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珈琲を焙煎してたら恋琲になっていました  作者: エンザワ ナオキ
住み込みバイト編

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第85話 突然の終わり

 午前11時過ぎ……。

 外は燃えるような酷暑……。


 俺は、実家に蜜柑みかんを置いて、『alive』へ戻った。

 

「ただいまー」


「おかえりなさい!」


 俺が『alive』に着くと、桃果とうかちゃんがパタパタと出迎えてくれた。


「つばささん……今日、さっそくこの服着てみたんです!」


 桃果ちゃんの服装を確認すると、綺麗な緑のワンピース。

 昨日、俺がプレゼントした洋服である。

 その洋服に、白い花の髪飾りを着け、俺の帰りを首を長くして待っていたようだ。


「おぉ、早速着てくれたんだ! すごく似合ってるよ」


「はい!」


 桃果ちゃんが、満面の笑顔で返事をする。

 相当嬉しかったのか……プレゼントした甲斐があったというものだ。


「あれ? 蜜柑さんはどうしたんですか?」


「み、蜜柑は、俺の妹に捕まったよ」


「え? つばささんの妹に捕まった……?」


 そういえば桃果ちゃんには、俺の妹がコスプレをしていて、蜜柑もそれにハマっていることを話していなかったっけ。


「前にも、酔ってうちに泊まったことがあるんだよ……。その時に仲良くなったみたい」


「そ、そうなんですか……」


 俺の言葉に、ちょっとだけムッとした表情を浮かべる桃果ちゃん。

 好きな人が、自分以外の女の子を実家に泊まらせていて、しかも家族と仲良くしていると知ったら……気分が悪いのも当然か。


「わ、私も、妹さんに会ってみたいです!」


「え?」


「ダメですか?」


 いや、駄目ではない。

 ただ、妹を紹介すると、また蜜柑のように、コスプレを始めるかもしれない。

 もっとも、桃果ちゃんならきっと何でも似合うだろうけど……。


「じゃあ、今度店に来てもらうか」


「はい! 嬉しいです」


 俺の提案に、桃果ちゃんの口角がパッと上がる。


しかし……。


「ところで……」


「ん? どうしたの?」


 桃果ちゃんの上がった口角はすぐに下がり、俺に何やら深刻なことを伝えようとしているようだ。


「実は……雫さんのことなんですけど」


「ん? 雫ちゃんがどうしたの」


 桃果ちゃんは、少しの静寂の後、重い口を開いた。


「命に別状はないらしいんですが、雫さんのおばあちゃんが、倒れちゃったみたいで……」


「え?」


「それで、店長もそちらに向かっているらしく、しばらくお店は休業になるそうです」


 充実していた、喫茶店での住み込みバイト。

 その楽しい日々が、突如として終わりを告げるかのようだった。


「あと、今朝……これが郵便受けに……」


 そう言って、桃果ちゃんは申し訳なさそうに、一通の手紙を俺に渡すのであった。

最後まで読んでいただきありがとうございました!


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