ヨシヨシ誕生。
「ここが、この村の広場ですわ」
警護者も勿論従え、クレイドルたちは聖護邸を出て、徒歩十分のレインレイン村の村広場にやって来ていた。
そこの真ん中には噴水が設置しており、西洋風の家が一列に並んで両脇に立っている。
「ルイちゃんだー!!どうしたの??このお兄ちゃんだあれ??」
すると、噴水の側で遊んでいた小さな女の子がとてとてとクレイドルに近寄ってきた。
「あら、ごきげんよう、リナリナ。このお兄ちゃんは、メイメイが連れてきた違う世界のお兄ちゃんよ。これから、ここに住むのよ」
クレイドルはやって来た女の子の目線の高さに合わせるようにしゃがむと笑顔で吉人のことを噛み砕いて紹介する。
「へえ~、お兄ちゃん、メイちゃんのお友達なんだぁ!じゃあ、挨拶しないとね!こんにちは、わたしはリンリンです!よろしくね!」
リンリンはにっこり可愛らしい笑顔を吉人に向けた。
「吉良沢吉人です。よろしく」
吉人も一応、頬がひきつっているが笑顔を浮かべ自己紹介をした。
「じゃあ、ヨシヨシだね!」
「ぶっっっ!!!!ヨッヨシヨシって・・・!」
リンリンが勝手に命名した名前にルンルンは吹き出した。
なんだか、まぬけっぽい。
「ほっ、他に良い名前ないの?」
さすがの吉人でも笑って誤魔化せない許せない何かがそこにあった。
「あら、可愛いじゃないの!リンリン、なかなかやりますわね」
「へっへーん」
しかし、本人の意志は完璧に無視して女の子二人は納得している様子。
しかも、一方はこの村の村長だ。
「はっはぁ~、もーいいんじゃない?ヨシヨシで」
ルンルンは笑いすぎて出てきた涙を拭いながら、二人に賛同した。
「ちょっ、それは!さすがに!!」
必死の形相で吉人は決定的不利な状況に抵抗する。
「そっかぁ~残念だねぇ。お兄ちゃんが嫌だって言うなら諦めるよ、リン」
そんな様子の吉人を見て、リンリンは流石に哀れだと思ったのかしょげながら、折れた。
「あっありがとう、リンちゃん・・・・」
あんまりにも、変な名前にされなくて良かったと本気で安心した。
「残念ですわ!可愛らしかったのに。でも、どっちにしても戒名しなければいけませんわ」
リンリンが折れたことにより、クレイドルも諦めた。
しかし、さらなる危機が迫っていた。
「そうなの!?」
「ええ。私は村長なので特別こういう名前で許されているのですわ。でも、他の村の皆は必ず前の言葉を重ねなければなりませんの。だから、吉人君もこの村に住むのなら戒名しなければいけませんわ」
どっちにしろ、吉人に選択の余地はない。
元いた世界には、メイメイが帰ってくるまで帰れないし、他に行くとこもない。
・・・腹をくくるしかないようだ。
「・・・分かりました。ヨシヨシでお願いします」
どっちにしろ、これ以上変な名前が出てきてもらっては困る。かといって、これ以上の名前は浮かばない。なら、可愛らしい女の子が言ってくれたそれにしよう。
そう、思ったのだ。
ルンルンに任したら、大変な名前になりそうだし。
「やったあ、リンが名付け親だぁ!」
「よかったわね、リンちゃん。でも、吉人君はそれでいいのかしら?」
「はい、いいです」
・・・こうして、この村に『ヨシヨシ』村人が誕生した。
ヨシヨシ誕生です。
リンリンちゃんが名付け親です。あんまり、納得はいってなさそうですが。でも、仕方ないですね。
ということで、吉良沢吉人改め、ヨシヨシ少年をよろしくお願いします!




