第77話:番外編 猫ちゃんTシャツ
これは、桃果ちゃんの洋服を選んで回っている時の出来事である。
俺たちは、三軒目の洋服屋さんに向かっていた。
その道中、通りかかったメンズカジュアルの店の前で、桃果ちゃんがピタリと足を止めた。
「つ、つばささん!」
「ん?」
「この服、つばささんに似合うと思います」
桃果ちゃんは、ニヤニヤしながら一枚のTシャツを手に取った。
そのTシャツには、三匹の猫が物干し竿にぶら下がりながらご飯を待っているという、とてもシュールなイラストが描かれていた。
「確かに猫は好きだけど……」
「私も猫、好きなんですよ! お気に召しませんか?」
そうだ。彼女は無類の猫好きだった。
蜜柑からも、バイト中に姿が見えない時は、大体店裏で猫を眺めているらしい。
蜜柑曰く、「衛生面で触れ合わず、猫と独特な距離感で、まるで会話しているようなんだよねー」と話していた。
俺も、こういう動物が描かれているTシャツは嫌いではない。
他にも好みの物がないかと、その店を見渡した。
すると、他にも多くのTシャツが並んでいた。
その中には、動物の絵だけではなく、文字だけプリントされている……巷で言う、〈ネタTシャツ〉というやつだ。
「じゃあ、せっかくだし、この猫のTシャツを買おうかな」
「私がプレゼントします」
「いや、いいよ? 気を遣わないで!」
「いいえ、私がプレゼントさせてください」
有無を言わさぬ笑顔。
そう言うと桃果ちゃんは、足取り軽くレジへ向かっていった。
……普段着としては少し勇気がいるデザインだが、今度、バイトのシフトが被った時にでも着ていくとするか。
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