異世界に召喚される
少しでも笑っていただけたら、嬉しいです。
現代・日本。
「あれ? いないわね。てっきり庭にいるかと思ったのに……」
庭を覗くと──
すべてのアリの巣穴に、棒が突き刺さっていた。
「……」
母親は小さくため息をつく。
「どこにいったのかしら……? また能力を使ってないといいけど……」
そう呟き、母親がウッドデッキを見ると、一枚の紙が置かれていた。
『ごましお』
ヒュー……
冷たい風が吹き抜ける。
「あなたと同じで、正義感の強い子だから……。でも、大丈夫よね」
母親は空を見上げた。
「何かあっても、守ってくれる──」
◇
異世界。
「やった……やったわ!」
いかにも魔女といった風貌の少女が、両手を掲げて歓声を上げた。
「ついに……異世界に通じる扉を開くことができたのよ!」
興奮した様子で魔法陣を見下ろす。
「さあ……10年前、この世界を救った“救いの女神”を召喚するわ!」
少女は深く息を吸い、呪文の詠唱を始めた。
すると──
魔法陣の中央に、ゆらりと人影が現れる。
現れたのは──
少女だった。
「……え?」
魔女の少女は目を瞬かせる。
「あなた……誰?」
沈黙。
ハイ!
ちょっとストーップ。ストーップ!
今の場面を確認しようか。
魔女の少女?
……重複してない?
少女と少女だと、わかりにくいし。
もう、“甲”とか“乙”とかにしちゃう?
『現れたのは──
甲だった。
「……え?」
乙は目を瞬かせる。』
いやいやいや、余計わからんわ!
どうしよう……
どうしよう……
どうしよ平八郎の乱!!
大根・乱♪
……大混乱だよ!!
――地の文が混乱している。
……って、「地の文が混乱している」って言ってるのは、地の文なの? 誰なの?
……って、「『地の文が混乱している』って言ってる」って言ってるのは、地の文なの? 誰なの?
……って、「『地の文が混乱しているって言ってる』って言ってる」って言ってるのは、地の文なの? 誰なの?
……
……もう、魔女と少女でいいよね。
ハーイ、話を戻しまーす。
(↑結局、誰なんだよ!?)
「あなた……誰?」
「そういうあなたこそ誰よ! ここどこ!?」
召喚された少女が声を上げた。
再び沈黙。
「……フゥー」
魔女はため息をつく。
「どうやら失敗のようね……。何も見なかったことにしましょう」
完全に無視した。
「えぇ!? 勝手に呼び出しておいて……。ムキィー! 私、怒るんだからぁ!!」
少女が叫んだ瞬間──
部屋の中の物がガタガタと震え始める。
机が浮き、椅子が浮き、本が宙に舞った。
「こ、これは……ま、魔法……!?」
魔女が息をのむ。
そのとき──
てくてくてく、と小さな人影が歩いてきた。
「……!」
魔女の目が見開かれる。
そして、震える声で言った。
「ち、ちっちゃいオジさん!!」
「……!」
召喚された少女も驚く。
「な、なんで……なんで、あなたがオジさんのことを……」
「オマエ、コロス……」
◇
「私の名前はリンディよ」
魔女が言った。
「私は希歩。松下希歩よ」
召喚された少女が答える。
「ノ、ノアル……」
「あー! あなたも私の名前をキラキラだって言うのね! 私、この名前気に入ってるんだから! ムキィー!」
ノアルが膨れっ面で言う。
「いえ……違うのよ……」
リンディは俯いた。
「私の友達の名前に……似ていたから……」
それを見たノアルが話題を変える。
「ねぇ、あなた……なんで、ちっちゃいオジさんのこと知ってるの?」
リンディは静かに答えた。
「ちっちゃいオジさんは、10年前に私の友達を救ってくれたの。ジャギーさんと融合したと聞いていたから……もう会えないと思っていた」
「融合……?」
ノアルは首をかしげる。
「じゃあ、ちっちゃいオジさん違いかも。このオジさん、生まれたときから私のそばにいる人形なの」
「人形!? もしかして……この世界に来たせいで、魂が宿った……?」
Tシャツにふんどし。
そんな姿のちっちゃいオジさんは、コマのようにクルクル回転していた。
そのとき──
ドガーン!
外から爆発音が響いた。
「な、なに!?」
「またアイツね……。悪の魔法使いビックラ・コイターナよ」
そう言ってリンディは外へ駆け出す。
ノアルとちっちゃいオジさんも後に続いた。
◇
「フョーッフョーッ。リンディ……」
黒いローブの魔法使いが、不気味に笑う。
「こんなところにいつまでもおらず、早くワシらの仲間になるフョ」
「ふん。誰があなた達の仲間なんかに!」
リンディは杖を構え、呪文の詠唱を始める。
その横で──
ちっちゃいオジさんは、フラフープを回していた。
「そうか……。ならば、実力行使だフョ」
ビックラはフョフョ笑いながら呪文を唱える。
「炎よ、すべてを焼き尽くせ! 《フレイム・ファング》!!」
一足早く、リンディの呪文が放たれた。
しかし──
「フョーッフョーッ。そんな呪文は通じんぞ」
ビックラは、あっさりと魔法を打ち消す。
「くっ……やっぱり、私だけの力では……」
そのとき──
ビックラがノアルに気付いた。
「ほう……仲間かフョ。ならば──人質に」
ビックラがそう言った瞬間。
ノアルがビシッと構えた。
「受けてみなさい! 私の必殺技!」
リンディは思った。
(え、必殺技……?)
「《スターライト・エクスプロージョン・ファイナルデストロイ・サンダー・ブリザード・プレッシャー・モダンスタイル──」
リンディは思った。
(長い……)
「──バーニング・エグゼクティブ・トランジション・ユウコハアイツガスキナンダ・サトルハユウコノコト──」
ビックラは思った。
(今のうちに攻撃できるけど……)
一瞬考える。
(……さすがに卑怯かな……)
そのとき──
ちっちゃいオジさんが気付いた。
ビックラが隙だらけなことに──。
オジさんは静かに構える。
そして──
全力でダッシュ。
高く飛び上がり、くるくる回りだす。
回る。
回る。
回る。
「オマエ、コロス!!」
ドッガァァァァン!!!
ちっちゃいオジさんの“ローリングふんどしアタック”が炸裂。
「フョーッ! 『行けたら行く』って言うヤツは、大体来ないフョー!!」
ビックラは謎の言葉を残し、遥か彼方へ吹っ飛んでいった。
ノアルがポーズを決める。
「ふん! 私の必殺技が決まったようね!!」
リンディは思った。
(一番怖いの、この子かもしれない……)
ちっちゃいオジさんは、バク転をしようとして、失敗していた。
「オ、オマエ……コロス……」
「『5歳の見習い魔女ノアールの冒険』の続編ですよ、皆さ~ん! 前作から10年後の世界を描いています」
嬉しそうな多田笑。
その横には、ちっちゃいオジさん。
「皆さんが、ちっちゃいオジさんに会えて嬉しいって」
「オマエ、コロス……」
ちっちゃいオジさんが照れながら言う。
「じゃあ、ちっちゃいオジさんから、皆さんに何か一言」
「オマエ……コロス……」
「え、前作では、リンディと会ったことがないはずだって!? そ、そんなバカな……」
慌てて、スマホで確認する多田笑。
「ホ……ホンマや……!!」
多田笑、驚愕。
ちっちゃいオジさん、驚愕。
沈黙。
そして、見つめ合う二人。
「……というわけで、次回もお楽しみに!」
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