第71話 にゃんこ大騒動
〈にゃんこ将軍〉の鑑賞を終え、スタッフロールが流れ始める。
俺は事前に桃果ちゃんに、「スタッフロールが流れ始めた瞬間に、俺が先にスクリーンを出る」と打ち合わせをしていた。
鉢合わせを避けるための措置である。
席を立つ際に、桃果ちゃんにアイコンタクトを送るが、全く気づいてくれない。
完全に映画の余韻に浸っている。
事前に伝えてあるし、先にコッソリと抜け出すこととした。
階段を降り、出入り口の扉に向かう。
そして、二人に気付かれずに、ロビーに出ることに成功した。
「あれ? つばさか?」
背後から誰かが、俺の名前を呼んだ。
心の中で「やばい、ばれちゃったか……」と諦めかけたが、由宇希にしては声が高い気がする。
俺は、恐る恐る振り返る。
「た、達也……? それと、春風さん?」
そう、声の主は、小学生から幼馴染であり、親友である達也と、その新妻である春風さんであった。
「どうしたの? こんなところで」
「い、いや……新作の映画が気になってね」
春風さんが首を傾げながら、俺の顔を覗き込んでくる。
彼女は雫ちゃんの大親友だ。今でも頻繁に連絡を取り合っていると聞く。
「もしかして、雫と来てるの? どこにいるの」
「い、いや? 雫ちゃんはいないよ」
春風さんは、まるでガサ入れの警察官のように辺りを見回す。
「でも、一人では来てないよね……もしかして、雫とは別の女の子に手を出してるの?」
春風さんが、目を細めて俺に詰め寄ってくる。
というか、「手を出してる」と言う言い方は、やめてほしい。
「そんなわけないでしょ? つばさは、浦島さんのことずっと好きなんだから」
達也が俺をフォローしているが、冷や汗は止まらない。
ひょっとしたら、デート中の蜜柑と由宇希の次に、鉢合わせをしてはいけない二人であったかもしれない。
そのくらいに状況説明が面倒である。
こんなところに、蜜柑と由宇希のペアと、桃果ちゃんが来たら、さらに面倒になる。
「とりあえず、あっちに向かおうか。ここ入り口で邪魔になるからね」
俺は、二人を強引に映画館の入り口まで連れて行こうとする。
「誰と来てるんだー、見せろー!」
春風さんが駄々をこねる。
なんで、俺がこんなに後ろめたい気持ちになっているのか……。
◇
しかし、事態の悪化は止まることを知らなかった。
「つ、つばささん、これはどういう状況ですか?」
桃果ちゃんが、俺と合流した時には、達也と春風さん夫婦。そして、何故か蜜柑と由宇希もそこにいたのである。
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