第6話 妹
賄宴を終え、俺は帰路についた。
中学時代の雫ちゃんとの、忘れたい記憶を鮮明に思い出したためか、賄宴をあまり楽しめなかった。
ただ、雫ちゃんが作ったごはんはすごく美味しかったのは、確かであった。
「ただいまー」
自宅の玄関の扉を開けると、「お帰り! にいちゃん!」とリビングから声が聞こえた。
妹の「西城 杏樹」。
高校2年生で、ソフトボール部のエースだ。
俺は、両親と妹の4人家族であり、両親は居酒屋を経営している。
両親が経営している居酒屋は、家から数秒の所にある。
◇
家に帰宅して、俺は一目散に洗面所で手を洗う。
もう風邪はひきたくない。
手を洗い終え、洗面所で部屋着に着替えていると、杏樹が話しかけてきた。
「にいちゃん? 土曜日、試合だけど見にこれるよね?」
「あれ? 来週じゃなかったっけ?」
杏樹が試合の日は、可能な限り観戦に行く。
俺は、球技全般が好きで、特に好きなスポーツは野球である。
「今週だよ! ゴールデンウィークの前に言ったじゃん! ゴールデンウィーク明けの休みだから、疲れてるところよろしくねって」
そう言われると、言われた気がする。
カバンに入っている手帳を取り出し、土曜日の予定を確認した。
偶然、シフトは入っていなかった。
手帳をしまいながら、杏樹に「土曜日、試合観に行けるよ」と伝えると嬉しそうだった。
杏樹は、小学生の時からソフトボールをはじめ、今では、2年生ながらエースである。
俺も小学生の時に、リトルリーグで野球をしていたが、当時に流行っていたバレーボールのアニメにハマり、中学ではバレーボールを始めた。
杏樹も兄貴の影響からなのか、小学生からソフトボールを始めていた。
リビングに移動すると、杏樹はソファーに座っており、視線でアイスをとって欲しそうに冷蔵庫を見つめる。
「目で訴えないで、ちゃんと言え」と言い、冷蔵庫からアイスを2つ取り、杏樹に渡した。
「杏樹、最近調子はどうなんだい」
杏樹は、アイスの袋を開けながら「絶好調だよ!」と笑顔で答えた。
黙々と2人はアイスを食べる。
すると突然、杏樹が「やばい! やばい!」と叫びながら、部屋に向かっていった。
俺はびっくりしたが、理由はわかっている。きっと、課題を進めるのを忘れていたのだろう。
夏休みの課題とかも、俺は計画的に進めるタイプであったが、杏樹は最後の1週間に全てをかけるタイプである。
風呂も済ませ、リビングでテレビを見ていると、部屋から杏樹が出てきた。
「にいちゃん、コンビニ付き合って」
時刻は、もうすぐ日付を跨ぐ時間。こんな時間に、何か夜食でも買いに行くのかと思った。
俺は「太るぞ」と杏樹に話した。それに、もうすぐ両親も帰ってくるので、家にいた方が良いかとも考えた。
――コンビニまでは、5分ぐらいだが、もうお風呂も入ったし、明日も朝早いから面倒だな……
「まずいんだって……半紙がないの!!」
杏樹は、習字をすることが趣味である。その日思ったことを文字として残している。日記のようなものだ。
俺は面倒くさそうに「明日でもいいだろー」と伝えたが、杏樹はほおを膨らめ、「明日にしたら、今の感情が乗りにくくなる」と言った。
――面倒くさいが、杏樹のためだから買いに行くか……
「買いに行ってくるよ」と杏樹に伝えたが、杏樹は「おやつも買う」と言い、部屋着に上着を羽織った。
杏樹と買い物に行くと、余計なものを買わされる。
――1人で行きたかったな……
「にいちゃん? レッツゴー!!」
俺は手を強引に引かれながら、コンビニに向かうことになった。




