第72話 お友達大集合
俺が、達也と春風さんを連れ、映画館を出ようとした。
「実はね、友達から恋愛相談を受けてて、デートがうまく行ってるかの確認をしに来てるの!」
俺は早口で二人に状況を説明した。
二人は根っからの恋バナ好きだ。
この一言だけで食いついてきた。
「え、なに? 探偵みたいなことしてるの?」
春風さんが特に食いつきが良い。
いっそ、この二人に協力を依頼しようか……そう考えていた時に事件は起きた……。
「あれ、つばさ? なんでここにいるの」
正面に蜜柑と由宇希の姿があった。
「な、なんで二人がここに……」
「それはこっちのセリフ。……もしかして、つばさも〈にゃんこ将軍〉見てたの?」
「え、あぁ、まぁ……この二人と一緒にね」
俺は二人に、話を合わせてくれと必死に訴え、二人に聞こえるような小声で「この二人、ターゲット、男が依頼人……合わせてくれ……頼む」と伝える。
単語で言うことで、ミッションのような緊迫感を演出した。
案の定、二人は即座に乗ってくれた。
達也と春風さんは、「ハッハッハッ」と乾いたような笑い声で誤魔化す。
「つばさは中学からの付き合いで、久々に映画を一緒に観ようかなと思って誘ったんですよ」
達也が棒読みギリギリのラインで状況を説明する。
「そ、そうなんですよ! 二人より三人で見た方が、変に目立ちませんからね!」
おいおい……何を言っているんだ、春風さん。
「……だから昨日、映画館に行くって言った時、返事を濁してたんだ」
蜜柑は納得したのか、俺にジト目を向けて呟いた。
◇
「つまり、蜜柑さんと由宇希さんには、バレていないんですね?」
「う、うん」
俺は桃果ちゃんに小声で説明をした。
桃果ちゃんも驚いたであろう。
映画館を出た途端にターゲットと鉢合わせし、さらに知らない夫婦に囲まれているのだから。
この異色の六人は、映画館の外にあるベンチに座り、一休みすることになった。
お互い面識はないはずだが、俺が以前からチラチラと話を出していたためか、会話は謎の盛り上がりを見せている。
「あなたたちが、つばさの幼馴染なんですね、よく本人から聞いてます。とっても愉快な夫婦がいるって」
「そんなに噂してるんですか? 照れますね」
達也が、頭を掻きながら、俺の方をチラッと見る。
蜜柑余計なことは言わないでくれ……。
陰で話してることがバレるのは、恥ずかしい。
ともあれ、上手い具合に、乗り越えられそうである。
達也と春風さんに出会ってなければ、恐らく入り口で鉢合わせ、尾行してたことはバレていたであろう。
……そう思っていた。
「それで、桃果ちゃんは何故ここにいるの?」
「!」
蜜柑の鋭い一言は、核心をつく質問であった。
確かに、ここに桃果ちゃんがいる理由がない。
達也とも春風さんとも、今日が初対面なのだ。
「と、桃果ちゃんもこの映画見たかったらしくて、それなら一緒に行こうって誘ったんだよー! ね?」
「そ、そうなんですよー!」
達也が、動揺しつつもアドリブで返す。
だが、俺は達也たちに桃果ちゃんの説明を一切していない。
二人とも、口では合わせつつもポカンとした顔をしている。
すると、蜜柑は静かに口を開いた。
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