傷の過去
ケンちゃん、 ケンちゃん。 あなたは今、私をどんな風に見ていますか。私は、あなたに会えなくなってもう一年も経つというのに、好きが減るばかりか増す一方です。 ねえ、会いたいよ。 …そんなこと、思うことすら我儘になるのかな。
月をも隠す厚く大きな雲が、空を覆った。
それは途切れることなく
彼女の瞳に一筋の光さえも映すのを許さないかの様だ。
彼女、フカガワ ミノリは今夜も眠れない夜を過ごす。
こんな暇な時間は誰かにメールするよりも、電話をするよりも、ボロボロになったノートに思いつくまま言葉を並べた方が、とても良い暇つぶしになった。
自分が眠れない理由なんか随分昔に忘れてしまった。
それは手首に残る傷跡のみが、知っている。
‥それでいいのだ。
「ミノリ、またクマ出来てる」
「…いいよ、もう」
そんなんだから恋人出来ないのよ、と呆れながらカホは言った。
カホはギャルど真ん中って感じの女の子で、以前は似たような子が集まるグループに居たのだけれど、馬が合わなかったのかこうしてミノリと行動するようになった。
「あ、そういえば〜さっきナカタニ君がミノリ探してたよ」
「誰?それ」
「うわ、ミノリやばいよ。ナカタニ君て有名じゃん!」
答えになってないよ、とミノリは小さく思った。
噂では確かに何度か耳にしたことがある名かもしれないが、彼とは何の接点も無かったので何かの間違いだろうとあまり気にしなかった。
「どうする?コクられたらさ」
「どうもしないよ」
「もー。ミノリって話が盛り上がらない」
今でもあの頃みたく好きだと言えますか。
本当に、もう誰かに心奪われるような あんな気持ちにはならないだろう。
いや、なってはいけないんだ。
駄文なのですが、読んでいただきありがとうございます!感想などありましたら気軽にどうぞ。