第7話 幼馴染
俺は、妹の杏樹の買い出しのため、2人で深夜のコンビニに出向いた。
コンビニに到着すると、杏樹は雑貨コーナーに〈半紙〉を取りに行き、俺はカゴを片手に、杏樹の好きなお菓子と自分用のチョコレートスナックを手に取った。
半紙を片手に「これこれ! これだよ! にいちゃん」と俺が選んだお菓子をかごに入れる。
――お菓子はひとつにか入れてないはずなのに、カゴが重い
かごを確認すると、杏樹が好きなジュースとグミも追加で入れられていた。
「お菓子はひとつまでだぞ」と杏樹に伝えようとしたが、既にレジの横で「こっちだよー??」と手を振っていた。
――逃げられた……。
渋々、妹の方に向かう。
「杏樹ちゃんとつばさ。2人は、相変わらず仲良いね」
そこには、ひとりの女の子が立っていた。
彼女は『夏祭 沙織』。
俺の幼稚園からの幼馴染で家族間でも交流がある。
住んでいるところも近所であり、今でも両親の居酒屋で、年に数回、飲み会を行なっている。
「おぉ〜そんなことないよ、杏樹が半紙ないからって連れ出されたんだよ」
「そうそう! 夜も遅いし、私可愛いから、誘拐されたらどうしようと……だから仕方なくにいちゃんに頼んだんだよ」
「1人で買ってくるよって言ったんだけどな……杏樹が着いて来たから、カゴの中お菓子いっぱいなんですが」
「嫌だー、それじゃお菓子買ってほしくて、着いて来たみたいに見えちゃうじゃない」
――そうにしか見えない。
やれやれと思いながら、レジにいる沙織にカゴを渡す。
「7点で1265円になります」
――ん? さっきよりも増えている。
杏樹はマジシャンなのかもしれない。
俺は仕方なく、バーコード決済のために、携帯を取り出す。
「杏樹ちゃん、真彩はソフト部でどう?」
沙織の妹の真彩。
彼女も、杏樹と同じ学校でソフト部に所属している。
「沙織さん、真彩ちゃんもソフト部で頑張ってますよ! 次の土曜日の試合は、スタメンで使うって監督言ってました」
「え! そうなの!! 真彩なにもいないんだから!」
「あ、お姉さんには、もっと力つけてから呼びますって言っていました」
俺と杏樹の兄妹と、沙織と真彩ちゃんの姉妹は、同じ年齢である。
沙織はソフト部には所属していなかったが、真彩ちゃんは中学から始めており、高校でも部活に入っていた。
会計を済ませ、沙織に商品を袋詰めしてもらう。
「つばさは、土曜日試合観に行くの?」
「あぁバイトのシフトもないし、行く予定だよ」
「つばさがいくなら、私は行かないで良いか」
俺と沙織は、互いの妹の試合を観に行く。なぜ観に行くかというと、スポーツ観戦するのが趣味とも言えるが、2人が怪我しないかが心配なのである。
そして、沙織は特に妹に甘い。
――完全に保護者目線である。
そういうと、沙織は「ありがとうございました! 2人とも気をつけて帰ってね」と〈杏樹〉に向かい手を振る。
俺も振り返したが、睨まれた。
「全くこんなに買って……お兄ちゃんは、そんなにお金ないんだぞ?」
スーパーのバイトも3月に辞め、5月から喫茶店で働き始めた。4月分の給料はないので、金欠である。
「いいじゃん! 可愛い妹のためなんだから!」
俺は知っているぞ、妹……。沙織の前で喧嘩すると、俺が怒られるから、絶対に買ってくれるって思っていることを。
本当に、ちゃっかりとした妹である。




