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珈琲を焙煎してたら恋琲になっていました  作者: エンザワ ナオキ
住み込みバイト編

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第73話 四つの縁

 映画館で集まる異色の六人。

 

 蜜柑みかん由宇希ゆうきの尾行がバレるピンチを乗り越えたかに思えた。


「私、二人が映画館の入り口で見つめあってるの見てたんだけどなー?」


「!」


 血の気が引くような感覚に陥った。

 まさか、ピンチを乗り越えたと思ったあの場面、気づかれていたのか……。


「本当は、二人でデートしてたんじゃないの?」


 蜜柑の冷ややかな視線に、俺は言葉を失う。

 もう、素直に話すしかない。

 そう覚悟を決めた、その時だった。


「じ、実は、前から二人で映画を見に行こうって約束をしてたんです!  まさか、ここの映画館だとは思いませんでしたけど」

 

 桃果ちゃんが慌てて割って入った。だが、続く言葉がまずかった。


「そ、そうです……決して、二人を追っていた訳ではないんです」


 ――その言い訳は、逆効果だ、桃果ちゃん。


 「追っていた」という単語が出た時点で、怪しさは倍増してしまう。

 問い詰められた俺の姿を見て、桃果ちゃんが、〈にゃんこ将軍〉を見たかった経緯や、昼ごはんを食べたことなどを蜜柑に話した。


「なるほどね……まぁ、私も由宇希と買い物はしていたし、別に何とも思わないけどね」


 蜜柑は唇を尖らせ、ボソボソと吐き捨てるように言った。

 明らかに拗ねている。いや、傷ついている。

 蜜柑からしたら、告白した相手が、数日後に別の女の子とデートをしていたのだから。


 かつて、馬場さんに振られた時の俺の気持ちが蘇る。

 伝わり方次第では、今の俺は、あの時の馬場さんと同じことを蜜柑にしているのではないか。


 この後の謝罪次第では、本当に縁を切られてもおかしくないであろう。


「蜜柑、喫茶店に戻ったら、改めて話を聞いてくれ」


「もういいよ……。じゃあ、私たちは買い物の続き行くね、行くよ由宇希」


「お、おう……」


 蜜柑と由宇希は、駆け足でその場を去る。

 由宇希のせっかくのデートも潰してしまった。


 残されたのは、重苦しい沈黙と、まだ納得していない「味方」たち。


「じゃあ、そろそろ、この修羅場の説明をしてもらおうか」


 俺は、今度は春風さんに問い詰められる。

 

 今日、ひょっとしたら、数少ない四人の友達に誤解を生んでいるかもしれない。

 

 嘘をついて、誤魔化したツケは、自分自身で清算するしかなかった。

最後まで読んでいただきありがとうございました!


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