ノアル、入れ替わってるぅ~!?
前回のダイジェスト~。
ソフィは、ちっちゃいオジさんにビビっていた。
謎のもじゃもじゃした生き物は、「ですぞ~」とは言わなかった。
ユウコはエッフェル塔に登ろうとした。
「オ、オマエ……コロス……」
(え? もしかして……)
ソフィは慌てて、自分の顔や身体をペタペタと触る。
(や……やっぱり、私……ちっちゃいオジさんになってる!!)
「ハーッハッハー! 気付いたようだな!」
カイ・ウーボは満足げに笑った。
「俺の《シャッフル・イリュージョン》は、ペイント弾が当たった者同士の魂を入れ替える能力! これでお前たちは、俺に勝つことなどできない!」
どういう理屈なのかはともかく、カイ・ウーボは親切にも自分の能力を解説してくれた。
「俺はお前たちの命を奪い……そして、そして……莫大な賞金を手に入れてぇ……その賞金で南の島に別荘とか建てちゃってぇ……」
カイ・ウーボは人目も憚らず、妄想を膨らませている。
「南の島で毎日バカンス……。ブツブツ……ブツブツ……」
しかし、そんなことに興味を持つ者は誰もいなかった。
(だ……誰が誰と入れ替わってるの!?)
ソフィが周囲を見回していると、やがてリンディがゆっくりと起き上がった。
そして──
両手を地面につき、カエル座りをする。
(え?)
嫌な予感がした。
「ゲコ……ゲコゲーコ!」
(ま、まさか……)
そう。ウシガエルの魂は、リンディの身体に移っていた。
(じゃあ……リンディさんは!?)
ソフィが恐る恐る視線を向ける。
「もじゃ、もじゃ!もじゃぁ~! もじゃ?」
そこにいたのは、謎のもじゃもじゃした生き物だった。どうやらリンディの魂は、その身体に入ってしまったらしい。
「あれ? 一体、何が起こったもじゃ?」
今度は、ソフィの身体がゆっくりと立ち上がる。
(え……まさか……)
「何だもじゃ? ワイのフサフサした毛がないもじゃ」
(謎のもじゃもじゃした生き物の魂が、私の身体に入ってるぅー!?)
そう。もじゃもじゃの魂は、ソフィの身体に入っていた。
(ということは……ノアルさんは……?)
ソフィはハッとする。
(入れ替わってるはずだから……ノアルさんの魂は、ウシガエルに!?)
──ストップ、ストッ~~プ!!
いやいやいや! ワケが分からんわ!
なんで6人を一気に入れ替わらせるの!?
こういうのって、普通は2人とかじゃないの!?
ん、もう! タカシったら~!
(↑誰!?)
【現在の魂と身体の組み合わせ】
ソフィの魂 → ちっちゃいオジさんの身体
リンディの魂 → 謎のもじゃもじゃした生き物の身体
ノアルの魂 → ウシガエルの身体
ウシガエルの魂 → リンディの身体
謎のもじゃもじゃした生き物の魂 → ソフィの身体
ちっちゃいオジさんの魂 → ノアルの身体
──以上!
それでは、続きをお楽しみくださ~い!
(↑誰なの!?)
「ハーッハッハ! 新しい身体はどうかな!?」
カイ・ウーボが高笑いする。
すると、ソフィの身体に入ったもじゃもじゃが、拳を握りしめた。
「何だかよく分からないもじゃが……きっと、アイツを倒せばいいもじゃ!」
そして、カイ・ウーボを指差す。
「ワイのスキル、《もじゃもじゃ針千本》を食らわせてやるもじゃ!」
説明しよう!
《もじゃもじゃ針千本》とは、身体を覆う毛を針のように硬質化させ、一斉に放出するスキルである。刺さったら、ものすごく痛いのだ!
しかし──
「は……!」
もじゃもじゃは、自分の腕を見つめた。
「毛が……毛がない……だと!?」
ペタペタと腕を触る。
「やっぱり……ない……もじゃ。毛がないなら……無理もじゃ……」
ガックリとうなだれ、頭を抱える。
その瞬間──
「あ……! あったもじゃ!」
(え……?)
ソフィの胸に、猛烈な嫌な予感が走る。
「これなら……いけるもじゃ!」
もじゃもじゃは、自分の頭を撫でた。
「この頭の毛を放出するもじゃ!」
(だ、だめぇぇぇ~!! それだけはやめてぇぇぇー!!)
ソフィは必死に叫ぶ。
「オマエ、コロス!!」
しかし、思いは伝わらない。
ソフィは走り出した。
何としてでも止めなければ……。
自分の身体から、頭髪がすべて失われてしまう!
