第60話 4日目
俺は、リビングで蜜柑に告白の返事を伝えた後、自室に戻って一眠りすることにした。
3日間で、PV映像が完成するとは思わなかったが、なんとか形にはなり、心の底からホッとしていた。
その安心からか、俺はすぐに眠りにつき、目が覚めたのは、11時過ぎであった。
「暑い……」
真夏の燃えるような日差しが、カーテンの隙間から部屋を照らしていた。
寝ている間に無意識に消していたのか、エアコンの風は止まっている。
俺は少しふらつく体を引きずりながら、リビングへ向かった。
「お腹すいた……」
なんだろう。体が凄くだるい。
ただの寝不足か、それとも暑さにやられてしまったのか……。
とりあえず何か飲み物を飲んで、また二度寝しよう。
そう心に決めてリビングの扉を開けると、今日は非番の雫ちゃんが部屋の掃除をしていた。
「おはよう……」
「おはよう! つばさく…大丈夫? 顔色すごく悪いよ?」
雫ちゃんが掃除の手を止め、心配そうに俺の顔を覗き込んできた。
そのまま、ひんやりとした彼女の手が、俺の額に添えられる。
「な、何をぉ〜」
自分でも驚くほど、力のない情けない声が出た。
「風邪引いたんじゃない? 熱っぽいよ?」
「風邪なんて引かないよ……」
飲食店の店員が大事な時期に風邪を引くなんて……。
せっかくの住み込みバイトなのに、シフトに出られなくなってしまうのは避けたい。
「とりあえず、お水を飲みなさい」
雫ちゃんが汲んでくれたお水を、俺は一口で飲み干した。
乾ききった体に水分が行き渡り、一瞬だけ生き返ったような感覚になる。
「そういえば、昨日雫ちゃんが差し入れしてくれた飲み物を飲んで以来、何も口にしていなかったかも」
「え? この時期に飲み物飲まないのは、自殺行為だよ」
雫ちゃんに、叱られた。
思い返せば、昨日の夜、リビングに飲み物を取りに行った際に、蜜柑に告白の答えを返した。
その後、飲み物を一口も飲まずに寝てしまった。
これは、脱水症状かもしれない。
「雫ちゃん、もう一杯ちょうだい」
「甘えるな……と言いたいところだけど、この一杯までは、サービスで汲んであげるね」
雫ちゃんは冷蔵庫からスポーツ飲料を取り出し、コップに注いで差し出した。
「ありがとう……」
その飲料をまたまた一口で飲み干す。
「相当喉乾いてたんだね……ご飯も食べる?」
「頂きたい……」
情けないが、今は彼女の優しさに甘えるしかなかった。
雫ちゃんは本当に面倒見が良く、無意識に甘えたくなってしまう不思議な魅力がある。
「雫ちゃんって、面倒見が本当に良いね」
「えぇ? そんなことないよ……だって、つばさくんは何もしなかったら、そのまま二度寝するでしょ?」
完全に、俺の思考を読まれていた。
PV映像の提出は、動画サイトに指定のハッシュタグをつけて、本日中に公開すれば、問題ない形式である。
既に予約投稿を済ませ、準備は万端であった。
「つばさくん、体調良くなったら、完成したPV映像見せてよね」
「今見せるよ! 雫ちゃんには、最初に見てもらわないとね」
「そ、そう……ありがとう! でも、まずはご飯をしっかりと食べてね」
最後まで読んでいただきありがとうございました!
何かに集中をしていると、気づいたら喉がカラカラのときありますよね。
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