第69話 映画館ブッキング
俺と桃果ちゃんは、蜜柑と由宇希の二人の姿を発見した。
見た限り、由宇希はやや緊張気味で蜜柑の少し後ろを歩いている。
学校にいる時は普通に話せる二人だが、やはり舞台が変わり二人きりとなると、空気感が違うのだろう。
「つばささん、蜜柑さんは相変わらずですね」
桃果ちゃんは、慣れない伊達メガネを人差し指でクイッと上げた。
「相手の男性の方は、大丈夫でしょうか……こちらにも緊張が伝わってきます」
何故か、実況アナウンスのような口調で呟く桃果ちゃん。
よし、俺もその悪ノリに乗ってみるか……。
「おっと……チケットの交換は蜜柑選手が向かい、フードの購入は……由宇希選手が向かうようです!」
俺は手に持っている携帯をマイクに見立て、小声で実況を続けた。
ふと隣を見ると、次の言葉を考えているのか、桃果ちゃんが眉間にシワを寄せながら悩んでいる。
「つばささん、何ふざけてるんですか?」
「え……」
あれ……桃果ちゃんは、アナウンサーの真似をしたのではなく、ただ単に大真面目に状況を報告していただけだった。
俺の完全な読み間違い。
俺の顔は、隠しようのない赤みに支配されていく。
「つ、つばささん? 二人が近づいて来ますよ」
桃果ちゃんが俺の袖を掴んだ。
その声は、動揺からか震えている。
自分の愚かな行動を反省する間もなく、二人がこちらに向かって歩み寄ってきた。
すぐ隣にある物販コーナーを見るのが目的なのだろう。
なぜ物販の横のベンチなんて目立つ場所で待ち伏せをしてしまったのか……。
この窮地を、なんとか乗り越えなくては……。
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