しかし──
ちっちゃいオジさんの身体では、走っても、走っても、なかなか距離が縮まらない。
(間に合わないぃぃぃ!!)
「食らうもじゃ!」
もじゃもじゃが、ソフィの身体の頭に手を添える。
「《もじゃもじゃ針千本》!!」
(いやぁぁぁぁぁー!!)
次の瞬間。
──シーン……。
何も起きなかった。
「…………もじゃ?」
もじゃもじゃが、不思議そうに首を傾げる。
ソフィもまた、呆然とその光景を見つめていた。
「ハーッハッハー! 魔法やスキルは、精神と肉体が調和していなければ発動できない! つまり……お前たちは、何の抵抗もできないまま、俺に殺されるのさ」
冷たい笑みを浮かべ、カイ・ウーボは銃を構えた。
(一難去って、また一難……いえ、絶体絶命の大ピンチ……)
ソフィを絶望が包み込む。
魔法もスキルも使えない。
元の身体に戻ることもできない。
このままでは、全員まとめて殺されてしまう。
そのとき──
「それは……どうかな!」
カイ・ウーボの背後から、声が響いた。
「!?」
振り返ったカイ・ウーボの目に、人影が映る。
(ノアルさん……!)
ソフィは思わず目を見開いた。
(……いえ、違う! 今は、ちっちゃいオジさん!)
ノアルの身体に入った、ちっちゃいオジさんが立っていた。
「ふん! 強がりはよせ! お前から始末してやる!」
カイ・ウーボは鼻で笑い、銃を構えた。
ドン!
ドン!
ドン!
3発の弾丸が、ちっちゃいオジさんめがけて飛んでいく。
しかし──
ヒュン!
ヒュン!
ヒュン!
ちっちゃいオジさんは、まるで弾丸の軌道が見えているかのように、軽々とかわしていく。
「な、何だと……!?」
カイ・ウーボが驚愕する。
ちっちゃいオジさんは、そのまま一気に間合いを詰めた。
「俺は……ノアルが生まれたときから、ずっと一緒だった……。嬉しいときも、悲しいときも……ずっとノアルのそばにいた。だから……」
ちっちゃいオジさんが拳を握る。
「俺は、ノアルのことを誰よりも知っている!」
ちっちゃいオジさんは、ノアルの身体に宿る力を感じ取っていた。まるで、それが自分自身の力であるかのように。
「そして、この身体の力も……俺なら使える!」
「そ、そんな馬鹿な!」
「食らえぇぇぇ!」
ちっちゃいオジさんが腕を突き出す。
「ユウコ、タイセイヨウヲオヨイデワタル!!」
ドォン!
ノアルの超能力が炸裂した。
しかも、いつものノアルが放つものとは、比べものにならない。ちっちゃいオジさんの精神力が、ノアルの超能力をさらに強化していた。
「ぐぇ、ギョぇぇぇぇぇ!!」
カイ・ウーボの身体が宙に浮き、猛スピードで吹き飛ぶ。
ズガァァァン!!
勢いよく岩壁へと叩きつけられた。
「ぐ……」
そして、カイ・ウーボは気を失った。
「…………」
静寂が訪れる。
その直後、ノアルたちの身体から、まばゆい光が放たれた。
(な、何!?)
ソフィが目を細める。
光は次第に強くなり、辺り一面を白い光が包み込んだ。
「……あ……」
しばらくして、光が消える。
ソフィは自分の手を見つめた。
見慣れた、自分の手。
「……あ、あ……」
恐る恐る声を出す。
「声が……出る……」
ソフィは自分の顔や身体をペタペタと触った。間違いなく、自分の身体だった。
「戻った……!」
周囲を見渡すと、みんな思い思いに自分の身体を確めている。
どうやら、全員の魂が元の身体へと戻ったらしい。
ソフィは、ホッと胸を撫で下ろした。
「よ、よかったぁ……」
長かった魂の入れ替わり騒動は、こうしてようやく終わりを迎えたのだった。
にこにこと笑いながら、ちっちゃいオジさんの後ろを歩くソフィ。
「ソフィさん、どうしちゃったんですかね?」
ノアルが不思議そうに、リンディに尋ねる。
「う~ん、ちっちゃいオジさんと入れ替わって、気持ちが分かったんじゃない?」
(ちっちゃいオジさんは、ノアルさんをずっと見守ってきた、本当に心優しい人。そして、入れ替わってみて分かったわ。『オマエ、コロス』としか言えない、もどかしさを……)
ソフィは、少しだけちっちゃいオジさんのことを理解できた気がした。
「オマエ……コロス……」
ちっちゃいオジさんは、背後から感じる笑顔に、言い知れぬプレッシャーを感じていた。
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