第68話 二つのデート
桃果ちゃんと昼食を終え、俺たち二人は、映画館のあるデパートへ向かった。
時刻は午後1時。
夏休みということもあり、たくさんの人で溢れかえっている。
「つばささん、これ付けてください」
桃果ちゃんがカバンから二つの眼鏡ケースを取り出し、片方を俺に手渡した。
「カチャッ」
俺が戸惑っている間に、桃果ちゃんは手際よく眼鏡をかけた。
自信に満ち溢れるその横顔……。
俺も渡された眼鏡を付けてみると、度は入っておらず、いわゆる〈伊達メガネ〉というやつだ。
「そ、それじゃあ……行きますよ」
「う、うん……行こう」
俺は桃果ちゃんに手を引かれ、映画館へと足を運ぶ。
「桃果ちゃん、そんなに急がなくても……」
「先に映画館に着かないと、二人を探すの大変です。それに、鉢合わせするかもしれませんよ?」
確かに、今日は別の大作映画の公開日とも重なっている。
ギリギリに着いて、ロビーで二人と正面衝突するのだけは避けなければならない。
「つ、つばささん……あのエレベーター乗りましょう」
「はぁーい」
エレベーターに乗り込んだ俺たち。
しかし、相変わらず手は繋いだままである。
「3階です」
アナウンスとともにドアが開いた瞬間、桃果ちゃんは、レースのスタートダッシュを決めるかのように歩き出した。
少しずつ、映画館独特のポップコーンの香りが漂ってくる。
この匂いは、いつだって多くのワクワクを予感させる。
◇
「桃果ちゃん、飲み物は何がいい?」
「め、メロンソーダでお願いします」
映画館に着くと、俺たちは予約していたチケットを発券し、売店でポップコーンと飲み物を注文した。
ちなみに、会計は映画館に向かう前に、ちょっとしたゲームで、買った方が会計を持つこととなっている。
俺は、そのゲームで勝ち、めでたく会計は俺が持つこととなっている。
「こ、この映画も面白そうですよね」
「あぁ〜、よくテレビで宣伝してるよね」
何気ない会話を桃果ちゃんと繰り返す。
……冷静に考えれば、これはもう完全にデートだ。
「まだ、開演まで時間ありますし、ベンチで休みましょう」
俺は、コクリと頷いた。
腰を下ろして館内を見渡すと――ついに、探していた二人の影が視界に入った。
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