婚約破棄の理由を聞いてくれ
名前を借りました
「お前とは婚約破棄する!」
私の婚約者であるクヌム殿下が言った。
「そうですか。では」
私は礼をして、帰ろうとした。
「ちょっと待て」
クヌム殿下が引き止めた。
「婚約破棄は承りましたが、まだ何か?」
振り返った私は、首を傾げた。
「理由を聞かないのか?」
クヌム殿下が言った。
「聞きません」
キッパリと言った私に、クヌム殿下は怪訝そうな顔をする。
「は?」
「婚約破棄は承りました。では失礼します」
「待てよ!理由を聞け」
焦ったようなクヌム殿下。
理由は知っている。男爵令嬢ラーと良い仲になったからだ。
つまり浮気だ。
浮気相手のラーをいじめたとか冤罪を掛けて、私と婚約破棄するつもりなのだ。
だから、理由は聞かない。
「殿下が決断された事です。文句はありません」
「いや、だから…」
「失礼します」
「理由を聞けよ!」
しつこく迫るクヌム殿下。
「家族に婚約破棄を報告しますので」
「だから理由を…」
「婚約破棄は変わらないのでしょう?」
理由を聞こうが聞くまいが、婚約破棄は変わらない。
「変わらない」
「それなら理由など必要ないではないですか」
無理矢理、理由を作らなくても良い。
婚約破棄はしたいのは変わらないから。
理由なんてなくても良いじゃない。
「だから…」
「急ぎますので」
「逃げるのか?」
しつこいなぁ…
「婚約破棄できたんだから、それで良いでしょう」
「本当に婚約破棄して良いのか?」
まさか、縋りつかれるとでも思っているの?
「構いません」
むしろ、別れたい。
「はぁ?どうして?」
驚くクヌム殿下。
「執務を放置して私に押し付け、浮気していた方と結婚したくありません」
「はぁ?」
「婚約破棄してくださりありがとうございます」
「はぁ?」
「もう殿下の執務も尻拭いもしなくて済むのですね!ありがとうございます!」
ニッコリ笑う。本当に婚約破棄できて良かった。
「何だと!?」
「それでは失礼します」
「待てよ!理由を聞け!」
クヌム殿下が喚くが、私は無視した。
「理由を聞けよ!」
クヌム殿下の言葉は虚しく消えた。
そして、私は冤罪を掛けられる事なく、婚約破棄は成立した。
勝手に王命の婚約を破棄したクヌム殿下は、浮気相手と共に離宮に幽閉された。
私は新しい婚約者と幸せに過ごした。
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