第78話 デートを終え、長い夜が始まる
午後8時すぎ。
俺と桃果ちゃんは、喫茶店『alive』に帰って来た。
遅めのランチだったため、スーパーでお弁当やお惣菜を買って、各自お腹が空いたら食べることにした。
さて、家に帰って来たということは、蜜柑に映画館での出来事を説明しなくてはならない。
しかし、当の本人はまだ帰って来ていないようだ。
「つばささん、まだ蜜柑さん帰って来てないんですね」
「そうみたいだね……」
俺は、ひとまず蜜柑に電話をかけてみようと携帯を取り出した。
「だ、駄目ですよ……つばささんの友人が、今まさに、頑張っているかもしれませんよ?」
桃果ちゃんが慌てて、俺の手から携帯を取り上げる。
……それもそうだ。
これ以上、由宇希のデートを邪魔してはならない。
「た、確かにそうだな……。それなら、由宇希に連絡を入れておくか」
俺は、苦笑いしながら桃果ちゃんに携帯を返してもらい、由宇希に『このメッセージ、確認したら連絡ちょうだい』とメッセージを送った。
とりあえず、シャワーでも浴びてこようか……そう考えていると、待つ間もなくすぐに返信が来た。
『つばさ大変だ』
『急いで来てくれ』
『お前の実家の居酒屋らしいところにいる』
突如、由宇希からの助けを求める文。
引っかかるのは、何故か彼らが、俺の実家の居酒屋にいるということだ。
……由宇希は、俺の実家が居酒屋を経営していることは、知らないはずだ。
何か、嫌な予感しかしない……。
「桃果ちゃん、由宇希に呼ばれたから、ちょっと行ってくるね」
「何かあったんですか? 私も行きますか?」
「ごめん、居酒屋だから、桃果ちゃんは連れていけないかも」
リビングでテレビ番組を見ている桃果ちゃん。
自分はお留守番と言われ、プクッと頬を膨らます。
お留守番は、申し訳ないと思いながらも、俺は急いで居酒屋に向かうのであった。
◇
俺は、夜のバスに慌てて乗り、実家が営む居酒屋に到着した。
暖簾をくぐると、沢山のお客さんが盛り上がりを見せている。
両親の店は相変わらず繁盛しているようだ。
「あれ? つばさじゃないか」
「父さん、お久しぶりだね」
「何だ……急に、元気にやってるかー?」
俺は、コクリと頷いた。
厨房には、エプロンを纏う父さんの姿があった。
父さんと会うのは、実に数ヶ月ぶりである。
久々の再会に浸る暇もなく、店の奥から俺の名前を呼ぶ声が聞こえた。
そこには、由宇希と、テーブルに突っ伏して爆睡している蜜柑の姿があった。
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