂花である事には気付けないでいた。


(こんなのも悪くないな。これからはもう少し素直になってみようかな)


そんな事を思う桂花だった。

そして、暫くデートを楽しんだ二人は街で食事をした後、城に帰ったが一刀はそのまま桂花の部屋まで付いて来た。


「ちょっと、アンタまさか…」

「夜はまだまだこれからだろ?」

「………馬鹿…」


耳まで赤くした桂花はそう呟きながら部屋の扉を閉める。




そして翌日。


一刀はすっきりした笑顔で桂花の部屋から出て来て、その数分後桂花も顔を赤らめつつ幸せそうな笑顔で部屋から出て来た。

そんな桂花を見つめる四つの瞳……

気配を感じた桂花が振り返ると其処にはねねと詠の二人が居た。

憎々そうに、それでいて何処か悔しそうな気配を漂わせながら。


「何よ、二人共?」

「お前は一体何を考えているのですか!?」

「そうよ、よりにも寄ってあんなチ○コ太守相手にそ、そんな…こ、恋する乙女みたいな顔をして!恥を知りなさいっ、恥を!」

「…本音は?」

「「ズルイじゃないっ(のですよ)!何であんただけ…、はっ!」」


慌てて口を塞ぐ二人を見て桂花は……


「素直になっちゃえば♪」


輝く様な笑顔でそう言ったとさ。



~おしまい~

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