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珈琲を焙煎してたら恋琲になっていました  作者: エンザワ ナオキ
住み込みバイト編

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第64話 違う種類のドキドキ

「俺、実は蜜柑みかんのこと好きなんだ!」


 由宇希ゆうきの純粋なその一言が、俺を窮地に追い込んだ。


 なんと、アドバイスをすれば良いか……。

 答えを知っている人がいれば、今すぐ教えてほしい。


「もしデート誘えたら、どこ行けば良いかな?」


「脈があるかないかは、どう判断したら良いの?」


 何と答えるか迷っている俺に、由宇希はまるでマシンガンのように質問を続けてくる。


 全ての質問に答えを濁してしまう俺は、頭の中が真っ白になった。


 すると、さらにピンチになるような出来事が、一歩ずつ……確実に、俺の元に迫っていた。


「つばさと由宇希くん、何話してるのー?」


 至近距離から聞こえる明るい声。

 そう、紛れもない蜜柑本人であった。


「蜜柑? 掃除は終わったの?」


「とっくに終わってるよー。それより、二人が何を話しているのかが気になっちゃって……」


 ――まずいことになっちゃった


 まだ由宇希には、何もアドバイスもしていない。

 ふと由宇希の方を見ると、緊張からか、あれだけオシャレしてきたくせに深く下を向いてしまっている。


「どうしたの? 由宇希くん?」


「い、いや……別に?」


 追い打ちをかけるかのように、蜜柑が由宇希に話しかけた。


「そう、は、配信の件で相談があったんだよ」


「配信?」


「そう! もっと視聴者増やすにはどうしたら良いかって……ね? 由宇希?」


 俺は必死に、由宇希のフォローに入る。

 由宇希も小さく頷いた。


 しかし、蜜柑は「どうしたの? 女性の意見も参考になるかもよ?」と引き下がろうとしない。

 

 ――俺はどうしたら良いんだ……


 俺は、蜜柑への返答を考えていると、まるで親に怒られた子供のように下を向いていた由宇希の口が、ついに開いた。


「み、蜜柑? 話があるんだ……」


「ん? 話?」


「実は俺……蜜柑と……」


 ――まずい……由宇希が早まってしまう……


 早まる由宇希をどう制止しようか考えるが、覚悟を決めた彼を止められる者などいなかった。


「この映画を見に行きたいんだけど、行かない?」


「ん? どの映画……」


 由宇希が見せた映画は、蜜柑と以前行こうとして、行けなかった映画である。

 この映画はラブコメであり、カップルで見に行く人も多い。


「この映画の作者が、俺の好きな漫画を描いていて……1人で見に行く映画でもないしさ……」


「そ、そうだよね……」


 俺は、蜜柑の顔をチラッと見ると、目が合う。

 彼女の瞳には戸惑いの色が浮かんでいた。


「映画見に行くのは良いけど、私見ちゃったんだよね……私こっち見に行きたいなー?」


 彼女が差し出したスマホには、全く別のアクション映画「宇宙から来た侵略者『にゃんこ将軍』」が映し出されており、それが見たいと由宇希に伝えた。


 由宇希も最初は戸惑ったが、「俺も気になってた!」と食い気味に話を合わせた。


 蜜柑のアドリブ力の高さ。そして「二人きりのラブコメ」を回避しつつ、由宇希のメンツを保つ、さりげない気遣い……。


「それなら、明日見に行ける?」


「い、行ける! 空ける!」


 まさかの蜜柑から由宇希を誘っている。

 2人の映画デートが決まったようだ。

最後まで読んでいただきありがとうございました!


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