第82話 6日目、エプロン姿の蜜柑
翌日、午前8時。
俺と由宇希、そして蜜柑は、実家に泊まることになった。
昨日、由宇希に事情を話した後、『alive』で一人待つ桃果ちゃんにメッセージを送っていた。
『蜜柑の無事を確認! 酔っ払って起きないから、実家で由宇希と一緒に泊まるね』
『え、三人で泊まるんですか?』
『妹もいるから安心して! 実家で映画館の事情もゆっくり由宇希に話す』
『わかりました……。明日は、雫さんの帰りも夕方になるそうなので、お店は臨時休業です』
明日……つまり今日もお休みか。
そんな状況の中、桃果ちゃんを一人で『alive』に残すのは申し訳なかったが、泥酔した蜜柑をここに置いていくわけにもいかなかった。
俺と由宇希は、深夜まで〈オーバーウィッチ〉をして、いつの間にか寝落ちをしてしまっていたらしい。
「……ちゃん」
「ん……」
「兄ちゃん!」
夢の世界から、聞き覚えのある声が聞こえて来た。
「兄ちゃん! 起きろ!」
その声が聞こえた後、頬にパァンッ!と鈍い痛みが走った。
「痛ったぁっ!」
杏樹が、かなり荒っぽい方法で起こしにきたのだ。
「やっと起きた」
霞む目を擦りながら、俺は状況を理解した。
どうやら杏樹はベッドに片足を乗せ、俺の頬を思いきりビンタしたらしい。
そうだ……俺は、実家に帰って来ていたんだった。
デスクの方を見ると、由宇希がイビキをかきながら、ぐっすり眠っている。
パソコンはゲームのメニュー画面を開きっぱなしにしたまま、ゲーミングチェアを深々とリクライニングさせて……確実に体を痛めそうな寝方である。
「由宇希、起きろー」
声をかけても返事は返ってこない。
彼は、完全に爆睡している。
「お友達は、爆睡中だね……兄ちゃん、とりあえずリビングに来て。ご飯出来てるから」
「お、おう……」
杏樹から「朝ごはんが出来ている」と聞いた途端、ぐぎゅう、と俺の腹の虫が鳴いた。
俺は重たい腰を上げ、リビングへ向かう。
ドアを開けようとしたその時、ふと、ある違和感に気づいた。
「あれ、杏樹がご飯作ったんじゃないの?」
「ううん、私は作ってないよ?」
それはおかしい……なぜなら、奥のキッチンからはジュージューと何かを炒めるいい音と、美味しそうな匂いが漂ってきているからだ。
俺は、リビングのドアを開け、キッチンの方を見た。
すると、そこには……。
「お、おはよう……」
「今日は、蜜柑姉さんが作ってくれたんだ」
そう。俺のサイズに合わないエプロンを身につけた蜜柑が、フライパンを片手に少し恥ずかしそうに立っていたのだった。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
もし「続きが気になる!」「面白い!」と思っていただけたら、下の【☆☆☆☆☆】から評価やブックマークをいただけると、執筆の励みになります!




