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珈琲を焙煎してたら恋琲になっていました  作者: エンザワ ナオキ
住み込みバイト編

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第70話 鉢合わせピンチ

 蜜柑みかん由宇希ゆうきが、二人に迫ってくる。


 二人掛けのベンチの正面は開けているため、視線を向けられれば一発でバレてしまう距離だ。


「つばささん、こっち向いてください」


 大ピンチの中、桃果とうかちゃんが何かを閃いたのか、俺を小さな声で呼ぶ。

 振り向くと、彼女は鞄から真っ白な物体を取り出した。


「被ってください」


「う、うん! わかった!」


 俺は言われるがままに、白くてふわふわした……猫耳のついた帽子を被った。

 どうやら、〈にゃんこ将軍〉の公式グッズらしい。


 そういえば、パンフレットに書いてあった気がする。


「上映中は、将軍の猫耳帽子とにゃんこ仮面を被って、将軍を応援しよう!」


 この意味がようやく理解できた。

 ……いや、感心している場合じゃない。

 これ、逆に目立つのでは……!?


 俺が焦って蜜柑たちの方向を見ようとすると、桃果ちゃんが俺の頬に手を添えた。


「つ、つばささん、私の目を見てて」


「え、分かった……」


 至近距離で見つめ合う二人。

 心臓の鼓動が激しくなっていく。

 見つめられてドキドキしているのか……はたまた、蜜柑たちにバレるのを恐れてドキドキしているのか。


 今の俺には、その区別がつかない。


「つ、つばささん……」


「!」


 桃果ちゃんに名前を呼ばれ、俺はハッと我に返った。

 数回呼ばれて、ようやくそれに気づいた。


「え、あぁ……二人どこか行った?」


「はい、ふ、二人はスクリーンに向かいました」


 なんとか、窮地は脱出したようだ。

 またしても、桃果ちゃんに救われた。

 ふと、桃果ちゃんの顔色をうかがうと、耳まで赤く熱っているのがわかった。


 ……この数日は、本当に心臓に悪いイベントが多すぎる。


 ◇


 俺たちは、少し時間を空け、場内が暗くなったタイミングを計り、〈にゃんこ将軍〉が上映される三番スクリーンへ向かった。


 万が一にも隣の席とかに座ってしまわないように、予約しておいたのは一番後ろの端の席だ。


 二人は背を低くし、なるべく目立たぬようにゆっくりと席に着いた。


「ついに、上映時間ですね!」


「うん、すごく楽しみ」


 桃果ちゃんは、ワクワクが抑えきれないのか、前のめりになっている。

 どれだけ楽しみにしていたのかが、こちらにも伝わってくる。


 そして、映画が始まった。

 俺たちは、特に大きなトラブルもなく〈にゃんこ将軍〉を鑑賞した。


 時折、隣の桃果ちゃんを盗み見る。

 暗闇の中で、スクリーンの光を反射した彼女の瞳は、宝石のように輝いていた。

 今日は、何度も彼女が目を輝かせている姿を見ている気がする。


 映画の内容も面白かったが、それ以上に、心から楽しんでいる桃果ちゃんの横顔を見られて……俺は映画本編以上の満足感を覚えていた。

 

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